第6節:星の門
ライルは自分の部屋の宝物箱の蓋をそっと閉じ、深く息を吐いた。
胸の奥で、角の光と雷石の微かな振動がまだくすぶっている。
(……森でやったことを、誰にも知られたくない……)
そのとき、扉の向こうから父カイロスの低い声が聞こえた。
「ライル、戻ってきたのか」
昨夜、何も言わずに森に出かけ、夜通し帰らなかったことを思い出す。
ライルの胸がざわつく。
カイロスは部屋に入るなり、苛立ちを隠せないまま少年を見つめた。
「何も言わずに行方をくらませて……夜通し戻らなかったのはどういうつもりだ」
ライルは小さく息を吸い込み、目を伏せる。
「……す、すみません……」
父は手を差し出し、ライルの手のひらをじっと見つめた。
微かに赤く、熱を帯びている。
「……これは火の力だな?」
ライルは言い淀みながら答える。
「……たぶん……」
カイロスの角が微かに赤く光り、熱の波動が緊張と苛立ちを伝える。
角の先端がわずかに揺れ、火の力の性質で感情を反映しているのがわかる。
父の声は少し硬く、しかし落ち着きもある。
「まだ発現したばかりなのだから、焦るな。まだ不安定だ」
カイロスは少し間を置き、穏やかさを取り戻した声で続けた。
「森でも村でも、近づいてはいけない場所がある。特に森の奥、星の門のそばは近づくほど危険だ」
ライルは顔を上げる。
「どうして……危険なんですか?」
カイロスは言葉を選びながら答える。
「星の門は、昔は世界の力の流れを調節していた場所だ。昔語った神話の通り、封印される前は力の暴走や戦争の原因にもなった。門のそばでは力が歪みやすく、感覚の不安定な者は知らぬ間に巻き込まれる」
「……巻き込まれる……」
「村でも、代々それを教えている。門のそばは、雷の残滓が残り、火でも水でも力を持つ者には危険が大きい。無理に近づけば、自分も、周囲も傷つけることになる」
ライルは宝物箱の中の雷石を思い浮かべ、胸がぎゅっと締め付けられる。
(……森の特訓、雷石、エルシュ……誰にも言えない……)
夜の部屋に、静かな緊張と秘密の空気が漂う。
星の門の警告と、父の角の微かな揺れ、森での訓練――
ライルはまだ若い体で、少しずつ力と向き合う覚悟を胸に刻むのだった。




