朗報と朗報
帰りにのんちゃんにリレーの代表になったと報告したら喜んでくれた。
その笑顔を見て頑張った甲斐があったなと実感。
クラスのみんなも突然早くなった俺に疑問を抱くどころか素直に褒めてくれた。子どもとはこれほど純粋なものなのかと、褒められれば褒められるほど胸が傷んだが、それものんちゃんの笑顔で帳消しになった。
夜になって母上殿が帰ってきた。今日は残業は無かったみたいだ。
「ただいま光一。待っててね、すぐにご飯にするから」
「あのねお母さん、僕運動会でリレーの選手になったよ!」
玄関で靴を脱いだばかりの母上殿に、おかえりの挨拶も忘れ選手になったことを告げる。
思いの外選手になったことが誇らしく嬉しかったのかもしれない。
「え、リレーの? すごいわね光一、頑張ったのね」
「うん!」
母上殿に頭を撫でられご満悦になった俺はリビングに駆けて戻る。
「リレーって最後にやっていた競技でしょ? たしか全学年が出る」
「そうだよ。僕はそれのクラスの代表」
「お母さん光一がそんなに足が速いなんて知らなかったわ」
うんついこの間まで速くなったからね。
母上殿がエプロンを巻きながら上機嫌に笑う姿に、改めて(調整を)頑張って良かったなと思う。
「じゃあなおのこと運動会は絶対に見に行かないと」
「大丈夫なの? お仕事忙しいんじゃ?」
母上殿の仕事は病院の医療事務だ。そこそこ大っきい病院で残業して返ってくることもしばしば。
「お母さんにとって大事なのは仕事よりも光一だもの」
そう言ってニコリと笑う母上殿に抱きつく。
「うん、ガンバルから見に来て」
母上殿も俺をギュッと抱きしめ返した。
「あ、そうそう。この間言っていた証券会社の口座登録がおわったから使えるようになったわよ。でも本当に良かったの? 今までためていたお年玉を全部そこにいれちゃって」
母上殿の美味しいご飯を食べていると、母上殿が思い出したようにそう切り出した。
どうやらお願いしていた株取引用の口座開設が昨日の今日で終わったらしい。
もしかしてお昼休みを潰させた?
おう、母上殿を楽にさせようと思ったのに逆に忙しくさせてしまうとは!?
母上殿と話し合い選んだ取引に使う証券会社は以前努めていた会社の上流系列のところだ。
別にどこでも良かったんだけど母上殿がそこにした。
何となく前世の俺のことを思い出してくれたのかもしれないと思うとジンと来てしまう。
「ありがとうお母さん。うん、全部入れてもらって大丈夫」
「そう? 光一だって欲しいものがあるんじゃないの?」
「う〜ん特に無いかな」
おもちゃを欲しがる歳でもないしね、精神的に。
とは言えこれと言って物欲が無いのは記憶が戻る前も変わらない。だからお年玉やお小遣いはそれなりに貯まっていた。
「光一はもう少し我儘になってもいいのよ」
「もう十分我が儘だよ?」
こんな事をお願いしちゃったし。それに母上殿に、美弥に苦労を掛けちゃったからね。
俺が答えると母上殿は困ったように笑う。
う〜ん、ほんとに十分なんだけどな。




