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天邪鬼の異世界雑貨屋  作者: 15夜
逆転する世界
8/60

『邪正明暗』という男 まえ

お試し投稿part8です。

 決死の思いで城から抜け出した私は、明暗さんの店に向かいました。心を読めるように出来る物を持っている彼なら、きっと心を読めるようにする砂糖菓子の効果をなくす物も持っているでしょう。そう思い、明暗さんの店「暗明堂」に向かいました。路地裏の角を三回曲がり、道の奥にあったお店は…


「………え?無い?なんで?」


 無くなっていました。跡形もなく、というわけでは無いですが、明らかに違う家が建っていました。

 …この周辺の住民から聞こう(心を読もう)にも、心を読めるようにする砂糖菓子を無料で譲れるくらいの力を持っている明暗さんは、周りには分からないようにするくらいなら出来ると思うのです。なので聞き込みはあまり頼りにはなりませんし、そもそもこんな裏路地には人はいません。


 …どうにもならなくなってしまいました。ここから何処かに行こうにもドレスが目立ってしまってお城の人たちに見つかってしまいます。それにお金を持っていないので、宿屋に泊まることも出来ません。


 …やはりここは…


「お外で一晩過ごすしか無いですね…」


 お城に居るときはベッドで寝られないことなんて無かったのではじめての経験ですが、いつもしない事なので案外楽しいかもしれません。そう思うと、お外で過ごすのも悪くない気がします。






 地面に絵を描いたり、アリを追いかけてみたりしていると、空がだんだん暗くなってきました。


「すごく寒いです…」


 夜になるにつれて、気温が下がり寒くなってきました。「暗明堂」があったはずの空き家に明暗さんは戻ってこず、何の進展も無いまま夜を向かえてしまいました。自分の体温で自分を温め、空腹を誤魔化しながら夜明けを待ちましょ


「……こんなところでなにしてんだ?」


「明暗さん!?何でここに!?」


「そんなの決まってるだろ。仕入れだ。」


「仕入れ?」


「変なものばかり売っているとはいえ店だからな。食べ物とか日用品とかを買ってきた。」


 明暗さんに会えました。お店に出ている時とはすごく口調が変わっていますが、明暗さんです。仕入れから帰ってきたようですのでお店はしまっているとは思いますが、後払いでもいいので心を読める砂糖菓子の効果を消して貰わないと…


「あの…」


「なんだい?」


「頂いた砂糖菓子についてなんですけど…」


 砂糖菓子を食べて起こったことを話そうとすると


「分かってるさ。概ね際限なしに心を読まされるようになって逃げてきた。そんなところだろうね。」


「なんでそれを…」


「予想出来ていたさ。言っただろう。私は天邪鬼だ。知ってるか?天邪鬼。」


 天邪鬼ってなんでしょう。そんな名前の魔物は聞いたことがありませんし、お城や学校の本では見たことがありません。ですが明暗さんは前に『むしろ勇者に退治される側』と言っていたので、学校で噂だけ聞いたことがある「別世界の魔物」といわれるものなのでしょうか。ならば取りあえず答えておきましょう。


「別世界の魔物…でしょうか?」


「半分正解だ。」


「半分?どういうことですか?」


「正確には魔物の力を持った人間って所だな。だけど私は魔物の要素が薄くてな。魔物の力だけを受け継いでしまったのさ。」


 魔物の力を持った人間ってことは…………魔人じゃないですか!別世界の魔物なんかよりももっと危険な存在にこれから交渉をするなんて!………………取りあえず、心を読める力で明暗さんの心を読んでみましょう。何か策が思い付くかもしれません。


『……………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………〖応答不能(not signal)〗』


 …なに も みえ な い ?そんなことがあるんですか?読みたく無くても読めていたはずの心が読めません…。そういえば、明暗さんと話している間は頭に声が響くこともなければ文字が浮かぶこともありませんでした。


「心が…」


「どうした?」


「心が…読めないんです…!貴方だけ!あんなに読みたくなくても読めていた心が…!おかしいじゃな


「そりゃそうだろ。心を読める物をあげたやつが心を読まれたら本末転倒だ。」


「ならなんで…」


「これだ。」


 そういいながら明暗さんがわたしに見せたのは、ネックレスでした。しかし飾られているのは宝石や結晶というわけではなく、何の変哲もないただの小石でした。


「これは『小石のネックレス』と呼んでいるものだ。ネックレスになっている石はただの小石の筈なのに、何故か着けていると心が読まれなくなるって代物だな。」


 やはりただの小石で間違いないようです。しかし…


「小石と心を読む力に何の関係が?」


「それはだな…」


 そう一拍置いたあと、明暗さんは話し始めました。ある時、旅人が『覚り』と呼ばれる魔物と出会ったこと。その魔物は旅人の心を読んで笑っていたこと。しかし、旅人が無意識に蹴った『小石』によって『覚り』の目が見えなくなったこと。それらを話し終えた明暗さんはこう締め括りました。


「結局、周りの心を読むだけで本当の意味で周りを見ていなかった『覚り』は、本来は避けれたはずの『小石』にトラウマを植え付けられてしまった訳だな。」


「なるほど…」


 この話を聞いて、私は明暗さんの行動に一つ疑問が生じました。


「ということは明暗さん!貴方は私がこうなるのを知っていて渡したということですか…!?」


 そう聞くと、明暗さんは

            

            「この世に悪というものがなんなのかを知らしめてやる」

               と言うかのような邪悪な笑顔で、


「ハッハッハッハッハ!その通りさ!全て最初から計画通りだ!」


 そう、言い放ちました。私の心に、感情に、希望に、絶望を叩き付けるかのように。

長らくお待たせいたしました。


次回、後編。レンジアちゃんの未来はどうなるのか。『邪正明暗と言う男 後編』お楽しみに。


2023-1/9 より読みやすいように修正しました。

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