5.溺れるほどに愛される後日談-辰
目の前で豹変ぶりを見てしまってから少し苦手な竜王陛下の日だ。
それまでしかめっ面だったのに、急に笑顔になるんだもん、怖いでしょ。
そう、彼のことはわたしは明確に怖いと思っている。
だって竜族だし。
威圧感というか王者の貫禄みたいなので勝手に委縮してしまうのだ。
來姫様は平気なんだけど。
「入るぞ」
一応声をかけてくれたけど、わたしの返事は待たずに入室してきた。
やっぱり大きい。
体の大きさでいうと一番大きい。
背も高くて筋肉質だ。
それに鮮やかな紅い髪と紅い目。
うっかり見惚れてしまうのは仕方がない。
なにせゲームのアイコンにもなるくらい公式で推されている。
正統派イケメンなのだ。
遠くで見る分には素晴らしいんだけどなあ。
特に何も言わずにわたしのことを抱いて膝にのせて、椅子に座る。
無言で体中を撫でまわされていてわたしもどうしたらいいのかわからないのだけど。
「ふむ、矢張り小さすぎるな。これ以上背は伸びぬのか?」
「ど、どうでしょう…わたしの一族は一番小さいですし、兄様ですら170cmほどしか…」
「それにしても小さすぎるではないか。これでは余のモノは入らぬ」
なんてこと真顔で言ってるんだこの人。
いやまあ体の大きな種族の人はそれが悩みなのかもしれないけど!?
わたしも兄様より40㎝も小さいのだ。
だけど一族の女性がいないからどれくらい伸びるものなのかわからない。
まだ15歳だし、伸びる可能性はある…と思うんだけども。
「せめて肉をつけよ。」
「これでも太ったんですって…」
はあ、と溜息をつくとお腹のあたりをさわさわと擦られる。
昨日の烈せんせいのような触り方ではないので大丈夫だ。
「斯様に薄い腹で何を言う。…二次性徴がまだなのか?」
と言われ、ぎくりと体が強張った。
「あう…そ、その通りにございます」
15歳で初潮もまだなので、結婚適齢期とか嘘だということになる。
兄様は地球の人間と同じくらいの成長速度だったから気にしてなかったんだけど、わたしは明らかに遅い。
…よね?
前世の自分が早い方だったからよくわからないのだ。
胸のふくらみとかほぼ皆無ですからね!
いつかバレるとは思ってたよね。
「ではまだ背丈も伸びるであろうな。余らにしてみれば微々たるものだが…あと20cmも伸びれば弛緩薬でなんとかなるだろう」
うんうんと何か頷いているけど知りたくない。
知りたくないことは先延ばしにする主義だ、わたしは。
いつのまにかお腹を撫でていた手はとまり、代わりに下腹部を指でとんとんされていることに気付いた。
「…?」
意図がわからずに思わずご尊顔を見上げると、にっこりと微笑まれた。
「其方は余を昂と呼ぶがよい。」
「はい、昂さま」
軽い力でとんとんとされながら、普通に話をしてくる昂さまに正直戸惑う。
「…ん…?」
何故か、そわり、と少しだけ背中が粟立つ感覚がゆっくりゆっくりと這い寄っている気がする。
「ふむ、体は童のようだが快感は拾えるのだな、僥倖だ」
耳元で嬉しそうに囁かれるも、意味がわからない。
このお腹とんとんに性的な…その、あれが含まれているってこと??
はふ、と何故か熱い息が漏れ始め、頭がぼうっと霞がかってくる。
「昂…さま…?」
「その顔は…うむ、気を抜くとこちらも…」
何か呟いているが、よく聞こえない。
「さて、そろそろ良いか。」
椅子に座っていた体を軽々と片手で持ち上げられ、優しく別の長椅子へ横たえられる。
クッションがふんだんに使われたふかふかのやつだ。
だけど今は上半身が昂さまの膝のうえなのでそのふかふかさはよくわからない。
「さあ、まずは口づけよ」
促されるがまま、近づいてきた口元に、こちらから口づけた。
「ふむ、愛らしい」
とろとろに蕩けきった笑顔に、すっかり魅入ってしまった。
変わらずお腹をゆっくりととんとんされたまま、至近距離で微笑まれていて段々思考力が落ちていく。
「…少し、だけ」
囁いた昂さまは、わたしにそっと口付けた。
熱い唇に、びくりと体が震えた。
あまりに長い口づけに、ぎゅっと目を閉じていたのを、少しだけ開けると。
こちらを爛々とした眼差しで見ていることに気付いてしまい。
一瞬口を離したすきに「悪い子だ」と囁かれて再び口付られる。
二日連続で悪い子、だなあとぼんやりした脳でそれだけ思うと。
わたしは酸欠で意識を手放したのだった。
***
翌朝。
昂さまの胸の中で目を覚ましたわたしは、昨日のことを思い出して顔が熱くなった。
今ならわかる。
この野郎わたしのこと外側から開発しようとしてる!!
こういうのえっちな本で読んだことある!!
ファンタジーだと思ってたから忘れてたけど!!
あとキスで酸欠で気を失うってお姫様かよ!!
恥ずかしさに悶々としているうちに昂さまは目を覚ましたらしく、再びおなかをとんとんされてわたしはすっかり骨抜きのふにゃふにゃにされてしまったのだった。
昂さまテクニシャンなのかな…
しかし今はまだわたしの意識ははっきりしているので。
昨日の午前中にうっかりできてしまった麻痺薬を浴びせて事なきを得たのだった。
「…雛姫」
「は、はい!」
「いや、其方の反撃なのだな。可愛らしいものだが…」
あれ、やりすぎたかな。
でも一番体の大きな昂さまにも効くことがわかったので、この薬をどんどん作ろうと決めた。
これも適当な草と適当な草で作れるのだ。
"調合"、便利すぎるね!
毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。
『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着される』
https://ncode.syosetu.com/n6804fq/




