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26.飛翔

翌日、午前中は触媒取り、午後は來姫様と貴族のお勉強ということになった。

確かに來姫様には懐いてるから言うことは聞くけど!

くそ!!


「桃よ。よろしく」

あからさまにわたしを蔑んだ目で見てくるこのお姉さまが鳥族の桃姫様。

さほど言葉を交わすことなく、わたしを護衛騎士に担がせて再びあの場所へやってきた。


「…本当はあなたみたいな平民に触れるのは嫌なのだけど」

心底嫌そうにわたしのことを抱えて、ばさりと背の翼を羽ばたかせた。

なるほど、わたしに触るのは最低限にしたかったんだな。


あの時あんなに苦労した(途中まででも)塔の天辺に簡単に降り立つと、わたしの背を押した。

その先には鳳凰のような立派な像。

嘴の中に触媒が埋め込まれているのでそれに触れる。



鳥族の力はもちろん"飛翔"だ。

跳躍と似ているけどちょっと違う。

飛べるようになったのは嬉しいので後で許可がでたら練習してみたいところ。



「あの時は劣等種などと失礼を申し上げたこと、お許しいただけるでしょうか」

ふわりと目の前に鳥王陛下が降り立ったと思ったら、跪いて謝罪されていた。


ああ、初対面のときのことか。

すっかり忘れていたけれど。

「鳥王陛下、どうかおやめになってください。わたしは劣等種です。間違いなく」

犬王陛下の時の反省を踏まえ、触れないようにわたしも目の前で平伏する。


「くっ…いや、そこはゆっくり認識を変えてもらうとしよう。」

あの時とはずいぶん違う、優しい笑顔にうっかりときめきそうになる。


いやときめきはしないけど。

だって命の危機すら覚えた鳥王陛下だし。

普通に怖かったことは忘れてない。



「桃姫、私たちの雛姫にあまり失礼な態度はとらないでくれる?」

「ですがその者は劣等種ではありませんか!」

その劣等種に自分の王様の相手任せるとかどうかしてんね。

矛盾に気付いていないのだろうか、と首を傾げればだ。



「それを愛するなど、誇り高き我らの矜持はどうなるのです!!」

ってすげえ不敬!

王様にそれ直訴できるって強いね。


「ごめんね、雛姫。桃姫は私の従妹でもあるんだ。それで調子にのっているんだよね。雛姫が望むなら、」

何を言おうとしたのかわからないけれど、これ以上怖いことは言わないで欲しいので

「何も望みません!!」

と大きめの声で主張しておく。

「そう?では下まで送らせて。桃姫には任せたくない」



優しく横抱きにされ、気づけば塔のふもとに降り立っていた。

「ではまた。次はもう少しお話させてね」


鳥王陛下が颯爽と去ると、

「わたくしは貴女のような劣等種は認めていないわ。けれど、陛下がそうだと仰るなら従うまで」

桃姫は冷たい目でそれだけ告げると、なんとわたしを置いてどこかへ行ってしまったのだ。



「…あれ?」

今わたし、完全フリーです!!



***



思わず嬉しくなって、天空領の端まで駆けてきてしまった。

誰の監視もない、完全にフリーな状態。

もう二度とないであろうチャンス。



今ならここから落ちても死なないのだ。

飛翔があるから!



本当に思わず…うっかり?

能力の確認もせずにひょいっと身を投げ出してしまったのだった。



「…やってしまった」

思ったより速度が出るので体が痛い。

防御で身を包み、それをやり過ごす。



どんどんと地上が近づいてくる。



あと少し、あと少し。

故郷はここから随分遠いから見ることはできないけれど。




わたしはふわりと無傷で地上へ降り立ったのだった。

「おお…すごい、飛翔ってすごい。」

歓喜のあまり大はしゃぎで手を叩いて喜んだあと。




「どうやって戻れば…?」

と首を傾げることになる。

今使ってみて理解したけれど、この飛翔。

1分ほどしか使えない。


遥か彼方上空に位置する天空領まで飛べないのだ。



「あれ、やば。にににに逃げるつもりはなかったのに!!」

軽くパニックに陥る。


なんでこう、わたしは後先考えずにやらかすんだ!!


とりあえず昇降機を目指そう。

陛下たちにもらったアクセサリがある今なら動くかもしれないし…!

こう、隠密でこっそり忍び込んで乗ってしまおう。



***



あれから小一時間さまよったわけなのだけど。

「どこだろ、ここ」

完全に迷子だ。

それもそのはず、わたし故郷を出たのはこれが初めてで、ここが何領かもわからないのだ。

人っ子一人いないので道を聞きようもない。


故郷の方角だけはわかるんだけどな。

これはなんというか、勘で…あ。

「嗅覚、使えばよかった」

望む道がわかったりする力だ。勘で思い出すなんて抜けている。

あまり成熟はしていないけれど、昇降機の方角くらいはわかるはずだ。




その方角へ更に1時間。ちらほらと人が見えて来た。

どうやらここは竜族領らしく、竜族しかいない。

せめて鼠族領なら話くらい聞けた…多分。


ここにいる竜族は平民だろうが話しかけるのは無理だ、怖い。大きい。


「なんだァ、お前劣等種かァ?」

すごい、いかにもごろつきっぽい人に話しかけられてしまった!!

大きい!服が普段のわたしよりほんの少しだけいい、くらい。

つまり質素!


「は、はい!!申し訳ございません!!」

流石に貴族相手ではないので頭を90度下げるくらいにしておきます。

「その割にいい服きてんな、寄越せよ」

わかりやすくカツアゲされてしまった!!


「もちろんでございます!!」

これは鈴姫様のだったかな、ごめんなさい死にたくはないので!!

素早く服を脱ぎ、下着というか一番薄い着物一枚になる。

こんなちんちくりんに欲情されるはずがないので、恥ずかしさも皆無だ。


「なんでこんなとこに居やがる?初めて見たぞ」

素直な様子を見てどうやら気を許してくださったらしく、普通に話しかけてくる。


え、カツアゲしてきたのに??

いやもしかしたら、その衣服は竜族様が有効活用してやろうみたいな親切心だったのかもしれない。


「天空領にご用があり出向いていたのですが、誤って転落してしまい…」

誤ってではないけどここはまあいいでしょう。


飛び降りた酔狂なやつだと思われたくない。


「よく生きてたな、劣等種が。なんだ、じゃあ昇降機探してたのか?」

「運よく。その通り、昇降機を探しておりました」

「んだよ、じゃあこの布の礼だ」

おお??

もしかして送ってくださったり??


「腕一本くらいで手をうってやるか」

優しくはなかった。ちくしょうめ。


いや多分優しいのだ。無一文でその体しか持っていない中、腕一本で済まそうとしてくださったのだから。

まあそれをされると死ぬ可能性もないわけではないので一応申し上げておきましょうか。


「恐れながら竜族のお強いお方」

「あァ?」

わたしの手を既に千切ろうとしているのだけど待って。

「下手をすると死にます…劣等種ですので…」

というとぱっと手を放してくれる。



どうやら殺す気はなかったらしい。

珍しい劣等種の腕でも手土産にしようとしただけなのでしょう。

よかったよかった。



「…たしかにこんなにちいせえし嘘ではねえな。鼠族の子供くらいしかねえがいくつだ?」

「15歳、これでも結婚適齢期です。その代わりにこの髪はいかがでしょう?珍しいと聞きました」

來姫様がそんなことを言っていた気がする。


「ガキじゃねえか。…まあ悪くねえか。」

15歳なんて竜族の方からしたら赤子でしょうね!

この方にお任せすると首ごといかれそうなので、懐に入れっぱなしだった小刀で髪をばっさりいく。

それを帯で結わえ、脱いだ服と一緒にお渡しした。

大切な髪紐だけは胸元にしまっておく。



彼はそれらを嬉しそうに懐に入れると、わたしのことを存外そっと抱き抱えてくれた。

「よし、じゃあ連れてってやろう。名はあるのか?」

「はい。雛と申します」

「そうか、雛。痛かったら言えよ」


おお、この方劣等種にやさしいぞ!

虫とかにも優しいひとなのかもしれないな!!



***



「そら、ついた…ぞ…何の騒ぎだ?」

ええ、わたしがいなくなった騒ぎでしょうね。

この親切な方を巻き込むわけにはいきません。

「ここで大丈夫です。」

「いや、お前があんなところいけば一瞬で潰されるぞ」

眉を顰め、ずんずんと昇降機に近づいてしまった。



「おい、こいつを乗せてやってくれねえか、誤って落ちたらしい」

すごいなごろつきさん!

こわい顔の騎士たちにもちょっとも怯まずに話しかけてる。

さすが平民と言えど12種族の中で最も強く誇り高く強いと謳われる竜族!



わたしもちょっぴり心強い。

怒られないといいな。無理かな。



「ひ、雛姫様!?」

くそう騎士にまで顔覚えられてるつらい。


ごろつきさんが、え?って顔で見てるじゃないか様付けて呼ぶのやめてくれ!

「あの、迷子になっていたところをこの方が親切にも運んでくださり…」

「その恰好は!?」

「あ、えっと、お礼に差し上げられるものがなくて、この方にお渡ししました」




しばらくここで待つように言われてしまったので、大人しく昇降機の横にある巨大な建物で待機。

ここは検閲だったり騎士の詰め所だったり…まあ天空領に繋がる場所なのだから当然の仰々しさ。


ごろつきさんも一緒に待ってくれている。

が、ちょっと嫌な予感がしてきたので、そっと顔を寄せていただけるように手招きする。

「ん?」

意図通り、わたしの口が届く場所へ耳を寄せてくれた。


「逃げた方がいいかもしれません」

「…いや、いい。報酬は受け取っているのにここで放り出せねえ」

「もう十分ですよ、昇降機は目と鼻の先ですから」

意外にも義理堅いこの方をどうにか逃がして差し上げたい。



だって、この()()()()は。

徐々に近づいてくるびりびりと感じられるほどの威圧は。



しかし間に合わず。

がちゃり、と待機していた部屋の戸が開き、その人物が視界に入る前に。

わたしは平伏していた。



「雛姫。」

「竜王陛下ッ!!」

でしたから。あれこれデジャヴュ。



隣にぽかんと口を開けたままのごろつきさんが突っ立ったままだ。

やべ。





毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。

『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される』

https://ncode.syosetu.com/n6804fq/

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