第3節:血の記憶
祭りの片付けが終わりかけた頃、ライルは村の広場で角の光をそっと確かめていた。
そのとき、父親のカイロスが大きな足音を立てて近づいてきた。
「ライル! 一体、昨夜はどこに行っていたんだ?」
父の声には怒りが混ざりつつも、心配が滲んでいた。
ライルは角の光を手で押さえ、俯きながら答える。
「……森の奥に、ちょっと……」
「ちょっと……じゃないだろう。夜通し戻ってこなかったじゃないか。何も言わずに行動するのは危険だ」
カイロスの眉は険しく、口元は引き締まる。
「心配して、村中が探していたんだぞ。君はまだ子どもだ。責任というものを学ばねばならん」
ライルは小さくうなずき、角の光を押さえる手に力を込める。
カイロスは深呼吸を置き、ライルの肩に手を置く。
「それから……その指先、まだ熱が残っているな」
ライルは驚いて手を引こうとする。
「落ち着け、力を責めているわけではない。だが、これは初めての発現だろう。まだ不安定だから、慎重に扱うんだ」
「……不安定?」
「そうだ。火の力は我々の血に刻まれているが、君の角の光のように不意に熱と光が走るのは初めてだ。火と水の力を継いでいるからかもしれないが、今はまだ分からぬ」
ライルは角の光を手で押さえ、熱の揺れを感じる。
(……まだ、俺の力……分からない……でもすこし怖い)
カイロスは静かに続ける。
「焦るな、慌てるな。呼吸を整え、感覚を確かめながら、角や手の中の光を意識するんだ。力は恐れず、でも無闇に暴れさせず、扱うのが肝心だ」
ライルは小さく息を吸い、手の中の熱と光を意識する。
「……分かった、父さん」
「よし、それでこそ、我が子よ」
その夜、ライルは森へ向かう決意を固めた。
父の助言を胸に刻み、角の光を意識しながら、静かに森の奥へと歩を進める。




