表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

ヒロインにはなりたくない!~モブ令嬢希望

作者: satomi

短編です。

よろしくお願いします!

あーあ、今日も部屋の窓から楽しそうな声が聞こえる。

 小学生かなぁ?最近は小学校が終わるや否や塾に行く子が多いって聞くのに、元気な子達の声ねぇ。

 あ、私は高校2年生かなぁ?っていうのも、学校にいってないから。アハハ……。

 引きこもりってわけじゃないのよ。病弱すぎるの。誕生日が来ると「今年も生きて迎えることが出来た」って感じかな?

 でもそろそろ限界だと思う。多分。こういうのってわかるのね。

 寝るたびに、夢で三途の川みたいなのが見えたと思ったら、気づいたら救急車に乗ってたりした。

隊員さんが言うには、呼吸がおかしかったらしい。

 朝起きるたびに「今朝も起きることが出来た」と思う日々。

 

 ベッドにテーブルが備え付けられてほぼそこで勉強をし、食事をする。ベッドの上の住人です。

 正月だからと調子に乗って餅を食べたら、喉に詰まらせてそのまま……。17才とは思えない人生の終わり方をしてしまった。

 

 


 目覚めると体が楽だった。

 いろいろおかしい。私は死んだはず。餅を喉に詰まらせて。絶対全国ニュースだ。恥ずかしい。

 

ベッドに天蓋がついている。なんかフリル多くない?

 部屋は広いし。

 私は試しに立ち上がってみた。



 立てる!!



 気持ち的には三・三・七拍子の後に、万歳三唱。めでたい事を全部やりたい感じだ。

 いろいろやり尽くして、鏡を見た。




 NO~~~~~~~!!!!!!!!!!!




 私の髪がピンクだった。顔はまあ整っている方だと思うけど、それより髪!

 瞳の色もピンク!

 見回してみるとこの部屋の中、ピンクの小物が多い。多すぎる!

 

 私はピンクが好きじゃない。青とか寒色系の方が好きだ。よりにもよってピンク?あり得ない……。


「起きたかい?クリスティーン」

 誰?クリスティーン、私?私は純日本人で柳原ミコトです。

 色々聞いた情報を整理すると、私はどうやら死後異世界転生したようで男爵令嬢のクリスティーンらしい。


 柳原ミコト情報によると、入院中にかなりのラノベを読み漁りその結果、高確率でピンク色の髪をしている人間は学園の秩序を魅了で乱し、悪役令嬢を断罪するらしい。


 私はそんなことしたくない。

 運悪く髪がピンク……。ピンク……ピンク……。

 なんで?フラミンゴからの隔世遺伝?

 

 などと現実逃避していると、父に

「このポプリを肌身離さず、学校に持っていくんだよ。絶対だからなっ!」

 最後は語尾が脅迫めいていた。


 なるほどわかりやすい。このポプリが魅了アイテムってわけかぁ。

 父の言う通りに動いてたまるか!


 私は、このポプリと似たような生地で同じような大きさのものを作った。

 確か、学園に化学系に強い家門の人がいたはず。(私・ミコトが転生前のクリスティーン情報)

 その方にポプリの中身を鑑定していただこう。



 学園生活初日、父に渡されたポプリを持って登校。

 魅了アイテムってすごいんだなぁ。男子生徒からの視線がスゴイ!

 制服のスカートのチャック開いてるとかかなぁ?と自信なくなりそう。ハァ。


「そこの地味な女!」

 私に直接声をかけてきた方がいらっしゃいました。驚くなかれ王太子殿下です。

「光栄に想え、俺に侍る事を許そう」

 ……傲慢な言い方だなぁ。王太子殿下と言えば、淑女の憧れケリーティア嬢が婚約者でいらしたはずです。それなのに、まんまと魅了アイテムにひっかかって情けない!

「あ、お断りします。殿下は確かケリーティア様という立派な婚約者がいらしたはずです。それなのに、私のような爵位の低い者に声をかけるのはいかがなものかと思います。出過ぎたことを申し訳ありません。あ、もう始業時刻になりますので御前失礼いたします」

 殿下の顔は真っ赤になっていたけど、この際関係ないもんね。

 さて、このポプリ。どなたに鑑定していただきましょうか?

 フェロモンのようなものでも出ているのでしょうか?女子生徒には効かないようですし。

 でしたら、密閉できる容器に入れてしまいましょう。

 ふふふっ、王太子殿下としては先ほどの事が黒歴史になっているでしょうね。覚えているのかしら?覚えていても微妙。

 

手っ取り早く化学の先生(女性)に鑑定をお願いしましょう。

「折り入って相談が……。このポプリなのですが……。中身が魅了アイテムのようで……」

「っ、どこで手に入れたのっ!」

「父に「必ず身に着けて持っているように」と渡されたのですが……。ポプリというわりには良い香りはしませんし、学園に来たら男子生徒からの視線が……」

「なるほど。父君か……。貴女の父君は男爵だったよね。う~ん、魅了のアイテムを使ってどうにかしようとしてたとするならそれは犯罪」

「犯罪……」

「中身は責任を持って鑑定しよう。結果は貴女には教えるとして、犯罪に使われようとしているのなら、証拠が必要」

「とりあえず、似たような生地でポプリのようなものは作りました。それを持ち続けようと思います」

「うん、男爵の目を欺くためにはいいかもね。本物魅了アイテムは私が厳重に保管しよう」



 化学準備室から出ると、待ち構えていたかのようにケリーティア様が!!嗚呼、どこから見ても麗しい!私はポ~っと見惚れてしまった。

「貴女!今朝、王太子から公妾のお話があったんじゃないかしら?」

「あ、即お断りしました。王太子殿下にはケリーティア様、あぁお名前呼びをお許しください、ケリーティア様のような完璧淑女の麗しい婚約者様がいらっしゃいます。私のような者はお呼びではないでしょう」

 ケリーティア様は麗しの頬を染めて恥じらっていらした。

「違うのよ、怒ってるんじゃないのよ。貴女のような毅然とした対応はなかなかできるものじゃないから。しかも殿下には『地味な女』と詰られていたじゃない?貴女は可愛らしいと思うんだけど。それと、貴女に名前呼びされても構わないわよ。私は可愛いもの大好き!」

 ピンクの髪?

「殿下はケリーティア様のような麗しい方を見慣れているから、私のような顔は地味なんでしょう」

 ケリーティア様は本当に美しい。金髪碧眼の美女。お目目パッチリ、唇プルン、鼻筋ス~って感じ。もちろんスタイルもバッチリ。これで才色兼備だからなぁ。天が2物も3物も4物も与えましたって天の不公平さを感じる。

 そうだ、私の前世は餅を喉に詰まらせて死んだんだ。

「今度の長期休暇に私の家に泊まりに来ない?」

 ケリーティア様は公爵令嬢です。それも筆頭公爵家ワイラーロ家。貧乏男爵家にお断りするという選択肢はありません。

「是非、行かせていただきます!」

 ケリーティア様と交流できるのは嬉しいことだし、いいよね?

「私のように可愛いもの好きが集まるのよ。もうこの学園を卒業しちゃった先輩とかがほとんどかな?」

 今後の生活の人脈の糧にさせていただきたいものです。


 お泊り会の頃には魅了アイテムの鑑定結果が出ているでしょう。



「「「ようこそ!お泊り会へ!!」」」

 ひえぇぇ、ケリーティア様のお邸にお泊りするのも烏滸がましい男爵令嬢の私がケリーティア様のように麗しい方がケリーティア様の他に2人もいらっしゃる!

「お招きにあずかりまして光栄です。クリスティーン=レイルと申します。家門の爵位は恥ずかしながら男爵です」

 本当に恥ずかしい。穴があったら入りたい!穴掘ろうか?ダメだ。ここは公爵家のお庭、傷をつけるわけにはいかない…。

「爵位なんか関係ないわよ~。ケリーティア様に前から聞いていた通りね~。可愛いわ~」

「あら、クリスティーン様は私が見つけたんだから!」

 麗しの美女たちが私を取りあい?鼻血が出るシチュエーションね。実際、鼻血でそう…。

「二人が言い合ってるうちに。私はセーラ=モガミよ。家名からわかるわよね?東方の出身なのよ。よろしくね」

 彼女はストレート黒髪・黒目美人だ。大和撫子と言うんだろうか?あ、でもちょっと西の血も混ざってるから、純日本人!って感じとは違うなぁ。でも親近感。

「「セーラってばズルいわよ」」

「あ、私は平民なのよ~?でもほら、可愛いものは爵位を越えちゃうのかしら~?」

「アリスは平民だけど、大商家の一人娘じゃない。そこらの貴族よりもよっぽどお金持ちよ」

 うん、うち(貧乏男爵家)よりお金持ちだと思う……。


 つまり、ここにいらっしゃる麗しの方々は

 ケリーティア=ワイラーロ公爵令嬢・セーラ=モガミ侯爵令嬢・アリス令嬢(大商家の一人娘)とすごいラインナップなのですね。

 私がその中にいることが不思議です。

「今回は同学年が集まったんだけど、先輩方が集まる時もあるわよね」

「今回は珍しいわ~」

「先輩がいないもの、同学年ならではのお話もできるわね!」

 と、お三方はかなりのやる気です。


「えーと、私はセーラ様ともアリス様とも今まで面識がないのですがどうしてでしょう?」

 お三方は顔を見合わせた。ケリーティア様が代表して返事をくれた。

「申し上げにくいのですが……学園に対する寄付金でクラス替えが決まっているのです。なので、私がクリスティーン様とお会いしたのもあの時が初めてとなりますし……」

 なんですと?『学園は平等です!』みたいなことを言っておいて、そんなことでクラスを決めていたの?なんだか裏切られた気分。


「まぁ、それはそれとして、お泊り会を楽しみましょうよ。せっかく出会えたんだし」

「やっぱり、クリスティーン様は可愛い~」

「でしょでしょ?私の目に狂いはなかったのよ!」

「ケリーティア様の目利きは確かだものね。アリスの家の店の偽物とかもすーぐ見つけちゃう」

「助かるのよ~。商売は信用が大事だから~。たまに来て、偽物とかおかしいものとか見つけてくれるのは本当に助かってるのよ~」

「そんなこと言っても、何も上げないわよ!」

「「「ホホホッ」」」

 混ざれない……。


「えーっと、私は生粋の男爵令嬢じゃなくて、男爵が気まぐれで(?)貧民街から拾って男爵家に養女として迎えられたんです。だから、皆様と同じ空気を吸うのも烏滸がましい」

「そんなことを気にしていたの?結果論よ。今よ今!」

「そうよ、私の家だって最初は小さな商店だったもの。今でこそ、大きいけど。そんなもんよ」

「……お泊り会って何をするんですか?」

「そうねぇ、暴露大会みたいな感じだけど?」

(魅了アイテムかもってのはまだ伏せておいた方がいいかな?)

 そんな感じでお泊り会に参加することができた。皆さまとの距離も縮んで良かった。



 化学準備室に私は行った。

「鑑定結果はどうだったんでしょうか?」

「私が化学的に分析をしてみても、神殿で見てもらっても、魅了アイテムだろう。ってことだ。まぁまず間違いないな。国王に提出の上、証拠固めが必要だな。これをどこから入手したのか、そのルートがわからないことにはまた国内に魅了アイテムを蔓延させることになる」

「父は有罪でしょうか?」

「まぁ、間違いなく。君も少しは罪に問われるぞ」

 そうだろうなぁ。国外追放とか? 私はかまわないよ?元々ここに知り合いいないし。

 あ、お泊り会で親しくさせていただいた、ケリーティア様・セーラ様・アリス様と離れるのはちょっとなぁ。全てはこのピンクの髪がいけないのよ!


 魅了アイテムについては事前に手は打っているので大丈夫…だと思う。

 有力高位貴族の殿方も平和に暮らしているみたいで何より。遠目で見ていると、眼福よ。

 婚約者とも上手くいってるのでしょうね。そんな話題も聞かないし、何よりだわ~。


 ある日、私は父に呼び出された。

「お前、前に渡したポプリ。ちゃんと持ち歩いているのか?」

 キターーーーーー‼

 いつか絶対聞かれると思った。だって、誰一人として私に靡いてないんだもん。

「オカシイ……絶対にうまくいくはずだ……王太子だって陥落するはず……」

「何です?」

「いや?なんでもない。で、渡したポプリは今どこにある?」

「いつも学校に持っていくバッグの中に……」

 父は私の部屋にドカドカと入っていき(レディの部屋に入る感じじゃないわよ)、私のバッグを逆さまにして中身をベッドの上にバラまいた。

「お嬢様のベッドが汚れます!!」というメイドの悲痛な叫びもどこ吹く風。

「なんだ?このポプリは?渡したものと違うんじゃないか?」

 覚えてるの?記憶が良過ぎるっていうか、マナーが最悪。

「同じですけれども?」

 と、私はシラを切った。父は勝手にポプリの中身をベッドにぶちまけた。「「あぁ~~」」とメイドは叫ぶ。

「どういうことだ?中身が違うぞ?」

「違うんですか?私は中身を知りませんから違うのかわかりません」

「確かに違うんだ。お前に渡したポプリは魅了効果があってだなぁ。……」

 なんだか色々説明してくれましたけど、ぜーんぶ録音しちゃいました。私のバッグ無理に動かすと録音機能が動くようにしました。私が。物的証拠ゲットだぜ!

「ま、お前はいろいろ知ってしまったからなぁ。とりあえず、うちの地下牢にでも入っていてもらう」

 マジですかい。うーん、血が繋がらないからかなぁ?


 翌日の学園よりケリーティア様達が私を探すようになった。

「ピンクの髪って目立つのに、いらっしゃらないわね?せっかく一緒にランチでもと思ったのに」

「そうよねー」


 翌々日にも私が見当たらないと、流石に心配になって三人とも家までいらっしゃった。


 畏れ多くも王太子様の婚約者であられる公爵令嬢と侯爵令嬢と……平民がいらっしゃった。

 公爵家と侯爵家には礼を尽くすが……平民?なぜ?平民風情が公爵令嬢様達と??と父の頭の中は大パニックだった事だろう。

「はははっ、娘ですか?ちょっと体調が優れなくて学園を休ませていたのですよ。お嬢様方にはお手数をおかけしてしまって、不甲斐ない娘だ。お恥ずかしい」

「では、お見舞いをしたいのですが?」

「っいけません!病気が移っては大変です。ここはお引き取り下さい」

「仕方ありませんね。後日また伺いますわ。では失礼します。クリスティーン様によろしくお伝えください。お早い回復を待っています」


 私達はその場は引き下がった。

 私は知っている。男爵家の台所事情を。

 なぜなら、国にある商家のほぼ全部が我が家の傘下。クリスティーン様の家で購入される食材がここ数日で減っている。オカシイ…。もちろんこのことはケリーティア様・セーラ様にも話した。

「あらあら、証拠を残しちゃって」

「これは……クリスティーン様には食べ物を与えていないということかしら?」

「最悪の場合、与える必要がない。という事も…」

「「それは嫌ですわ」」

「私は公爵家の影を使ってクリスティーン様がどういう状態なのか調べるわ」

「では、私は侯爵家の影でクリスティーン様を救出するわ」

「さらに、私の家には影とかいないけど、物資は豊富よ?クリスティーン様を匿うわ」

「「「では、力を合わせましょう!!」」」


 このようにしてまず、ケリーティア様の家の影が私の状態を確認。数日水も与えられていない、ということで早急にアリス様より水が手配され私は水を与えられた。多くを与えると、トイレに行きたくなるので、量は少なめに本当に生きられるくらいにしておいた。

 トイレに小水などの証拠を残しては、父に『その体のどこに排泄するような水があるんだ?』と警備が厳しくなるでしょうし。


 ケリーティア様より私の状態を聞いたセーラ様は私をレイル男爵家から連れ出した。そして、アリス様が私を匿ってくれた。

 しばらくは学園に行かなくてもよいというか、行かない方がよいという判断だ。


 ケリーティア様達に魅了アイテムのこと言った方がいいよね?

 ここまでしてもらったし。

「えーっとまず、父から必ず身に着けているようにってとあるポプリを渡されたの」

「怪しいわね」

「怪しいわよ」

「絶対なんかあるわよ」

 お嬢様は何かアンテナがあるのでしょうか?

「そのポプリは現在、学園の化学の先生が厳重に保管しているはずよ。彼女の鑑定によると魅了アイテム……」

「「「やっぱりー」」」

「父はそれで高位貴族の殿方を私がメロメロにして、国を乗っ取るつもりだったんじゃないかしら?」

「男爵風情が大それたことを」とケリーティア様。

「国の経営はそんなに簡単じゃないわよ」とはアリス様。

「勘違いしてるんじゃないかしら?」とセーラ様。

 皆様なかなか辛辣です。

「アリス様が私を軟禁している証拠をもっています。私は父があのポプリが魅了アイテムだと自白している声を録音しました。普段持ち歩いているバッグなのですが……男爵家にあるんですよね」

「それと化学の先生が厳重に保管している本物の魅了アイテムでレイル男爵を完全に捕縛することができるわね」


 

 甘かった……。

 化学の先生が裏切った。あと少しで…というところだったのに。

 ケリーティア様曰く、「男子生徒が軒並みあの先生に釘付け。殿下さえも靡きかけているみたい」

 だそうだ。王家の人は魅了アイテムに抗うことができるんでしょうか?


 証拠としては甘いかもしれないですけど、私が普段持ち歩いているバッグはセーラ様の家の影の方が持って来てくれて、声をみんなで確認。

「うわー、すっごい自白。他にも色々言ってますね。黒幕まで話してくれればよかったのに」

「全くですわ」

 などと、麗しいお三方は怒りと嫌悪を露わにしていた。

「これを国王に奏上できないでしょうか?」

「「「ケリーティア様!」」」

「言いたいことはわかるわ。私の父の伝手を使ってですね。父もコレを聞けば……」

「クリスティーン様が軟禁されていた事実とアリス様の商家の帳簿ですね」

「今現在どういう状態なのかもお知らせしないと、大変なことになりかねませんわ」


 ケリーティア様は早急に公爵閣下に証拠の品々と現状を伝え、陛下への謁見を求めた。

「はぁ、流石に私達だけで謁見っていうのは無理があるみたいで、お父様と明日謁見することになったわよ」

「さすがに閣下もこの自白を聞くとなんともやりきれないですよね」

「対応が早いですわね」

「事態が重くかつ、深いからでしょうねぇ。場合によっては国家間の話になりますから」

 ひぇぇぇぇぇ。父よ、そんなものに手を出さないで平穏に暮らしてくれ。

「あ、そういえば!国王に謁見だというのに、私はそれにふさわしい服装を所持していないわ。どうしましょう?」

「ゴホンっ、貴女はいま誰の家にいると思っているのです?私の家は商家ですよ?ドレスを調達するくらいなんでもないことです。私も国王陛下に謁見するなんぞ考えてもいないですから、ふさわしい服なんて持っていないもの。これから調達よ?お揃いにしちゃいましょうか?」

「アリス様ばかりクリスティーン様を独り占めはズルいですわ!私もお揃いがいいです」

「私を仲間外れにしないで下さい。私だってクリスティーン様を独り占めはズルいと思いますわ」

 4人お揃いになるの?なんかレンジャーものみたいになるんだけど?


 結局、お揃いはお流れになった。髪の色とか違うし、似合う色も違いますからね。ほっと一息です。

 ケリーティア様はお姫様って感じのドレス。素敵です。

 セーラ様は東洋っぽい要素のあるエキゾチックな感じのドレス。なんだかドキドキです。

 アリス様は容姿が子供っぽい感じだけど、その良さを生かしつつも大人を感じさせるドレスです。なんだか色っぽいです。

 私?知りません。あてがわれたドレスを着ただけだから。

「やっぱり可愛いわぁクリスティーン様♡本当は着せ替えしたかったのよ?」

 可愛いらしいです。それにしても……レンジャーものみたいになんなくてよかった。


 あ、陛下。

 私は付け焼刃だけど、頑張って練習したカーテシーをした。

 麗しいお三方は身についているようで。

「面をあげよ。なんだか不穏な動きがあると、公爵から報告を受けた」

「恐れながら代表して私が報告いたします。レイル男爵が魅了アイテムを使って、国を何とかしようとしたもようです。計画は失敗して、現在魅了アイテムを所持しているのは王立学園の化学女性教師。彼女は魅了アイテムを使っています。王太子も彼女に靡く?という段階です。学園内は婚約破棄が多発。このままでは国が壊れてしまいます。

証拠となるのは、レイル男爵の娘のクリスティーン様で、彼女は男爵の計画を知ったために自宅の地下牢に監禁されていました。我が家の影が彼女の状態を把握し、モガミ侯爵家の影がクリスティーン様を助け出しました。

クリスティーン様をそのまま公爵家にも侯爵家でも匿うのはできたのですが、国内随一の商家であるアリス様の家に匿っていただくことにいたしました。

この際、クリスティーン様は自分が普段持ち歩いているバッグに盗聴器をしかけまして、男爵が魅了アイテムについていろいろと自白しているのを録音していました。それは我が父であるそこの公爵も聞いた内容です」

「うーむ、凄まじい内容だなぁ。公爵から自白内容についてはかいつまんでだが聞いている。男爵の処分については今は保留だな。この件について、男爵はどこからそのアイテムを手に入れたんだ?」

「それが今のところ分からないのです。他国となると国際問題となりますので、慎重な捜査が必要になります。とりあえず、学園の化学教師から魅了アイテムを取り返した方がいいですね。それもできるだけ早く」

「そうだな。クリスティーン嬢が地下牢からいなくなっていることは男爵も承知しているだろうから、化学教師、及び化学室、化学準備室を徹底捜査。捜査員は全員女性とする。男性は魅了されるんだろう?」

「システムは分からないのですが、そのようです。魅了アイテムはポプリに入っています。私が知っている限り。化学教師がどのように使用しているかは不明です」

 ポプリを所持していると所持している人に魅力を感じるのかぁ。ポプリを一肌で温めた人とか?

「ポプリを神殿でも鑑定した。と言っていました。本当でしょうか?」

「何故そう思う?」

「彼女が黒幕だとしたら?ポプリを見た段階でわかるんですよ。神殿に行く必要はないでしょう?可能性はゼロの方がいいですからね」

「ふむ、なるほど。君はなかなか賢いな」

「恐れ入ります。しかしながら、化学教師が黒幕としたら、さらに上役が居そうですね。化学の力で魅了アイテムは作れないでしょう?そうなると、やはり入手経路が気になります」

「そう、考えすぎもよくない。今できることとして、化学教師周辺を完全に捜査する。それと、神殿に化学教師から依頼があったかどうかの調査。あったなら、重畳。なかったなら、化学教師は嘘を吐いたことになる。とりあえずはそこまでだな。捜査員は全て女性。理由は魅了アイテムを扱うからだ。捜査員の名簿は必ず提出すること!」

 大変だなぁ。今度は捜査員が裏切るかもしれないんだもんなぁ。


 えーと、本来なら魅了アイテムを使うのは……ん?私?

 使いまくって、逆ハー展開で、最後に断罪して私的にハッピーエンド。だけど…

 今回は違うんだよねー。

 

 あーあ、あの魅了アイテム壊れないかなー?








END






読了ありがとうございます‼

感想・評価・下のほうにある☆・いいね などお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ