16.××の教育
なんだか慌ただしい上にすごく青ざめた顔でこちらを見てくる來姫様。
一体何があったんだろうなあ。
と思っていたら、やがて12冊の本を抱えて紅さんと翠さんが戻ってきた。
「來姫様、こちらで全てです」
どん、と机に並べられたそれは。
「ひえっ」
思わず逃げようとすると來姫様にぐっと椅子に押さえつけられた。
「ここここれって」
「そうよお。…貴女があんまりにも無防備だからあ、先に知識を授けるわあ」
何かを決意したような來姫様に頷くしかできなかった。
ここにあった壁はただわたしが小さいから、ではなかったようで。
「さあ雛姫様。いくわよお」
と、『鼠族の閨教育』という本を開いた。
いやただのセッ…に本があるの!?
とか馬鹿にしてたんだけど、中を読んでみて遠い目になった。
無理だ。
わたしには難易度が高すぎる。
鼠族は呪術でなんやかんやしてくるらしい。詳しくはわからないけど多分死ぬ。
牛族はどろどろに甘やかすのが好きらしい。抽象的でよくわからなかったけどみなさんの顔色からして多分死ぬ。
虎族はアレにとげとげがついているらしい。絶対痛いから死ぬ。
兎族はお薬を使うことが多いらしい。え、媚薬とかいうやつ?死ぬ。
竜族はアレが2つついているらしい。どういうこと?よくわからないけど多分死ぬ。
蛇族は触手が生えるらしい。意味がわからなかった。どういうプレイ?死ぬ。
馬族はとにかく長いらしい。入らないと思う。死ぬ。
羊族は一般的には他の種族より普通よりらしいけど羊王陛下が普通じゃないので多分死ぬ。
猿族は回数が多いらしい。シンプルに死ぬ。
鳥族はプライドが高すぎて女の方に奉仕させるのが好きらしい。理解は浅いけど多分死ぬ。
犬族は逆に服従するのが好きらしい。精神が死ぬ。
猪族はほぼ確実に女の方が気絶するらしい。どういうこと?猪突猛進ってこういうことなの?死ぬ。
…といった風にバリエーション豊かな特徴を教えていただいたのだけれど。
勢いで死ぬ死ぬ連呼しちゃったね。
「…というわけでえ、わたくし暫くは貴女の貞操を死守するわあ」
という來姫様の目が本気なので、あながち死ぬというのは過剰な反応ではなさそうだ。
その特殊な性癖に加えてわたしのほうが体がはるかに小さいので、來姫様はずっと心配してくれていたらしい。
知らなかったので大変にありがたい。
でも知ったからって先延ばしにはできても回避は出来ないよね?
いつか絶対抱くって顔してたもんねあの王たち。
「これって好きでも厳しくないでしょうか」
思わずぽつりと漏らせば「貴女がいいって言うまでは手を出さないように言っているわあ」と頼もしいお返事。
けどわたしにはわかる。
多分あの人たち、わたしの許可は無くてもいいと思ってる。
もしくは交渉次第というか、餌をちらつかせて、というか。
とにかく早いうちにそういう方向へ持っていかれる気がしている。
例えば最後まではしなくても、途中までというか…慣らすというか…
うん、よし。
「來姫様」
「ど、どうかしたのお?」
わたしのにこっとした顔を見てたじろぐ來姫様。
「忘れましょう」
「…ええ…?」
「怖いお話は忘れましょう。わたし、それよりも婚礼の儀のことのほうが気になります。直近ですから」
いつものアレだ。
先延ばし。
わたしはそちらを選択した。
その時が来るまで、わたしはこのことを忘却の彼方へ吹き飛ばしておく。
その時のことは未来のわたしに任せた!




