8-生きたピザを食べたことはあるか
この世界に来て何年がたつだろう。俺はこの世界のこと少しはしれたのかな。
「逃げろ!!リア!」
旋風それはすべてを切り裂く刃。
「ペパロニシールド!」
ドラゴン森の奥地潜むドラゴンだ。容赦はない。
火炎放射器のような熱風が体を焼く。
「ぐは!」
ピンチ。ドラゴン族は俺でも倒したことがない。
三時間前。
「ピザピザピザ。ピーザはうまいな美味しいな」
俺はピザをこねくり回して遊ぶ。
「今日中には街に着けなさそうね」
「頭はピザ」
俺はピザを頭にのせる。温かいチーズがとろけて髪に付着する。
「ピザのクレープだ!!」
「ピザ魔法とは便利なものね。マナを消費しない魔法なんて初めて見たわ」
「ピザ魔法は無属性の最上位魔法だ。ほかにもたこ焼き魔法やおでん魔法もあるぞ」
「すべての魔法を対価にしてまで欲しかったの?それ」
「お前、ピザだぞ。ピザはこの世界じゃ高級食材じゃないか」
「チーズが手に入りにくいからね」
「ピザを売りさばいて、ぼろ儲けだってできるし、ほかの水やら炎やらの魔法とは利便性が違う」
「ピザで遊ぶほど、ピザを召喚できるのね」
「もちろん粗末になんかしないさ。ちゃんと残さず食べる」
ピザだらけとなった体をなめまわす。うん、やっぱりピザはうまい。
「カロリーゼロのピザをくれるかしら」
「おう」
「ピザはイメージから生成できる。どんなピザでもイメージさえしてしまえば、おてのもの」
空間からピザを取り出す。
「カロリーゼロピザの出来上がり。たんと召し上がれ」
「いただくわ」
「!!」
「どうだ。うまいだろ?こんなのこの世界じゃ食べられない」
「うまいわ」
「この世界のチーズは質がわるくてな。こうでもしないと真のピザにありつけないというわけだ」
「あなたは料理は苦手だったわよね」
「ギクッ」
そうなんだよ。ピザは作ってなんぼ。しかし、俺は料理から爆薬をつくろほどに料理が下手だ。
「俺にも文才があれば、食レポなんかできるんだがな」
「そうね」
「学もない、世間に疎い、何もない」
「そんな俺でもピザにならだれにも負けない。ピザにかける情熱なら」
「俺は気づいたんだ。ピザ一つ救えなかった俺が、なにかを救えるとは思えない。けれど、なにかの役には立つだろう。信念があるから」
「そういうところがあなたの美徳ね」
「俺はピザ屋にはなれない。けれど、ピザを広めることができる。もっとピザを普通のものにしていきたいんだ」
「どんな街でもピザが食える。素敵なことだろう」
「そうね」
俺たちは森を歩く。