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読んでいただいてありがとうございます。この兄妹は好きです。

 セルフィナは図書館から出ると、護衛と共に待ち合わせのカフェまで歩いて行った。

 カフェにはすでに待ち合わせの相手が来ていた。


「セルフィナ、歩いて来たのか?」

「えぇ、今日は天気もいいし、図書館からここまでの間ならそれほど危険はないもの」

「それはそうだが……」

「護衛もいるし、お兄様たちが普段からしっかり警備してくれているのでしょう?心配いらないわ」


 兄であるキリアムの心配そうな顔に、セルフィナはくすりと笑った。


「それにしても、王都はすごく賑わっているのね」

「それはそうだろう。ここはフレストール王国の中心地だからな」

「人の多さで酔ってしまいそうになったわ。でも、図書館は静かだったわよ」


 外は、人の多さと活気で生き生きとした雰囲気を持つ、まさしく女王の治める都に相応しい雰囲気を持っているが、図書館の中はとても静かに一人一人がマナーを守って利用しているので、どこか厳かな雰囲気だった。


「そうだな。図書館は基本的に誰でも利用出来るが、役人や爵位持ち、それに学生が主な利用者だな。図書館に来る者たちは、たいてい自分の調べ物で手一杯で騒ぐこともない」

「そうね。私もセオリツ国のことを調べようと思わなかったら、図書館には行かなかったわ。うちの図書室の蔵書量は多い方だと思うけど、セオリツ国関係の本は少なかったの。でもさすが王国の図書館だわ。他にも色々と興味深い本を見かけたから、しばらく通おうかしら」

「あぁ。それもいいな。コンラート殿がいない間にセオリツ国のことに詳しくなって、驚かせてやれ」

「ふふ、それもいいわね」


 キリアムは、屈託のない笑顔で笑うセルフィナを見て、コンラートと結婚してこの国に来たことは間違いではなかったとほっとしていた。

 セルフィナにコンラートを紹介したのはキリアムだ。

 仕事上で付き合いがあり、気のいい男であることは分かっていた。

 色々とあったが、セルフィナは祖国にいた時よりもよく笑うようになった。

 あの国にいた時は、元婚約者と王女との関係で心が安まることがなかったのだろう。

 今は夫との関係も良好で、本来セルフィナが持っていた明るさが全面に出ている。


「そういえば、図書館で学生さんと知り合ったわ」

「へぇ。どんな人?」

「女性で、名前はアンジェラさんというの」

「……アンジェラ?」


 同じ名前を持つ女性とつい最近知り合ったばかりだ。

 それに彼女も学生だ。


「ひょっとして、黒い髪に琥珀色の瞳の真面目そうな女性?」

「そうだけど……お兄様のお知り合い?まさか、お兄様の恋人?」

「違う!」


 セルフィナの言葉に、キリアムはすぐさま反応して否定した。


「違うの?ならひょっとして告白前とか?」

「それも違う。まずアンジェラ嬢と俺がそういう関係だと邪推するのは止めろ。彼女とはちょっとした知り合いなだけで、断じてそういう関係ではない」


 この短期間に三度ほど会ったが、一度目は迷子に困っていたところを助けてくれて、二度目は彼女の弟が往来で騒いだせい、三度目はその時のことを謝りに来てくれただけだ。

 

「あらあら、そうですか。せっかくお兄様にも春が来たと思ったのに」

「いいんだよ、俺は。もう継ぐ領地もないし、気楽な独り身が気に入っている」

「そういうことにしておきますわ」


 にやにやする妹に、キリアムは何を言っても無駄なのかもしれないと思ったのだった。


 

 

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