桃太郎が光に包まれる!
「ったく、マジ勘弁してくれよ…。」
久宇里桃太郎はつぶやいた。
バイト先のコンビニで店長が怪我で倒れ、急きょシフトに入ることになったのだ。
「せっかくの休日だったのに…デートとかしたり。相手はいないんだけど」
桃太郎は都内の大学に通う学生だ。
関西から上京し、今年で3年目。
都会の水にも慣れてきて、大学生活を満喫している。
いたって普通の大学生。
それが桃太郎だ。
日本で平均的大学生をAIでピックアップしたら、きっと桃太郎が出てくるに違いない。
平々凡々。
まあ、桃太郎自身もそう思っているからいいんだけど。
今日はこの前飲み会でいい感じになった同じサークルの女の子にメッセしようと思っていたのだ。
デートできる保証はないが。
「あ〜バイトがなければいまごろあんなことやこんなことやしてたかも!」
仕方がないのでバイト先の駅近くのコンビニに向かっているのだ。
「店長も木に登った猫を助けようとして転げ落ちて怪我するなんて、今どきありえないよ。」
そんなことを考えながら交差点を渡っていると、
「ピーーーーーーッ!!!!!」
というクラクションが聞こえた。
「!!!!???」
桃太郎はわけがわからず固まってしまった。
視界の端に日本で一番売れているという自動車のロゴが目に入っただけだ。
「ったく、今日はとことんツイてないな…」
そういう考えが思いついたときには目の前が真っ暗になっていた。
「平々凡々な人生だったけど、これで終わりか。最後にチキン南蛮食べたかったな」
「!!!!!!」
急に目の前が明るくなってきた。
巨大な光が見えてきた、桃太郎を包んでいった。
「っっっっっったく、何なんだよ!!!!ツイてないな!」
悪態をつきながら桃太郎は光に吸い込まれていった。