schadenfreude ⑥
《大逆転世界》。
それは、あまりにも強大な力を持つが故に封印されていた、「天邪鬼」最強の技。
世界中の常識がひっくり返ることもあれば、ただシャーペンの芯が一本だけ補充されている、なんていう至極どうでもいい事が起こるかもしれない、言わば諸刃の剣でもある。
「ど、どうなったんだ…?」
何処からかそんな声がする。
立ち込める煙の所為で、《the road of Familia》は見えない。
でも、私には『視え』ている。
この戦いの終止符が、勝者が、結末が。
その全てが、私の目には『視え』ていた。
…もはやこの目に、『視え』ない物はない。
私達の、勝利だ。
「ど、どうなったのです?」
そう言いたくなる気持ちもわかる。
煙が立ち込めていて何も見えない。
ただ俺の隣で見物していたロッレだけが、目を見開いて練習場の中心を見ていた。
「おい、ロッレ。お前には、一体何が見えているんだ…?」
『《the road of Familia》が…、人間になっています…。これは…どういう…物理法則に反しています…error、errorです…』
「は!? 泥人形が人間になっただと!?」
『はい…、事実です…。想定外、想定外、想定外…error、error、error…』
彼女が壊れた用に呟き初めて少しすると煙が晴れた。そしてそこに見えたのは、白いワンピースを着た青白くなった少女だった。
「わた、しは…?」
わたしは…、だれ?
きおくが、ない。
なにも、ない。
こわい。
とても、こわい。
なにも、わからない。
「だ、れか、いる、の?」
そう、といかける。
でも、へんじはない。
ぐー、と、おなかがなる。
…わたしは。
なにもわからないまま、しぬのだ。
ああ、かみさま。
どうか。
いるのであれば、わたしをあいしてくれるひとをください。
…ただ一つの魔法であったこんな私を、心から愛してくれる人を。
また、次回。
次回 出来たら




