キミ
カチッ、カチッ
秒針の音が響く暗闇の中、私は一人うずくまっていた
なんで
どうして
こわい
こわい
こわい……
ヒタヒタと足音が近づいてくる
息を殺す
一分が、一秒がこんなに長く感じるなんて
こんな感覚は初めてだ
息が荒くなる
心臓がうるさい
息遣いが、鼓動が聞こえているのではないか
意識が遠のいていく
もうダメかもしれない
滝のように汗があふれてくる
ぽたぽたと一滴ずつ汗が床に落ちる
この音が、においがあいつに居場所を教えているのではないか
気が付いたら私は走り出していた
自分でも信じられないくらいに速く、速く、ただひたすらに
後ろが怖くて必死に走った
振り返らずに、がむしゃらに
階段を上っておりて角で曲がって
ただひたすらに廊下を走った
いったいどれくらい走ったのだろうか
怖かったが後ろを振り返る
誰もいない
しんと静まり返る長い廊下を見て一息つく
ふぅ
ふと思う
この建物はこんなに広かっただろうか
背中がぞくっとする
また歩き出す
足が震える
なんともわからないような怖ろしさが私を襲う
これまでとは違う雰囲気の廊下に出る
明るい
照明だけではない
壁が鏡になっている
おそるおそるその鏡を見る
そこには私とは全く違った顔、体格をした人がいた
キミは誰?




