第5節:雷石
森の夜は深く、木々の影が月光に揺れていた。
ライルは倒木に腰を下ろし、角の光を意識的に揺らす。
微かな熱と振動が指先に伝わり、光はまだ不安定だが、前より制御できる感覚を覚え始めていた。
「焦らなくていい。まだ初めてにしては十分だよ」
エルシュの声が森の静寂に溶ける。
ライルは振り返り、銀髪が月光に反射するエルシュを見た。
「見守ってくれてるんだな」
「見守るだけじゃない。少し助けも必要かもしれない」
エルシュは手を差し出し、小さな黒曜石のような石を置いた。
「雷石だ」
ライルは石を手に取り、冷たさと微かな振動を感じる。
「……雷素と関係があるのか?」
「そう。ただの鉱石じゃない。星の門の周辺鉱脈でしか採れない希少な石で、雷素を扱う者のために幻想種が加工してある」
石を握ると、角の光の揺れに連動して熱や微振動が手に伝わる。
「握るだけで、光の状態が分かる……!」
「うん。力を安定させる補助だ。使い方を間違えると暴走して危険だから、焦らず、角の感覚と呼吸を合わせて扱うこと」
森での練習が終わると、ライルは雷石をそっとポケットに忍ばせた。
(……森から家までの間も、ずっと光と手の感覚を確かめられる……)
家に着くと、ライルは自分の部屋の片隅にある小さな宝物箱を開け、雷石をそっとしまった。
箱の中で石は冷たく光り、手の感覚の記憶を呼び起こす。
「焦らず、少しずつ……」
ライルは深呼吸し、雷素との最初の対話を胸の中で反芻する。
エルシュの言葉が心に残る。
「夜の森で星を見ながら光を確かめると、体と力の感覚がよりつながる。無理に抑えなくていい、少しずつ覚えていけばいいんだ」
森の静けさと宝箱の中の石――二つの空間が、少年の雷素修練の始まりをやさしく照らしていた。




