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第一章 第二節 日常の中、一滴の非日常

風邪をひき薬を飲んで良くなってもぶり返し約二週間も体調崩してます。皆様も体調にはお気をつけください。

「お勤めご苦労様ですレイスさん。」

そう言って若い警備兵は右手で握り拳を作りそれを左胸に置き三十度の礼をした。

「スヴェン君もお疲れ様~。仕事にはもう慣れた?」

左手を振りながらレイスは挨拶を返す。

今年15歳になったスヴェンは見習いから正式に採用され申請書類や報告書の作成、伝令係といった新兵お馴染みの雑務をこなしつつ一人前になる為より実践に近い戦闘訓練を受ける日々を送ている。

「いや~相変わらずレイスさんの戦い方は優雅でカッコイイ!俺もあんな風に早く戦えるようになりたいなぁ。」

両手で握りこぶしを作り先ほどの光景を思い出すかのように目を閉じた。

「修練あるのみだよ頑張ってねスヴェン君。」

「はい!」

レイスの励ましにスヴェンは明るく返事をかえす。

「それで悪いんだけど早く事情聴取を終わらせてお買い物に行きたいんだけど・・・」

「ああっ!すみません!それじゃ急いで終わらせますね。」

杖を抱き両手を合わせ申し訳なさそうな表情のレイスを見たスヴェンは慌てて白紙の紙と携帯用の二つ折りボード取り出し十分程度で聴取を終わらせ二人は別れた。


事情聴取が終わり晩ご飯の食材を求めてレイスは表通りの市場に来たのだが予想を遥かに超える人で賑わっていることに驚いた。

普段なら様々な食材が並んでいるのだが今日から三日間は祭りの為店はそのまま、見知らぬ商人と品が並んでいる。

「お祭りだもんね、仕方ないか。晩御飯は出店のものにするなら一旦帰って・・・」

「あら、レイスちゃん!もしかして夕飯の買い出しかい?」

下ごしらえと調理分の時間が空きどうするか考えていると呼びかけられ声のした方に顔を向けた。

「あ、エッバさん。」

旦那が作った新鮮な野菜をエッバはいつもこの市場で販売していてわんぱくな二人の息子に手を焼きよく愚痴をお客さんにこぼしている。

「ちょっと人が増えるから晩御飯の食材を足そうかなって思ったんだけど。」

「そうかい!じゃあ丁度いい、うちで買っていきな。」

「え、でも今日はお店お休みなんじゃ?」

エッバはレイスの手を取り店に向かって歩き出す。

「こんな大きな祭りは初めてだろ?それについさっきレイスちゃんが大立ち回りしてたみたいに外だとトラブルに巻き込まれるかもしれないから夜は家で過ごそうってなるかもしれない。」

店に到着しエッバはレイスの手を放し向き直る。

「そしたら思ってたより食材が足りないって言いだす家があるかもしれない。そんな連中の為に今から店を開けようってなったのさ。」

「さすがエッバさん!頼りになる~。」

「そんなお客さん第一号がレイスちゃんってわけさ。」

「あ、あははは~」

含みのある笑みをするに対しレイスは苦笑しながら商品を見繕い始めた。

「うーん、にんじん2本と玉ねぎを2つ、じゃがいもは~、4個お願いします。」

「あいよ。それじゃ、じゃがいもの2個はおまけにしといてあげる。」

「ありがとう!助かる~。」

商品を詰めた紙袋を受け取るとレイスはエッバと別れ他の食材を探しに市場の中を歩く。

結果は空振りだったが屋台でソーセージの串焼きを三本購入して帰路に着いた。


工房兼自宅である夢幻鍛の扉を体で押して帰宅する。

「おかえりレイス。おまえさんのベッドと茶器を借りてるぞ。あと秘蔵のクッキーもいただいている。」

家に入ると待合スペースからビルに声をかけられる。

「ただいまビルさん。こっちこそ二人を任せっきりにしてごめんね。」

レイスは店のカウンターに荷物を置きながら返事を返す。

「気にするな。こういった揉め事の度にここに来てるからな。もう慣れた。」

ビルイェルは手元のカップを手に取り紅茶を一口飲むと顎で向かいに座っている少女を指した。

「ごめんなさい。怖かったでしょ?こんな無愛想なおじさんと二人っきりで。」

カウンターの奥から椅子を一つ取り出しレイスは少女の隣に座る。

「い、いえ大丈夫です。エマに飲ませるお薬の服用方法と注意事項、術後観察の日程といった今後の予定の説明を受けておりましたので怖いという感じはありませんでした。」

少女は胸の前で両手を振りながら答えた。

「それは良かった。・・・大変ご無礼とは存じますが一つ質問をしてもよろしいでしょうか?」

「え、あの、レイスさ・・・」

レイスは少女の言葉を待たず椅子の右側に立ち右手を左鎖骨あたりに置き左拳と膝を地面につけ深くお辞儀をする。

「オウェーロ王国イングリッド・スヴェーリエ第一王女殿下であらせられる貴方様がいかような理由で隣国であるここウプデサラン帝国の宿場街が一つイェンダーレンにおられるのかお聞かせ願えますでしょか。」

カップが床に落ち割れる音とイングリットから息を吞む音が聴こえたがレイスは微動だにせず姿勢を維持した。

イングリッド・スヴェーリエ。隣国の一つオウェーロ王国第一王女で王国の至宝と言われている。あまりにも綺麗に整った顔立ちにサファイアのような青い瞳と黄金色の髪は一度見たら決して忘れられない女神のように美しい。

「恐れながらウプデサラン帝国第一王子フレドリク・テュグシルド殿下との婚約の件は市井にも出回っております。しかし輿入れに関する情報はまだ出ておらず仮に輿入れであったとしてもいささか尚早かと思われますが。」

「レイスさんまずは顔を上げてくれませんか。」

レイスは言われた通り顔を上げイングリットの顔を見た。

「王女殿下と間違われるのは恐れ多いです。ですが私は王女殿下ではありません。」

「そ、そうだぞ。このお嬢さんの名前はリンネア・オルソン。商家の娘さんらしいぞ。」

イングリットの言葉に混乱し状況を見守っていたビルイェルが追従する。

「以前オウェーロ王国建国記念式典の折に殿下のご尊顔を拝する機会に恵まれましてそのお美しいお顔を見間違うというのはいささか無理があるかと。それと御身のようにお美しい方が他にもおられるなら国内外問わず噂の一つや二つ、流れていてもおかしくはないかと存じますが?」

イングリットは静かにレイスを見つめる。

「いくら商家のお嬢様でそのような貫禄のある佇まいはなかなかお見掛けすることはないですし何より、左顎の付け根付近にあるほくろの位置まで同じという他人がいるとはそうそう・・・」

「はぁぁ、もういいです。レイスさんのおっしゃる通りわたくしはイングリット・スヴェーリエですぅ。」

机に突っ伏しながら頬を膨らませるイングリット。

「王女殿下。流石にはしたないかと。」

「貴方は王国国民なのですか?」

窘めるレイスに冷たい視線を向けながらイングリットは問う。

「いえ私は帝国の民ですが。」

「ならば貴方に窘める資格はありません。それにここは王国ではなく帝国。さらに言うと今の私はイングリットではなくリンネア。王城でも宮殿でもない場所でどんな姿をさらしても文句を言われる筋合いは在りません!」

イングリットは拗ねて明後日の方向を向く。

(第一王子とご結婚されれば私もイングリッド様の国民になるのだけれど)

と考えながらレイスが見つめていると急にイングリッドは体を起こす。

「それに命の恩人に堅苦しい話し方されたくないのだけど。」

心の中で溜息をつきながらもレイスは立ち上がりながら答える。

「じゃ普段通りに話すから許してくれる?」

「はい、許します。」

イングリットは今日一番の笑顔を見せた。

つくづく自分の武器を理解されてる方だとレイスは感嘆する。

隣に目を向けると顔面蒼白でぶつぶつと呟くビルイェルの姿が目に入った。

散々失礼な態度を取った自覚があるのだろう。自分に適用される刑罰を口にしながら震えている。

この王女殿下が罰など下すはずもないがたまにはいい薬だろうとレイスは声をかけずそっとしておくことにした。

更新日から一週間以内の更新は目指します。今回みたいに眼痛と頭痛が酷いと全く書けないので病気の際は休みます。

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