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プロローグ

——影に飲まれた者は戻ってこない。

 

 「きゃー!誰か助けて、助けてよお、ねえ待って行かないでってば!」

 人で賑わう街の中。

 そんな街に似つかわしくない悲鳴が響き渡る。

 人間の形をしてはいるものの、関節はおかしな方向に曲がり、まるで操り人形のような化け物のようなそれは人に食らいつこうと襲いかかる。

 捕まった若者の女が泣き叫びながら手を伸ばす。

 しかしその場にいた人は皆逃げるのに必死だ。

 「!?」

 次の瞬間、空からまるでとても小さな隕石が降って来たかと思えばその化け物は建物の壁へと吹っ飛びぶち当たった。

 そして静かに少しづつ風化して風に流され消えていった。

 「ふぅ、間に合ったー」

 困惑で静まり返る街の一角に少年の声が響き渡る。

 その声の主は背の低い、オレンジ色のセンター分けの髪を後ろで無造作に結ったライトグリーンの瞳のローブを羽織った少年だった。

 小さな隕石の正体はその少年の手袋をした拳を纏う炎であった。

 「大丈夫か?」

 しばらく少年は化け物の風化していった壁を見つめたあと、先程まで叫んでいた若者の女の方を振り返る。

 女は腰を抜かしてその場に座り込んでいた。

 そして少したったあと、ありがとうございますと泣きながら礼を言った。

 少年は女に手を差し伸べる。

 「この恩は一生忘れません!」

 女は少年の手につかまり立ち上がるとそう言って安心したように笑った。

 「ミホ!何があったの!?大丈夫なの?」

 少しして遠くから人の並を押し分けて女の母親らしき人が駆け寄ってきた。

 「大丈夫だよお母さん。助けてもらったの」

 ミホと呼ばれた女は母親に微笑みかける。

 「ありがとうございます。……あなた、軍か隊の方かしら?噂には聞いていたけどまさかこんな身近に影憑(かげつき)がいるなんて……」

 影憑、それは人の憎悪から生まれ、人を喰らう存在。

 喰らわれたものは、飲まれたものはもう人間に戻るすべは無い。

 そんな被害を少しでも減らすため、影憑になった人をこれ以上苦しめないために軍や特設された隊などが対処をする。

 「軍?隊……?」

 「まあ……こんな子供が……」

 「だぁぁぁぁあれがこんな子供だ!俺はもう大人だぁぁぁあっつうの!というか俺は何も言ってない!!」

 少年はひと通り叫び終えたあと、ひとつため息をつく。

 そして前を向き自らを指さす。

 「俺はヒーローだ!」

 

 これは、少年の兄探しから始まるひとつの物語。

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