15.來の宝
來視点です
今日もわたくしは可愛い雛姫様とご一緒で幸せだわあ。
このまま一生お仕えするつもりよお。
危機意識が低いのよねえ。
迂闊というか無知というか。
四六時中一緒に居るわけじゃないから、本当に心配だわあ。
130cmしかない小柄すぎる体格で、王たちの寵愛を受けるのは不可能だわあ。
何度もそう進言しているのに、奴ら言い訳ばっかりするのよお。
『気づけば理性が飛んでいた』だとか『そんなつもりはなかった』とか。
殺すわよお。
わたくしは竜族。
護るべき宝を見つけてしまうと、どうしても全力を出してしまうのよねえ。
相手が格上だろうと。
ええ、たとえ王が相手だろうと、雛姫様は護ってみせるわあ。
もともと雛姫様のことは手助けするつもりでいたけれど、交友を深めるうちにいつのまにか"宝"になっていたのよねえ。
「わたくしの宝、傷つけるならば許さないわあ」
毎日の竜王陛下への報告を終え、わたくしは宣言したわあ。
でないとわたくしの本気、伝わらないもの。
「…其方の宝となったのか、雛姫は」
少し口元を緩める竜王陛下は、宝の重要性をよおくわかっていらっしゃるわあ。
一生に一度でも出会えるだけで、幸せなことなのよねえ。
もちろん、この陛下にとっても雛姫様は"宝"なんでしょうけどお。
それも珍しいわあ。
2人の竜の"宝"が同じだなんてえ。
時代が時代なら戦争だったでしょうねえ。
雛姫様が望まないから絶対にしないけどお。
「ええ、そうよお。だから、わたくしの身がどうなろうと、雛姫様だけは護るわあ」
「それは心強いのだが、それを余らに向けるのはどうなのだ?」
なんで自分たちは例外だと思っているのかしらあ。
未だにわたくしより信頼されてないくせに。
「どうなのだ、じゃないわあ。」
ぎろりと睨みつければ「だがあれは…仕方がないのだ…」なんてまだいうのかしらあ。
「雛姫の体も神のものになっておるし、問題はないはずだが」
どうやら体は今までの脆弱なものじゃないらしいけど、だからって許可が出せるわけないわあ。
だってあの子、絶対泣くわあ。
「そういう問題じゃないのよお。心を得るのが先、と言っているのお。死にたいのかしらあ」
「其方のその好戦的な部分は治らぬのか」
呆れたようでもあるけれどお、不敬だとは言わないのはやっぱり雛姫様が大切なのねえ。
腹が立つわあ。
まあ今のわたくしの主は雛姫様だからあ。
陛下方をもう敬わないし、雛姫様を最優先するわあ。
「其方はいつならば良いと思うのだ?」
「雛姫様がいいと思えたら、に決まっているわよお。」
「ふむ…どうすれば良いと言ってもらえるだろうか?」
本気で言ってるのかしらあ。
「もっと親交を深めなさいっていってるのよお。何まず体からとか愚かなこと言ってるのお?」
じとりと見れば少し傷ついた顔をしているわねえ。
言い訳はもう聞き飽きたわあ。
「はあ、あの子だって、少しずつ変わっているんだから我慢くらいしなさいよねえ。本当に嫌われるわよお?」
「…特に誰がなどと雛姫は言っているか?」
「平等に貴方たちに興味ないわよお」
最強の竜王の顔じゃないわねえ、そんな青い顔して。
まだまだねえ。
ぱちり、といつものように扇を閉じ、口角を少し上げて。
「でもあの子、『今は幸せ』って言ってたわあ」
それだけ伝えてやり、わたくしは報告会を終えたわあ。
あの子も貴族学習頑張っているし、贈り物の刺繍も頑張っているから時間の問題とは思うけどお。
でも、それまでは、わたくしの唯一の宝でいて欲しいわあ。
***
雛姫様の部屋に戻り
「そろそろ閨教育って必要かしらあ」
こっそりと紅に訪ねるけど、どうかしらねえ。
「うーん、まだ早いってボクは思うけど…いやでも知ってたほうがいいかもなあ。」
「…種族別に知識が必要なのではありませんか?雛姫様はおそらく何もご存知ないかと」
という言葉にさすがに青ざめたわあ。
え、もしかしてあの子、竜族のあれが2本あることも、馬族のあれが凶悪的な長さなのも、知らないのかしらあ。
「え、だからそんなに呑気なのねえ!?」
がばっと顔を近づければ、「わあ、來姫様だあ」なんてふにゃりと笑うのが可愛いわあ…じゃなくてえ!
「紅、翠。各種族の教育本を持ってきなさい、やるわあ」
「了解!」
「しばしお待ちを」
ばたばたと慌ただしく準備を始めるわたくしたちをきょとんと見ているこの可愛い顔がこれから歪むのを想像して心が痛むけれどお。
「…これは、雛姫様のためなのよお…」
小さな肩をそっと抱き締める。
こんなに小さくて本当に大丈夫かしらあ。




