録音 keter
あー、あー、聞こえているか。
予め言っておく。
これは、録音だ。
だから返事を返したって無駄だぞ。
もう私には聞こえないからな。
えー、っと。
やぁ。
元気かい?
君ならきっと、元気と答えるだろう。
私は、答えてくれると信じているぞ。
…君は、そんな話が聞きたいんじゃないよな。
…君がこれを聞いている頃、
私はもう此の世にはいないだろう。
少しばかり、無茶をし過ぎた。
君の前ではなんとも無いような顔をしていたが、
実の所、私の体はもうボロボロだったんだよ。
何でかって?
は、はは。
決まってるじゃないか。
君のためだよ。
全て、君のため。
…いきなり言われて、慌てているね?
…君は知らないもんな。
君が《逆転世界》を使うということはどういう事か。
それはな。
私みたいに成るということさ。
世界の歪に、体が耐えられなくなって、
体がどんどん軋んで動かなくなっていく。
ああ、言っておくぞ。
…泣くなよ。
お前のためだとは言ったが、
私がやりたくてやったんだ。
全て私の独断だ。
………ああ、君に話すのがこれで最後になるなら、
話すべき事はこんな事じゃ無かったな。
もう、録音機が耐えられそうにない。
はは、は。
…他の場所で録音が出来そうならまたしよう。
一回、最後の挨拶だけしておく。
じゃあな、十一。
私は、お前の人生、いや、もう鬼生だな。
鬼生が順調に進むことを信じているぜ。
…………………愛してる。
この地獄は、まだまだ続く。
どこまでも、どこまでも続く。
そこには、希望も絶望も無い。
あるのは、憐れな人形の亡き声だけだ。
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