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星の記憶 ー 十二幻想記 ー  作者: ぶれ
第1章:星の記憶

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第3節:封印の刻(とき)と沈黙の門



黒い雷が天を裂いた夜、星界と地上は悲鳴を上げた。

光を司る者たちは叫び、炎の座は燃え尽き、

水瓶座の塔は蒼白に砕け散った。


門を繋ぐ導脈はすでに断たれ、

星々を循環していた「エレメント」は暴走を始めた。


――空は焦げ、風は逆巻き、海は空へと流れた。


それは「世界の終わり」のようであり、

同時に、「新しい理の誕生」の始まりでもあった。


幻想種たちは、自らの過ちを知っていた。

彼らの技術と傲慢が、星界と地界の境界を崩壊させたのだ。

ゆえに彼らは、残された同胞を集め、封印の儀を行うことを決意した。



封印の中心は、

十二星座のうち最後まで生き残った六座――


水瓶・獅子・乙女・蠍・魚・天秤――によって築かれた。


彼らは星界の残響を集め、

世界の中心にある大門「星環せいかん」を閉じるためのを描いた。


封印の詠唱は、かつて星々が誓約を交わした言葉そのものだった。


「光よ、還れ。闇を抱き、静寂に眠れ。

星の理を越えし声は、我らが手に余る。

ならば、すべてを閉じ、祈りだけを残そう」


それは、幻想種の時代の終焉を意味した。


封印の儀の最中、雷素の奔流が再び門を震わせた。

すでに虚空の力が深く侵入していたため、

完全な閉鎖は叶わず、門の奥に“ひとつの歪み”が残った。


その歪みは、**雷光のこん**として刻まれた。

後の時代に「雷窟らいくつ」と呼ばれる洞窟――

雷素を宿す子らが生まれる場所である。


星の門が閉ざされる瞬間、

幻想種たちは自らの肉体を星界に還した。

その魂は「素」となり、風や水、石や樹の中に溶け込んだ。


ゆえに、この時代以降、幻想種の血を引く者たちは、

地上に散った“素の残響”として生まれることになる。

血は混ざり、形を変え、代を重ねるごとに薄れ、

やがて――人々の中に「神話」として残った。



封印から千年。


大陸は四つの群島に分かれた。

海は深く裂け、かつての大陸間の導脈は沈んだ。


残された四座――

風の座は西へ、火の座は南へ、

水の座は東に、地の座は北に――

それぞれが独自の理を築き始めた。


そして、彼らの末裔たちが四大陸の基層民族となる。


この時代、人々は“星”を忘れ、

“天”を畏れ、

“雷”を忌むようになった。


雷は封印を破った象徴であり、

破滅を招くものとして語り継がれたのだ。



それでもなお――

ごく稀に、封印の残響が地上に滲み出ることがあった。


雷窟と呼ばれる断層の奥、

封印の亀裂から流れ出る微細な“星素”。


その光を受けて生まれた者たちは、

星々の記憶を夢に見る。


彼らは時に、異様な力を持って生まれる。

そして、恐れられる。


――物語の舞台に立つ少年、ライルもまた、そのひとりであった。


彼が持つ“雷素”の輝きは、

封印された星の記憶そのもの。

その血脈は、遠き昔、星門を開こうとした水瓶座の民の系譜に連なる。


だが、彼自身はそのことを知らない。

誰もが神話を忘れた世界で、

彼だけが、かすかに星の夢を見る。


それが、この物語の始まりである。

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