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その元勇者、暗躍につき  作者: シシオドシ


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3/10

勇者の力

 朝食を食べ終わり、食器を下げるお手伝いをしてから出かける準備をする。

 今日は平日、8歳児になってしまった俺は小学校にいかなければならない。


「記憶が戻る前は何とも思わなかったが、小学校って・・・・今更感が半端ない!」


 なんだかんだと大学まで卒業して就職、その後25歳から75歳まで異世界で生きてきた男が、再び小学校に通って何を習えと。


「でも休んだら母上殿が心配するしな・・・・」


 ふむ、それはダメだな。選択肢にも入らない愚行!

 母上殿にこれ以上迷惑を掛けるわけには行かない。


 意気込んでランドセルを背負いいざ玄関へ。


「いってきま〜す」

「気をつけていってらっしゃい」


 母上殿に両手を振って玄関を出る。


 三階建てのアパートその二階に住んでいる。便利なエレベーターなど無い古いアパートだ。

 階段を降りていくと出口に見知った小さな女の子の姿が目に入った。


「いっくんおはよ〜」


 ぴょんぴょんと短めのツインテールを跳ねさせ満面の笑みでこちらに駆けてきたその子は、記憶を取り戻した際一緒におままごとをしていた『のんちゃん』だ。


 のんちゃんの名前は『宮脇奏音みやわきかのん』。

 近所に住んでいる、所謂幼馴染というやつ。

 因みにのんちゃんとはこうして毎日一緒に登校している。

 お互いを『いっくん』『のんちゃん』と呼んでいるのはのんちゃんたっての希望から。

 『こういち』の『いち』と『かのん』の『のん』だね。

 何でも名前の頭ではなく後ろで呼ぶのに特別感があるのだとか。ようわからん。

 けど嫌という訳でもないので受け入れている。


「おはようのんちゃん、待った?」

「ううん、いまきたところ〜」


 このやり取りものんちゃんが希望して毎日やっている。

 待ち合わせ感を出したいのだとか。ようわからん。


「かん字のしゅくだいやった?」

「あ、のんちゃんも国語で宿題出たの? うんやったよ。しかも途中からはどうやったら効率良く書けるかの研究までしちゃった」

「そうなの? のんはふつうに書いちゃった」

「うん、それが正解」


 縦線だけを最初に書いてとかやったんだが、なんだかんだ普通に書くのが一番早かったからね。


 何気ない会話をのんちゃんとしていると小学校に着いた。


「じゃぁまたかえりにね〜」

「うんバイバイ」


 のんちゃんとは別クラスなので廊下でお別れだ。


 因みに記憶が戻っても小学校は意外と楽しかった。

 休み時間にクラスメイトの男子数人で箒でチャンバラしたのだが、これがなかなか白熱した。後で先生にこっぴどく怒られたけど。


 どうも精神が記憶が戻る前の俺に引っ張られている気がするが、楽しいのでOKとしよう。



 放課後またのんちゃんと昇降口で待ち合わせをして一緒に帰る。

 今日はのんちゃんは遊びに来ないのでアパートの前でさよならだ。


「いっくん、またあした」

「うん、また明日ね」


 のんちゃんが俺にぎゅっと抱きつく。朝と違って元気のない声が可哀想になるが、いつまでもこうしている訳にもいかないので心を鬼にしてお別れをする。


「ただいま」


 帰宅の挨拶をするが返事はない。

 母上殿はまだ仕事なので誰もいない。


 母上殿は俺を一人で育てるためにフルタイムで働いている。保育園の頃までは時間に融通の利くパートタイムにしていたようだが、小学校に上がってからは正社員に戻った。

 今後俺にお金が掛かってくるからだ。


 母上殿の仕事は病院の医療事務。残業も少なくないし年に何回か勉強会とかもある。特に月末は医療費の請求関係で遅くなる時が多い。

 いつも俺を一人にすると申し訳無さそうにするが、それは俺の方だ。


 一人にしてごめんよ。


「やはりなにか美弥を、母上殿を楽に出来る事を考えねば!」


 罪悪感や責任感もあるが、何より美弥には、母上殿には幸せになって欲しい。


「そうなるとまずは俺に何が出来るかだよな」


 元勇者とは言え今は唯の子供だ、出来ることは少ない。


「せめて勇者の力があれば」


 そう思い、昔を思い出しながら体内の《《魔力》》をねってみた。





 魔力があった。





「え、え、えぇぇぇぇぇ!?」


 普通に魔力が錬れたんだけど。


「試しにファイヤはぁぁぁぁぁ!?」


 うおぉぉぉ指先から火が出てる。消火消火!!


 うっそだろ、普通に《《魔法が使える》》んだが!


 俺が行っていた異世界は例に漏れず剣と魔法のファンタジー世界。そこで勇者をやっていた俺は当然ながらとびっきりの力を持っていた。それこそ神を倒せるほどの。


「まじかぁ。使えればいいなと気軽に言ったけど、まさか本当に使えるとは」


 こうなるとどこまで出来るのかを確かめたいのが男の子というものだ。


「転移・・・・うは、マジかよ!?」


 空間転移魔法を使ってみた。これは思い描ける場所ならどこにでも一瞬で行ける魔法だ。

 前世で美弥と行った事がある海辺を思い出して使ったら目の前に海が広がっている。


 余談だが、魔法名を口にしているのはそのほうが分かりやすく気分が乗るからと言う理由からだ。つまり魔法名を口にする必要は全く無い。


「浮遊魔法も普通に使える・・・・ちょっと攻撃魔法も試そうか」


 空に浮かんでから風魔法を駆使して洋上を飛ぶ。

 しばらく進むと視界には海以外何も無くなった。

 流石に攻撃魔法をおいそれとは使えないのでこうして何もない場所まで来た。


「バーストフレイム」


 上級炎魔法を使用。この名前はカッコ良さそうだから言っただけでやはり意味はない。


 海の上に巨大な火柱が立った。

 大体直径が50mの高さが200mくらいだろうか。


 うはぁ、これやべぇぇな。


 それ以外にも色々と使ってみた。

 どうやら勇者の頃に使えた魔法は全て使えるらしい。

 ただ以前と比べて幼い体のせいか魔力も体力も少なく消耗が激しい。おそらくだが地球の魔素が馴染みにくいのも原因だと思う。


「地球に魔素があったのも驚きだが。しかし魔法が使いにくいと言ってもバーストフレイム程度なら何十発かは撃てそうだ。魔力の回復も魔素環境に慣れれば問題ないだろう」


 何年かはかかるだろうが逆に言えばその程度。つまり魔法が使い放題だと言うこと。

 そこまで試して俺はハッとあることに気がついた。


「もしかして・・・・アイテムボックスも?」


 そう、それは異空間収納魔法である所謂アイテムボックス。

 これも普通に魔法として存在し俺も便利だから当然使っていた。それこそ勇者の頃に使っていたありとあらゆる物がその中に入っている。

 ものは試しとここには絶対存在しないやつを取り出してみることにする。


「出たよ、《《聖剣》》!」


 するとどうだ。

 やたらと立派で神々しい輝きを放つ剣が現れたではないか。


 これはあのクソ女神から勇者特典でもらったもので、邪神も真っ二つにした名刀。

 

 おうふ、まじか!? アイテム類も全部そのままじゃねぇか!


 てかこの聖剣、相変わらず無駄に《《眩しい》》な!!


 この聖剣、こうして毎回取り出すと発光する。

 実はこの聖剣内包エネルギーが大きすぎて常に垂れ流しているというとんでも仕様だ。

 だが普段からそうしている分には僅かに明るくなる程度で逆に神々しいくらいのものなのだが、何故かアイテムボックスにしまっている間はエネルギーの放出ができないらしく、どんどん溜まっていき、そして取り出した瞬間爆発的に溢れ出すという迷惑な極まりないものとなっている。しかも溢れたエネルギーに使い道がないという。

 

 つまり、無駄エフェクト!


 常に出していればいいのだが、それでもずっと光って入るのでハッキリ言って目立つわ寝ている時眩しいわでいいことがない。ならば一瞬だけ光るほうがまだましかなと思ってしまっていたのだが。


「地球じゃ本気でおいそれと出せないぞ、こんなの」


 マジでそれ!

 光って目立つ銃刀法違反!


 それにしても、聖剣もそうだが『エリクサー』とか使ったら騒ぎになりそうなものが満載だ。そもそも下級のポーションだけでもやばい。『エリクサー』なんて生きてさえいれば胴体が半分になったって完璧に治る魔法薬だぞ。多分だが、末期癌や治療法がない難病も完治すると思う。


「いやいや女神様よ、こんなものそのままって不味くないか?」


 こんなの日本でどうしろと。



 俺はその後も色々と試し、結果勇者の力やアイテム類は封印しようと心に誓うのであった。

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