2.溺れるほどに愛される後日談-丑
今日は牛王陛下の日だ。
牛王陛下は白髪と黒髪のグラデーションが神秘的で、瞳は柔らかい緑色の筋肉イケメンだ。
突然ばあん!と扉が開き、わたしはびっくりして小さくなる。
「雛!来たぞ!!」
そして部屋に入るなりわたしのことをぎゅうっと抱き締める。
急襲かと思うのでもっと普通に入ってきてお願い。
むちむちの筋肉に包まれて、ちょっぴり來姫様を思い出します。
立派な雄ぱいがね?こう…いえなんでもないです不敬不敬。
「今日は存分に触れるぞ!」
と眩しい笑顔に圧され、わたしは意識を飛ばしたかった。
無理だけど。
「まずは名だな。俺は臣という」
「臣さま、ですね」
「ああ。願わくばもっと砕けて話して欲しいものだが、まあそれは追々で良い」
わたしの頭くらいなら軽く握りつぶせそうなくらい大きな手は思いの他優しくわたしの頭を撫でる。
体温が高いのか、ちょっと眠くなってしまうくらいには安心できる感じの人だ。
もちろんヤンデレであることは忘れていないけど。
本当に太い太ももの上にちょこんと座らされ、お菓子を口に運ばれる。
わたしの口で一口サイズの小さなお菓子の数々。
わざわざ用意してくれたのだろうか。
「俺の領はこういった菓子が名産だ。どうだ?気に入ったか?」
「はひ、おいしいです」
生クリームとかふわふわのケーキとか、いわゆる洋菓子の類はこの国では珍しい。
「異国ではこういう菓子も多いらしいぞ」
ここはなんちゃって中華な国なので、お菓子も餡子とか饅頭とか飲茶とかね。そういうやつだ。
月餅とかね。あんまり好きじゃないんだけど。
金平糖は昔からあるので異国との交友は盛んらしいけれど。
どうやら貴族ともなると牛族のお菓子も食べられるらしい。
おいしい。
「雛はもう少し食べたほうがいい、細すぎる」
「ここへ来てから随分太ったのですよ!」
130センチ25キロが130センチ30キロになった。
5キロも太ったのだ。もうがりがりとは言わせない。
「いや、だがこれでは雛が苦しむだけだろう」
しれっと何言ってやがるこの野郎め。
顔がぼふっと火を噴いたのがわかった。
「ほう、雛は今の俺の言葉の意味がわかるのだな?」
にや、と口角を上げるのが見えてしまい、これは失敗だったと気付かされる。
「俺たちが丁寧に教えてやるはずだったのだが。いやだが知識だけか?」
ぐっと顔を寄せられて、そのイケメンのご尊顔に益々顔が火照る。
「お、お顔が近い、です。離れてくださ…」
ぐっと手を突っ張ってみたものの、わたしの手の長さでは全然意味がない。
軽く一まとめに握られて、動けない。
絶望。
一生懸命顔を背けたら、むき出しの耳に温い息がかかり体が意図せずぴくりと震える。
「可愛いな、俺たちの花嫁は。」
蕩けるように優しい声で囁かれて、心臓が爆発してしまいそうだ。
耐えきれずぎゅっと目を閉じると、耳にぬるりと何かが侵入する感覚。
「ひゃあっ!!」
びっくりして離れようとしたのに、もっと、とばかりに体を引き寄せられた。
みみみみみ耳に舌がはいっている!!
ぞわぞわと背筋が粟立つ感覚と、何故かおなかの奥がぎゅっとなる感覚に混乱する。
「な、ややめ、てくださ、臣さまあ…」
切れ切れにこれだけ零すと、顎を掴まれて無理やり臣さまの顔を見るように固定される。
「どこもかしこも甘いな、雛は」
浮かんだ涙をぺろりと舐められ呟く臣さまに、今度は耳をさわさわと絶妙な力加減で撫でられる。
よくわからないうちに、ぴくり、ぴくりと体が跳ねる。
熱い。熱くて、なんだかぼうっとする。
「は、はう…」
雛の経験値が足りないばっかりにこんな生娘(雛は生娘だけど)みたいな反応してしまうけれど!
わたしは違うのに!!
脳内では必死に抵抗しているはずなのに、雛の体がいうことを利かないのだ。
「止めて欲しいか?」
甘く耳元で囁かれて、反射でかくかくと頷く。
「では俺にも口付けてくれ。鼠王にしたように」
「ふあ…え…?」
「罰は平等に、だ」
え、待って。わたしは灰さまだけで良いと思ってたんだけど?
一回の平伏で全員に接吻なの?
えっいやだ無理。
…いやまあ口実なのだろう。それくらいわかる。
あとしないとこの羞恥から逃げられないっていうのもわかる。
これ以上は本当に耐えられないので、意を決して頷いた。
「いい子だな、雛は。」
柔らかく頭を撫でられ、臣さまの太ももの上に立たされる。
これで少しわたしのほうが目線が上になる。
臣さまの顔を両手で押さえ、ぎゅっと目を閉じて掠めるように口づけをした。
よし、ミッションコンプリート!
と離れようとしたのだけれど。
ああもうこうなるとは思ってたけど!!
ぐいっと引き寄せられ、たっぷりと長い口づけを受けたのだった。
うん、大丈夫だよ雛。舌は入ってないから!!
くらりと酸欠になりかけた時、ようやく離してもらえたのだった。
ばちりと合った目の奥に燻る炎のような欲が恐ろしい。
臣さまは一度ぎゅっと強く目を瞑ると、長く息を吐いた。
「悪い、本当に飛ばすとこだった。危なかった」
だからやめて聞きたくない!!
そのあとは魅惑のぱふぱふに包まれたことで、思ったより幸せな気持ちに浸れたのだった。
ねえ全員理性どうなってんの?これ毎日続くならわたしも少し…どうにかして…
そう、どうにかして反抗するぞ!
毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。
『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着される』
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