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13.ごろつきさんとの商談

閑話です。

「お、お久しぶりです。雛姫様」

「おひさしぶりです!!」

今日はなんとお部屋にごろつきさんが商品を持ってきてくれたのだ。



部屋に案内してくれた騎士が居なくなったのを見ると、ほっと息をついた。

「お前よくこんなとこに呼んでくれやがったな!?」

と叫ぶところをみると相当に怖かったらしい。


「ご、ごめんなさい…」

うすうす感づいていたけれど、やっぱり迷惑だったかな。


「いや、いい。それにしてもお前が『王の花嫁』だったとは。…しかもかばってくれたしな。お前の頼み位聞くさ」

にっと笑ってくれてわたしも嬉しくなる。

「そうだ、お名前教えてくれませんか?」

いつまでもごろつきさんと呼ぶわけにはいかないし。


「ああ、そうか言ってなかったな。オレは銀だ」

「銀さん、ですね。改めてお会いできてよかった。心配だったんです」

あれからなにか罰を受けたりしていないかって気が気ではなかったのだ。


「ああ、むしろ礼に、と金品を賜ったぞ?お前の髪は返したが」

うん、そうだね、その髪でこの部屋に謎の結界張られたからね。


まあこの人に何事もなかったならよかったのだ。




さて、と今日の目的である品物を見せてくれる。

「わあ、こういうのが竜領では流行っているのですね!」

色とりどりの髪紐がとてもかわいらしい。そして美しい。

ビーズが編みこまれたものから銀細工が先を飾るものまでさまざまだ。


「ああ、けれどやっぱり竜領って庶民でも裕福なんですねえ」

値段を想像し、少しがっかりする。

わたしでは買えない。


「あ?これは全部もうお前のものだぞ?」

「…はい?」

わたしは品物が見たいといっただけだったはずなんだけど。


「ええと、わたしお金払ってないです」

「そんなもんもうもらってるぞ。」

「えええ…」

流石にがっくりだ。


これじゃあお買い物じゃない、ただのプレゼント。

献上。


「ああ、そうか。お前は買い物がしたかったのか?」

「うう…はい。ここから出られないのでせめてって…」

半泣きのわたしをぽふぽふと撫でてなだめてくれる。


「仕方ねえさ、お前よわっちいからなあ」

「で、でもお買い物くらいできます!!」

流石にそれは前もやってた。

近いのが鼠領だったからそこで買い物するくらいだったけど。


母さまが一緒だったから大丈夫だったし。

あれ、一人で買い物はしたことがないな、そういえば。



「陛下方に頼めば貴族の店くれえは行けるだろ?」

「それじゃあわたしが楽しくないじゃないですか…」

母さまに髪紐、プレゼントしたかったのに。

きっとどんなものでもお似合いになるだろうけど、わたしはわたしのお金で買いたかったのだ。



お金はほとんどないけど…また髪とか売ればなんとかなるはずだ。



「お前結構不自由な生活してるんだな」

「あ、でも銀さんにお会いしたいといえばこうして機会は設けていただきました。」

あまり可哀想だなんて思われては陛下たちの評価が下がってしまう。


さすがにそれは避けたい。


「次来られるときはぜひお買い物をさせてください!!」

「そうだな、何がいい?オレはこれを機に商人ってやつになろうとしててな。なんでも言ってくれ。」

心強い専属の商人さんだ。嬉しい。



「家族や親戚に贈り物をしたいんです」

わたしに服を譲ってくれた親戚の女性や、父さま、母さま、兄さまにも。

あとはお義姉さまにもね!


と贈る相手を伝えれば、色々メモをしている。

銀さんはやっぱり根は真面目らしい。



「そうだ。オレから言うことじゃねえかもしれねえが」

「はい?」

「陛下方にも考えてさしあげろよ」

じとっとあきれた目で見られたのでばっと逸らす。


「わたしなんかが陛下方に差し上げられるものがあるわけないじゃないですか」

逸らしたまま呟くと、はあ、と溜息をつく銀さん。



ひどいぞ。



「お前刺繍はできねえのか?」

「刺繍、ですか?」

そんな生きるのに役立たない能力があるわけない。

服は繕えるけど、刺繍はできない。


「貴族は刺繍を贈るらしいぞ?」

なんちゃって中華世界で刺繍が好まれているとは知らなかった。

「刺繍の入った帯なんかを贈るって騎士が話していたのを聞いたぜ」

「はあ、そうなんですか」

「他人事だな」

「できませんし」


「じゃあ紐は編めるだろ?」

「いや編めませんよ」

あんなもの生活に役立ちますか?髪なんて適当な紐でくくっとけばいいんですよ。



「お前何ができるんだ?」

呆れた銀さんにむっと返す。

「狩りは得意です!」

「うぐ、可哀想になるからやめろ!」

なんでわたし逆ギレされてるんでしょうね??



思わず首を傾げた。



「…いや悪い、お前が悪いわけじゃねえな。そこの侍女とかはできるんだろ?聞いた方がいいんじゃねえか」

ぐいっと顎で指すのは翠さんと紅さんだ。


ずっと静かにいてくれたらしい。たまにいることを本当に忘れる。


「お二人ともお得意ですか?」

「私は刺繍が得意です」

「ボクは紐編めるよ!」

という心強いお言葉。


「…じゃあまあ贈るかは別として教わってみますか…」

渋々漏らせば、「そうだ、その意気だ」と応援されたのでちょっとだけやる気がでた。




…あれ、でもなんでこの人がそんな後押しみたいなことしてくるんだろ。

不思議に思えば帰り際に紙を手に握らされた。



曰く。

「オレは陛下方の監視付きだからな」

だそうで。

なるほどそれで今後も使ってもらえるようにという配慮だったのか。



やっぱり優しい人だ。

銀さんが無理になったらもうわたしに会いに来てくれるのなんて家族だけになっちゃうからね!


そういうわたしの寂しさみたいな心の機微までわかる銀さんには感謝している。




でも、だ。




泣きながら紐と刺繍をやることになってしまったことに関しては納得いってない!!








毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。

『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される』

https://ncode.syosetu.com/n6804fq/

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