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 殺人女と一緒に水浴びすることになった。

 ゲロと血を落とすために良かれと思っての提案。しかし、水浴び予定地には死骸が浮いていた。

 いや知ってるよ。彼女が死体を池にほっぽった所為でこっちは血まみれになってるんだから。

 骸出汁の水に飛び込んでみたい、なんて猟奇的思考は持ち合わせてない。

 焦ると考えもせずに適当なことを口に出す癖、よくないと思う。ほんとに。


「じゃ、ささささき、はいっ、入りますね……」


 彼女がOKを出してしまった手前、入らざるを得なくなった。

 まさかこれを覆そうもんなら、殺されてもおかしくない。彼女のお顔、半分は血で染まってるんだもの。とにかく今はことを荒立てないのが大事。

 先にさっと入って一瞬で出れば問題あるまい。元の水綺麗だし。そんなここ狭くないし。

 なんて自己暗示をかけながら、とりあえずお口を洗う。

 当然、入る予定の池に吐瀉物は入れないように細心の注意を払って。


「ねーえ、一緒に入ろぉ? ボクが洗ってあげるからさぁ」


 するといつの間に寄ってきたのか、血塗れ女が背後からハグ。首に手を回してくる。

 味わったことのない異性との経験に、ああ、どうしてだろう。非リア陰キャ野郎なのに、これっぽっちもドキドキしない。

 そして、優しくかけられた体重に、俺はバランスを崩した。


「あっ……」


 正座に前屈みで口を濯いでる都合、そのまま頭から池へ着水。際しては彼女も一緒だ。


「ふふ、君も一緒が良かったんだぁ」


 入水後、そう語ってみせる彼女。水に溶け出す汚れ。

 彼女の身に付着していた血液はまだ新鮮だったようで、絵の具の筆を水につけた時の如く、ぶわっと赤が広がっていく。

 どさくさに紛れてお姫様抱っこをされた俺は、これをモロに受ける形。


「あの、だ、大丈夫ですよ。ご自分の体を、洗ってもらって……」


「んー? もしかして恥ずかしい?」


「じ、実はそうなんです」


「ふへへ、かわいっ、ちゅっ」


「あはは……」


 口から漏れる渇いた笑い。血の水に濡れた体。

 どうしよう。起きた時より明らかに状況が悪化してしまったよ。

 他人の血ってこんな浴びて大丈夫なのだろうか。裸でこれは、もしかしてなんかの病気になってもおかしくないのでは。


「ギギ、ギギィッ!」


 何から何まで大変なそんな時。またもや厄介ごとが降りかかってきた。

 何か変な声がした方を見てみれば、醜悪な顔をした緑色の変なやつ。人の形を模してはいるが、どうにも受け入れられないような、そんなの。


「あ、あの、あれって……」


「あれ? あれはゴブリンの幼体だよぉ、気持ち悪いねー」


 三人組で現れたそれは、言われてみれば確かに幼い。

 しかしゴブリン、ゴブリンか。

 ケモミミ少女に悪魔っ娘、それにゴブリン。今更と言えば今更だが、もしかすればここは、剣と魔法なファンタジー世界。


「えいっ」


 殺人悪魔が、対岸のゴブリンに手を翳し、握る。

 すると、その内一人が潰れて肉塊と化した。会話をしていた彼らは、突然の出来事に状況を把握できていない様子。


「あは、よわーい」


 もう一人、そして最後の一人も潰しオロロロ。

 俺がもたなかった。


「うゔぇ、お"えっ」


「あー、また汚しちゃってー」


 口気持ち悪い。体にもかかったし。また吐きそう。

 そして、理解した彼女の強さ。今生きてるの、奇跡かもしれない。

 幸か不幸か、謎に彼女は俺を気に入ってくれてるけど、いつ天秤が反対側に傾くか分からない。てかちょっとゲロかけちゃった。やばいかも。死かも。

 でもこのエグい水に浸かってても吐いちゃいそう。とりあえずここから出たい。


「あ、あの、体綺麗にしてここから出たい、です……」


 対岸付近は死体浮いてて、ここら辺はゲロと血でダメだから、右のあそこら辺から上がりたい。


「いいよぉ。もう出よっかー」


「あ、えと、あそこらへんで洗ったりとかって……」


「んー、わかったぁ」


 そうして、無事二人は割と綺麗な状態で陸へ帰還。お姫様抱っこからは無事に解放された。

 汚れに関して言うと、池から出た後に彼女が不思議な力で綺麗にしてくれた。すなわち、死体池入り損。

 しかし、こべり付いた血がひどくて分からなかったが、こうして改めて彼女を見ると、その魅力に気づくことができた。

 特徴的なのはやはり、頭から生えた茶色い角と、蝙蝠のような翼、紫色の尻尾だろうか。

 だけれどそれを抜きにしても、彼女は人の目を引くように思う。

 端正な顔立ちに瑠璃色の瞳。少したれたお目々は非常にチャーミング。短い白髪、外に跳ねた癖っ毛。色白の肌は透き通るようで、作り物のようにさえ思える。

 どう考えても、血だらけになって死体をぶん投げるようには見えない。

 世の中とはなんて恐ろしいんだ。


「あの、服とかって、持ってたりしますか……?」


 そして、そんなイカれた彼女でも、服を着用している。

 いや服とは言えないかも知れないが、肌面積はともかく胸と急所は隠れている。これは非常事態だ。

 例えばここで、ばったり知らない人と会った時、俺と彼女のどちらがヤバいやつかと聞いたら、裸という理由で一時的にも俺が彼女よりもヤバいやつになってしまうだろう。

 常識人的にそれは避けたい。


「あー、近くに村があるよぉ。そこで探そっかー」


 なんと村があるらしい。それならぜひお邪魔させてもらおう。

 もう全然慣れてきてしまった全裸におさらば。洋服とかいう人類最高の発明品をゲットだぜ。

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