二日酔い
朝起きたら
好きな人が隣で寝ていた。
1つ問題なのが
昨日の記憶が全く無い。
ズキズキと痛む頭を押さえながら
必死で思い出す。
昨日は久しぶりに仲のいい友達同士で飲んでて
珍しく彼が酔っぱらってて
私の家が近いから
皆に促されて
うちに連れて帰って
それから…?
ハッとなって
慌ててごみ箱を漁る。
まさか…!?
しかし使用済みの「アレ」は無い。
ちょ、
まさかまさか
何も付けずに…
イヤイヤイヤイヤ
それはさすがに無いでしょ
だって服着て…
服、着て…?
「イヤァアアアアア!!!!!!!!!!!!」
私の叫び声で彼が飛び起きる。
「え、な、なに!?」
「ねえ、なんで私服着てないのかな!?」
「そ、それは…」
彼がそっと目をそらす。
「ねえなんか言ってよぉおおお!!」
彼の肩を掴んでグラグラと揺らす。
「おま、ちょっ、気持ち悪っ…」
「やだここで吐かないで!!」
バタバタとトイレに駆け込む彼。
「お前が寝ぼけて脱ぎ出したんだよ。俺は何もしてねー。」
気分悪そうな顔をしながらトイレから出てきた彼が私を見ながら言った。
「暑いーとか言いながら下着まで外し始めてどうすりゃいいのか分からんかったわ。」
「嘘…」
「嘘じゃねえっての。俺服着てんだろ。」
「そんな事言いながらあんたは服着たまま私を…!!」
「ふざけんなよ。おめーには興味ねえ!!」
そんなハッキリと言わなくても…。
分かってるっつーの。
あんたが好きなのは可愛い可愛いあの子でしょ。
「とりあえず何か着ろよ。なんでお前の裸をこんなに見せられにゃならんの。」
「すんません…」
怒られながら下着と部屋着を着る。
「…チカちゃんじゃなくてごめんなさいね。」
「あ?」
そんな露骨に機嫌悪い顔すんなっつーの。
「チカはお前と違ってこんなはしたない女じゃないの。」
「なんでそんなん分かるんさ。」
「何年片想いしてると思ってんの。」
知ってるよ。
でもそれよりももっとずっと前から
私はあんたに片想いしてるんだってば。
「…ねえ。」
「なに。」
「もしさ、仮に過ちが起こってさ、私とあんたに何かあったとしてさ。」
「だから何も無かったっつってんだろ。」
「仮にっつってんじゃん。」
「おー…」
「…仮に、私とあんたに何かあったとして、もし私があんたを好きだったらどうする?」
「…は?」
やべ、空気凍っちゃった。
「…そんときは謝るわ。」
彼は目をそらしたまんま次のタバコに火を付ける。
あんたはさ、私の気持ち知ってるんだよね。
ずっとずっと前からなんとなく気付いてるんだよね。
それでもやっぱ謝るとかさ
ホントに脈無いんだなあ。
「ふうん。」
私は冷蔵庫に水を取りに行くために立ち上がる。
泣くな、私。
どんだけ好きでも
それが叶わないなら
好きでいる意味無いのかな。
でもそれってこいつもそうだからなあ。
「水いる?」
「んー。」
グラスを渡す指がほんの少し触れて
そこから熱が帯びた気がしても
私とあんたは友達以上にはなれないんだ。
だったらそれでもいいよ。
それでもあんたの隣で
こうやって笑っていられるなら
それ以上は望まないからさ
ずっと一緒にいてよ
なんてさ。
絶対言えないけど。
「私の裸、興奮した?」
「もうちょい胸があったらなー」
「うっざ。」
世界一愛しい人の
親友でいることぐらい
許されるよね?
終わり