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7.サバイバルかもしれない

翌日、目を覚ましてから気づいたけれど、これってもしかしてサバイバルなのでは。

わたし乙女ゲームというより無人島からの脱出ゲームやってる気分なんですけど。


無人島ではないけど。

まあ敵しかいないんだし似たようなものか。


今日は隠密で湯殿に忍び込んで石鹸を手に入れるのが一番のミッションだ。

次いでハーブとか塩。

調理場に行けばあるかな。


隠密って便利よね、一番最初に入手できるのに。

効果がおよそ3分しか続かないのが痛いけれど。

ゲームと同じなら使えば使うほどレベルが上がるはずだ。



わたしはこそこそと人目を避けて湯殿を目指す。

場所は小姓の恰好でうろついた時に把握済みだし、こんな早朝に湯殿を使っている人はいないでしょう。

黒髪が目立つので布を被り、まるで不審者だけど仕方がない。


そっと湯殿に忍び込むと、そこは羨ましいことにご立派な温泉だった。

いいなあ、温泉。

広々とした湯殿は全部で十二あり、みなさん日替わりで使っているらしい。

ここはそのうちの一つだ。

目当ての石鹸を2つほどいただき、兄様の服を破いて繕いなおした袋に突っ込むとそっとその場を後にした。


隠密もちゃんと使っていたし、バレていないはずだ。

多分。




次は調理場だ。

ヒロインのはずなのにやっていることはこそ泥とは辛い限り。




ここは前に来ているので、物陰からそっと様子を伺う。

今の時間は朝食を取りに来た侍女たちでごった返しているので、その隙に取りたい。



『本当にわたしの部屋のお嬢様って最悪よ』

とか

『あら、こちらはまあいいわよ、大人しい方だし』

とか、色々鬱憤を晴らす場らしい。


『あなたはいいわよね、誰もいない部屋にいるんでしょう?』

と聞かれた人が多分わたしの部屋付き侍女だ。

『ええ。今頃あの離れ小屋で泣いているんじゃないかしら』

残念、わたしはここだ。


隠密を使い、彼女たちをすり抜けて、ぱぱっと塩やハーブを二つ目の袋に仕舞いこむ。

興味深い話をしているけれど、速やかにその場を去り、わたしは離れ小屋(マイスイートホーム)に帰ってきたのだった。



塩とハーブがあればドラゴンの肉だっておいしく食べられる。

朝食がわりの桃を齧りつつわたしは上々の結果にほくほくだった。



今日は十分働いたと思うので、書とやらをやってみようと思う。

もちろん紙なんて高価なものわたしが持っているわけがないので、土の地面に。

井戸の横が丁度いい砂地だったと記憶している。



歌いながら文字を適当に描いていると、確かに少しずつ体に何かが刻み込まれていく感覚がある。

ふむふむこれが経験値なのでは。

いままで嫁いできた方々が持ってきてくれた各種族の歌の本を思い出して書き連ねる。

メロディは知らないから適当だけど、雛が音痴なのでなんでもいい。


どの種族も恋歌で想いを伝える風習があるため、バラエティに富んでおり娯楽の少ない故郷で雛は唯一楽しく読んでいた。

少女漫画を読むようなものだ。

恋愛に憧れだってあった。

雛は親族以外の男性を見たことがなかったから本当に空想だったけれど。



熱烈な歌から控えめな歌まで様々だが、今日は日が暮れるまでやってみよう、と地面に座り込んで書き連ねる。

陽が落ち暗くなり、文字が見えなくなったので今日の修行はおしまいだ。


今日は石鹸があるので体も髪も洗えるぞ!

石鹸で髪洗うのは嫌だけど!

実家でだってオイルくらい塗ってたのになあ。


桃の種からオイルって出ないかな?

明日は桃オイルの生成の日にしよう。



今日も一日恙なく、わたしは幸せだ。おやすみなさい。






毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。

『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される』

https://ncode.syosetu.com/n6804fq/

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