表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR

あなたの名前は

掲載日:2026/05/26

あなたの名前は

「ねー、辰郎!」

 耳に馴染んだ仮名(かりな)が、汗で濡れた頬を撫でていく。

 この世界では絶対に本名を教えることも呼ぶこともしちゃいけない。

 それが暗黙の了解になっていた。

 

 なぜかって? 本名は呪いを引き起こすからだよ。

 本名で呼ばれるたびに僕らは寿命が1年ずつ減っていくらしい。

 だから、名前をつけた親以外が本名を知るのはその人の葬式や遺言なんだ。

 まぁたまに、教えられずに親が亡くなって自分の本名がわからなくなる人も多くいるみたいだけど。


 僕もまだだから、親が記憶喪失になったりしたら一生を仮名で過ごさなきゃいけなくなっちゃう。

 仮名がもう本当の名前みたいに思ってるところもあるけど、やっぱり最期くらい親がつけてくれた本当の名前で認識されてみたいなって思ったりもするから。


 あ、そうそう。今日は僕の恋人の誕生日。成人したから僕だけが呼ぶ特別なあざなをつけてほしいって言われたんだ。

 羨ましいか? 羨ましいでしょ。

 そしてもうすでに僕は彼女のあざなを決めたんだ。××。我ながらいい名前じゃない?

 7晩徹夜して考えたんだ。


「ねー、辰郎?」

 ふと、意識が浮上する。

「私のあざな、考えてきてくれたー?」

 もちろん、そう言ってそれを口にする。

 彼女は目を見開き、手で口を覆った。それもすぐに顔を赤らめ、よほど気に入ったのか繰り返し繰り返し何度もそのあざなを呟いていた。


 そんなある日。××が突然死したとご両親に聞かされた。

 遺言をふらつきながらも部屋に戻って読んでみる。


辰郎くんへ。

 今まで、私のことを愛してくれてありがとう。

 そしてごめんね。私は君の呪いになりたかったの。

                     四宮××


 遺言に書かれていた名前と、僕が彼女につけたあざなは一緒だった。

 何度も彼女の本名を呼び、殺したのは僕だ。

 半ば意識を失う形で眠りについた僕は、彼女の名前を忘れていたし、認識できなかった。


──────────────

 

 ※あざな……古代中国で成人した人につけられた「本名以外」の呼び名

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ