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星の記憶 ー 十二幻想記 ー  作者: ぶれ
第2章:黎明の子

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第4節:向合


森は深い静寂に包まれ、月光だけが木々の間を柔らかく照らしていた。

ライルは倒木に腰を下ろし、まだ手に残る角の熱を確かめる。胸の鼓動は収まらず、全身の血が熱を帯びる感覚が続く。


エルシュは少し離れた場所に座り、森を静かに見渡しながら口を開いた。

「ライル、今の力……君の角に宿った光は、雷素と呼ばれるもの。地上に残る、かつての幻想種の力の残響よ」

ライルは驚いて眉をひそめる。

「……残響……って、俺の中に?」

「ええ。君の血には、その力の痕跡が代を重ねて薄く残っている。だから君の角が反応したの」


月光の中、角の光は青白く淡く揺れ、熱を帯びたままだ。

「でも、なんで光ったの?」

エルシュは優しく首を傾げる。

「力は感情に反応する。恐怖や興奮、怒り――強い感覚は、雷素を引き出す触媒になるの。君の場合、祭りの熱気や気持ちの高ぶりが作用したのね」


ライルは膝を抱え、角の熱をそっと押さえながら考える。

(俺の感情……力と関係があるのか……?)


「この光は危険でもあるし、使い方次第では役立つものにもなる」

エルシュはそう言い、手をひらりと動かして夜の闇に浮かぶ小さな光を示した。

「雷素は、雷そのものを操るわけじゃない。天候を動かす力ではなく、電気的な性質を帯びたエネルギー。角や体に蓄えて、放出することで光や熱、衝撃として現れるの」


ライルは目を見開く。

「衝撃……?」

「ええ。触れるものや空間に力を届けることができる。でも制御できなければ、予期せぬ暴走になる。それが君が今体験した熱と光よ」


月光の下、森の静寂が二人を包む。

ライルは小さくうなずき、恐怖と好奇心が入り混じった胸のざわめきを感じる。


「じゃあ……俺の力って……コントロールできるの?」

「ゆっくりでいいわ。まずは理解すること。光を恐れず、感じながら、少しずつ自分の力と対話するの」

エルシュは微笑み、柔らかく語りかける。

「雷素は君の一部で、君自身の意思で導けるようになる。そのために、私が手助けしましょう」


ライルは角を握りしめ、胸の中で決意が芽生える。

(……俺の力……俺のものなんだ……)


夜空を見上げると、淡く瞬く星々が、遠い昔の物語を静かに語りかけるようだった。

(あの星々も、俺の力と関係しているのか……?)


森の奥で、遠くの祭りの喧騒はかすかに聞こえるだけ。

ライルの胸の中で、恐怖は少しずつ好奇心に変わり始めていた。

エルシュの知恵の光に導かれ、少年は初めて自分の力――雷素と向き合う夜を迎えた。

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