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「この旅に目的なんかあるのかな」
「旅に目的なんてないさ。あるとすれば虚像を追いかけているにすぎない」
「虚像ね。いい響きね。虚像、あなたは見かけたことはあるかしら、その虚像に」
「ないから、ここにいるんじゃないか。この列車に」
「そうよね」
「そう、次の街はどんなところかしら」
「ああ、それが鏡を柱にする街らしい。なんで鏡なんだろうか」
「鏡、鏡は真実を映し出す道具かしらね。柱にして何がしたいのかしら」
「真実から背けるために柱にしているのかもな。柱どうし向き合わせれば、合わせ鏡だ」
「結界なのかもしれないわよ。柱を置いて、なにかから守ってるのよ」
「魔除けというわけか、しかし、その魔物の正体はなんだ」
「言い伝えかもしれないわ。魔物が出るって」
「だといいけど」