6.溺れるほどに愛される後日談-巳
今日はわたしの中での紳士ランキング断トツの1位を誇る蛇王陛下だ!
彼はとても紳士なのだ。
きっと今日は昨日のように麻痺薬を使うようなことにはならないだろう。
まあ忍ばせてはおくけど。
「雛、よろしいですか?」
「はい!どうぞ!」
やっぱり丁寧に部屋の前でお伺いを立ててくれた。
こういうところはやっぱり好ましい。
わたしは準備して(もらって)いたお茶を勧め、どんなお話しをしようかな、とわくわくする。
この方物腰は柔らかいし博識だしで話が意外と面白いのだ。
「まずは名を捧げます。私のことは明とお呼びください」
「はい!明さま!」
名を呼ぶとふわりと花がほころぶように笑うので、ついつい見惚れてしまう。
さすが美形、笑っただけでこの破壊力。
凄まじい。
しかも机を挟んで向かい合うという未だかつてない距離感。
机の上に乗せられた手がわたしの手をずっとさすっているけれど、触れているのはそこだけだ。
一番配慮の感じられる距離感にわたしも思わずにこにこしてしまう。
「ふふ、今日は雛の機嫌が良いようですね。なにか良いことでもありましたか?」
「えっいえ!!明さまとお話するのが嬉しくて!」
「それは嬉しいことを言ってくれますね。ふふ、ですがあまり油断してはいけませんよ」
めっと額をつつかれて、あまりの甘さにでれでれしてしまう。
「可愛い私の雛。少し抱き締めてもよいですか?」
手を広げておいで、と言う明さまに、この人ならいいかな?なんて思ってしまい自分から抱き締められに行ってしまった。
「おや、素直で可愛らしいです」
ふわりと抱き上げられて、幼女のように抱き上げられたまま明さまがどこかへ歩くようだ。
けれどわたしは視界をそれとなく手で覆われていて、どこへ行こうとしているのか見えない。
「今日はまだ入浴していないと聞いています」
と言われ、そういえばそうだったなと思い至った。
いつもは來姫様か紅さんか翠さん(様付け禁止された)とお風呂にはいってから陛下たちが来るのを待つのだけど。
何故ってだいたいそのまま寝ちゃうからだね!
「私が入れますね」
あれ?いいかどうか聞かれなかった。
「え?あっえっと…え?」
「いいでしょう、何も問題ありませんよ」
ふふ、と変わらず穏やかに微笑まれている。
しゅるりと帯を抜かれ、肩から衣服を剥かれていく。
「わっおまちください、明さま、恥ずかしいです、一人ではいれます!」
わたしは平民だからね!!
「お湯は出せないでしょう?」
と言われ、頂いたアクセサリがあれば、とつけていたはずの全てに手を伸ばしたのに。
「あれ、ない…?」
いつのまにか全部外されていたらしい。
一応一番薄い下着の役割を果たしている衣だけは着たままだ。
死守した。
「ほら、これではお湯がだせませんよ。大人しくしていてください。」
広い湯殿で、濡れるのを構わずに明さまがわたしの体を洗い始める。
石鹸を泡立てた手で、そのまま。
袖や裾、合わせの部分から手を滑り込ませてくるので、結局直に肌に触れられている。
「ひ、布を、使って下さっ…!」
何か言おうとする度に咎めるようにじっと見られ、上手く言葉が紡げなくなる。
…んん?流石におかしくないか?
蛇族の能力にふと考えを至らせる。
そうだ、この人たちは種族独自の能力として、蛇睨みのような力が在る。
っていうかそういえばわたしも使える。
あまりに使う機会がないのですっかり忘れていた。
「や、やめっ…!!」
手が胸や股を掠めるように触ってくるので、流石に、と"眼力"を使ったのに。
「…雛、よいことを教えて差し上げます」
何故か殊更優しく微笑まれ、ぞわっと背筋が冷えた。
待って、怒ってる!?
「抵抗をするならば、その種族の能力以外のものを使うのです。」
と言われ、下手を打ったことがわかった。
なるほど、蛇族に蛇族の"眼力"は利かないんだ!
で、抵抗されたことにお怒り!?
恐怖で硬直してしまった体をほぐすように撫でながら、石鹸を湯で流された。
「怒ってはいませんよ。愛らしいと思っただけです。」
もしかして、明さまのことわたしはとんだ思い込みをしていたのではないだろうか。
今度は優しく髪を洗いながら、体をぴたりとくっつけられる。
背後にいるので見えていないけれど、なんだか布越しではない気が…
髪を濯ぎ、促されるまま明さまと向い合せに立つと。
上半身の衣類をすっかり脱がれていた。
ひええお美しい!!!彫刻みたい!!
その白い肌にところどころ鱗がある。
蛇族の特徴だ。
「怖くはありませんか?」
「鱗、ですか?こわくないです」
むしろとてもきれいなのに。
「…それはよかった」
ふわ、と微笑んだのは多分だけれどほっとした…のかな?
「蛇族はしばし他の種族に怖がられますから」
と言われても、首を傾げるしかなかった。
だってこんなに綺麗なのに。
「とてもお綺麗ですよ。わたしはすきです」
えへへとゆるく笑いかけると、きゅっと少しだけ眉根に力を入れたような表情をされる。
「…私の雛は豪胆なのですね」
と言われ。
「む…それ褒めてます?」
豪胆って女の子にいう言葉じゃないよね!?
「褒めていますよ」
と湯船に沈められたのでそういうことにしておいてあげようと思う。
温かい湯に包まれて蕩けて。
このまま有耶無耶にできるかなーと思っていたんだけどな。
「では口付けをしましょう。雛がしてもいいですし、嫌なら私がしますよ」
という笑顔に何か嫌な予感がした。
「ただし」
「私からするときには舌を入れます」
と宣言されたので、わたしは迷わず明さまの顔をがっと掴み、ぶちゅっと口付てやった。
好きにさせてたまるかと、腕力で防いだので追撃はキャンセルだ。
「おや、これは…思わぬ反撃です」
何故か嬉しそうなので、わたしは跳躍で距離を取り、脚力で走って体をふいて服を着替え、部屋の隅まで逃げたのだった。
「ふふ、やはり雛は活発な方が可愛らしい。おいで、髪を乾かしましょう」
やっぱりその優しい声には何故か抗えず、大人しく髪を乾かしてもらったのだった。
明さまは不思議な力を持っていることがわかったけど、詳細が不明なので今後はそれを解明しなければ!
と、足も腕も絡まれて身動きが取れない状態のまま眠ることになって決意した。
こういうところも蛇っぽいんだね。
毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。
『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着される』
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