しかし、賽は投げられた はこべら
「と、いう訳で、俺が一番強いと抜かす愚か者に、制裁を加えることとなった。」
「いや、理解不能です、ハイド様。それと模擬戦がどう繋がるので?」
「わからんのか? そいつとやるんだよ、お前らが。本当に強かった場合は学びになるし、弱かった場合はお灸を据えられる。悪くないと思うんだが。」
「…はぁ。」
「それに言うだろ? 『売られた喧嘩は買え』って。」
売られた喧嘩は買え、とは、この国の初代の談である。先人は、随分と野蛮なものだ。
「…………わかりました。で、私はどうすればいいのですか? 場所は訓練所で良いとして、誰が闘うんです? 少なくとも、私は嫌ですよ。」
「…君、一応近衛の隊長だよね?」
「気に入らないのなら辞めますけど?」
「……辞められたら困るの分かってて言ってる?」
「ええ。」
そういうこいつは、ラステリカ・セルハート。俺の学友にして、この国のエリート中のエリートを束ねる、近衛隊の隊長だ。勿論謁見の時等は臣下として行動するが、こういう打ち合わせの場では軽口を叩いてくる、ある意味貴重な存在だ。
「取りあえず、世間体の問題で私も出ますよ。あと妃様に怒られそうですし。」
「よろしく頼む。…………あとあいつ、出せるか?」
「………あぁ、ワントですか。別に出場させられますが…。本当にいいんですか?」
「何がだ?」
「この国の大人じゃ、魔法においては彼女に勝てないって事になりますよ?」
「事実だからしょうがないだろ。あれか? 下っ端の奴らが気にする、プライドってやつか?」
「……そうです。そういう事もありまして、彼女は出さない方が…」
ガチャリ
「その話、私にも聞かせるのです!」
「…っ!聞いてたのか、ワント!」
「あー、あ。終わりだ。」
この話の台風の目、ワント・ア・イレブン。今年でまだ14歳だというのに、4属性全ての魔法を使える若き天才だ。………その代わり、小さい頃からなんでも出来たので、かなり我儘だ。正直、とても扱いに困っている。
「模擬戦、私にも参加させるのです! この私を差し置いて『さいきょー』を名乗っている愚か者は、私が成敗するのです!」
「…出場するのはいいが、相手、焼くなよ? 嫌だからな私、黒焦げになった相手を蘇生師が必死こいて蘇生掛けてんの見るの。」
「そんなの、あの程度の魔法で負ける奴が悪いのです。」
…実際、本当にあったからなんとも言えない。あの時は、流石に対戦相手に同情した。
「あー、まぁ、わかった。王の権限で許可してやる。…今回に関しては、王宮侮辱罪も若干含まれてる部分もある。…………思いっきりやれ。」
「アイアイサー!」
「……おい、ラステリカ。『アイアイサー』って、なんの挨拶だ?」
「…さあ? 過去の勇者が伝えた、気合を入れる掛け声である、としか言えません。」
「……はぁ。この先、不安だ……。」
「……全くです…。」
とはいえ、こんだけの勢力があれば、奴には勝てそうだ。
唐突に魔法の話が出て来ましたが、次か次の次くらいで説明描写するのでしばしお待ちを。仕組みにオリジナル性はあんまりないので。
次回投稿 上の設定を上手く盛り込めたら




