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星の記憶 ー 十二幻想記 ー  作者: ぶれ
第1章:星の記憶

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第2節:門の崩壊と大戦の黎明



大いなる星の息吹が、地に理をもたらして幾千の季節が巡った。

星座の神らは自らの領を整え、種を与え、人々に「役割」を授けた。


しかし、**ことわり**は永遠に均衡ではいられなかった。


星の光が交わるその軌道に、微かなる歪みが生じたのだ。

星々が定めた法を超え、互いの「エレメント」が干渉を始めた。

その交わりは最初、祝福のように美しかった。


雷が水を導き、水が火を鎮め、風が土を肥やした。


だがやがて、それは混沌の種と化した。


星々の門を通じて流れ込む力は、ひとつの星系には余るほどの奔流となり、

天上に住まう幻想種と、地上に生きる者たちとの間に「差」を生んだ。


幻想種は星の力を直接操る者たちであり、

彼らの体は光に近く、思念がそのまま力となった。


地上の種族――人や獣、竜や精霊は、

その光の残響のみを受けて生まれた。

彼らは祈り、星を仰ぎ、門の向こうにいる存在を「神」と呼び始めた。


こうして、崇拝と誤解が生まれた。


幻想種は神ではなかった。

だが、彼らが築いた塔の頂から見下ろす光景は、

人の眼にはまさしく「神々の居所」と映った。



その時代、もっとも栄えたのが水瓶座の民であった。

彼らは知識と観測の種族であり、

「星の門」を技術として解析し、制御しようとした。


星と星を繋ぐ「導脈」は雷の流れのように震えていた。


彼らはその脈動を模倣し、人工の雷を生み出した。


それが、のちに**雷素らいそ**と呼ばれる始原の力である。


雷素は星界と地界を繋ぐ鍵となり、

瞬く間に他の種族にも模倣された。

火の座の民はそれを兵器に転じ、

風の座は加速器と呼ばれる機構を造り、

地の座は雷素を核に動く機械生命を錬成した。


やがて、星界の各門を管理する者たちの間に「所有」の概念が芽生えた。

誰がどの門を制御するか。

どの星に繋がる力を受けるか。


理は静かに分裂し始めた。



そして――

ひとつの事故が起きた。


水瓶座の大都・アクルミアにて、

雷素を用いた星門制御実験が行われた。


導脈の共振を拡張し、

閉じた門を一時的に再開放する計画だったという。


だが、計算を担っていた高位幻想種の一族が、

その瞬間、暴走した。


門は「星」ではなく、「外」へと繋がったのだ。


星界の理を超えた“無の彼方”――虚空より流れ込む黒い雷が、

大陸を覆い尽くした。


都市は光に呑まれ、塔は崩れ、空は裂けた。

一瞬にして千の命が消え、

残った者の魂は星の門の中へと吸い込まれた。


それが、門崩壊ゲート・カタストロフ


幻想種たちは恐れた。

地上の民は怒り、そして誤解した。


「天上の者が、星を壊した」

「神々が我らを見放した」


この日を境に、幻想種と地上種の分断が始まる。


門を守護する者たちは封印を選び、

星々の力を地上に落とす道を断った。


封印の光は空を覆い、

雷素は制御不能となり、

世界は静寂に沈んだ。



だが、それは終わりではなかった。

むしろ、それが“世界の始まり”だった。


地上の種族は、星の光を失った夜を「初の闇」と呼び、

この時代をもって暦を刻み始めた。


門の崩壊により滅んだ十二星座の民のうち、

地上に痕跡を残したのはわずか四座。

他は一部を残し星々の彼方へと消え、

あるいは、天と海の深奥に隔たれた。


こうして、

星々の時代は幕を下ろし、

「封印の時代」が訪れる。


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