元カノと母親
こんな事態になってどうしようかと思ったが、どうしようもないなと直ぐに開き直った。
どうやら俺は長年異世界で放置されたせいで色々と達観してしまったようだ。
子供に転生してしまったものは仕方がない。何だかんだ言ってもう8年経ってるし今更だ。
それよりも俺が前世の自分と恋人との間に生まれた子供という方が問題だ。
感慨深いようなそうでもないような。何とも言えないこの感情。
「お母さん、お父さんってどんな人だったの?」
「めずらしいわね、光一がお父さんのことを気にするなんて・・・・そうねぇ、一言で言えば優しい人だったかな。いつも自分のことは後回しで私のことを優先してくれて」
「そ、そう」
ちょっと恥ずかしい。
「お父さんはどうしてるの」
ここにいるんだけどね、認識がどうなっているのか気になる。
「光一のお父さんはう〜んと遠い所に行ってるの。だから帰っては来れないの。ごめんね、光一《《も》》寂しいよね」
「ぼ、僕は大丈夫だよ。お母さんがいるから」
そう語る美弥の顔はすごく切なそうで申し訳無さそうだった。
聞いておきながら心が苦しくなる。
でもまぁ、なるほど。遠いところに行って帰って来れない、か。
微妙に合っているところが困るが、これはやっぱり行方不明か死んだことになっているんだろうか? まさかとは思うが俺が美弥を捨てて逃げたとか思われてないよね!?
くっ、これは何れ俺の《《元両親》》にも会って確認をしておきたい・・・・が、出来るのは当面は後になるか。何しろ今生で実家に行った記憶がない。だからこそ判断に困るのだが、一つ分かるのは、多分美弥は前世の俺との間に子供ができたことを両親に伝えてない。伝えれば突然いなくなった無責任な俺に両親が責任を感じてこうして合わないなんてことは無いはずだ。
居た堪れねぇぇぇぇ!
うぉぉ、俺のせいでは無いにしても、異世界に俺が転移されたことで美弥に随分とつらい思いをさせてしまっている。
こうして母一人子一人の生活は当然楽でも簡単でもないはずだ。
本当はあの日プロポーズをするつもりだったんだ・・・・その時にはもう子供を身ごもっていたんだよなぁ。
「嬉しいわ。お母さんも光一がいてくれればそれで幸せよ」
美弥、もとい母上殿が笑う。
その優しい笑みには嘘偽りは一切感じ取れない。
こうして前世の恋人だとわかっても、不思議と女性への好意ではなく家族としての親愛なんだな。
あくまでも今の俺にとっては彼女は愛した恋人ではなく母親なのだろう。
それが環境に寄るものなのか、あるいは転生に寄る影響なのかは定かじゃないが、変に意識しなくて済むのは助かる。
しかし、しかしだ。だからといって苦労をかけた責任を取らなくて良いわけじゃない。
今現状暮らしているのは築20年位の1LKのアパート。母上殿が一生懸命仕事を頑張ってくれているが、やはり母子家庭、裕福では無い。
これ以上苦労をかけたくない。
だから俺が出来ることをこれから頑張る。
「あら喜んでくれるの。そんなガッツポーズまでして」
俺が決意に拳を握りしめる姿を母上殿は楽しそうに眺めていた。




