第1節:特訓の夜明け
森の夜が明け始め、空が薄い藍色に染まるころ、ライルはまだ倒木に座り込み、角の光を手で確かめていた。
熱は夜の間も残っていたが、恐怖は徐々に好奇心に変わりつつある。
「ライル、まずは角の光に意識を向けること。逃げずに感じるの」
エルシュは柔らかく語りかける。
「感じる……って、どうすれば?」
「呼吸を整えて、力の流れを頭ではなく体で感じるの。角の熱、血の高鳴り、全身に走る微かな振動――それが雷素の存在」
ライルは深呼吸を繰り返し、手を角に沿わせる。
角の熱が指先に伝わり、青白い光が揺らめく。
「……光が、少し落ち着いてきた気がする」
「いいわ、その感覚を覚えて」
エルシュは少し距離を取り、指先で小さな光の粒を作った。
「これを動かすのではなく、放つ感覚を覚えなさい。力は意思に従うのではなく、導くもの」
ライルは息を呑む。角の先に光が宿り、空気がわずかに震える。
最初は小さく、しかし確実に、角の光は指示に応じて強弱を変えた。
「……俺、できてる……?」
「うん。完璧ではないけれど、初めてにしては上出来。力はすぐには制御できない。焦らず、段階を踏むの」
森の朝の光が木々の間に差し込み、地面に斑模様を作る。
ライルは角の光を確認しながら、心の中で小さく決意する。
(これを……俺の力にするんだ……)
二人は森を抜け、村へ戻ることにした。
「村の人たちには、まだ何も言わないほうがいいわ。慌てて見せる必要はない」
「うん……でも、怖がられちゃうかな」
「怖がるかもしれない。でも、力を正しく扱えるようになれば、君自身も、周りも安心できる」
村に近づくと、祭りの後片付けで忙しそうな村人たちの姿が見える。
遠くでミラエルが小さく手を振る。
ライルは深呼吸し、角の光を押さえつつ、微かに微笑んだ。
森での一夜と、エルシュとの出会い、雷素の初めての制御――
この経験は、これからの訓練と日常の中で、ライルにとってかけがえのない基礎となるのだった。




