23.贈り物
当然のように毎日届く贈り物は、日に日に送り主が増えていく。
今日の分には馬王陛下のも入ってて、その腕輪を身に着ける。
どうせ発信機とかそういう役割の呪術がかかってるんでしょわかってる!
けどわたしはここに閉じ込められてるんだから、そんなもの必要ないとは思うんだけどな。
「…ん?」
なんだかその腕輪がぽかぽかするな、と思ったら、何もしてないのに机の明かりが灯った。
「もしかしてこの腕輪…?」
え、発信機かもしれないけど呪術の道具が使えるの!?
思わず嬉しくなって、部屋中の明かりをつけて回ってしまった。
座って待ってろって言われたのに。
やべ、また雨様のいいつけ破ったって怒られる!
あわてて椅子に座ってお茶を飲むふりをする。
じっとしてろっていうのがまずわたしには難しいんだよね。
と、今日は來姫様が雨様と一緒に来てくれた。
一応昨日のわたしの願いは聞き届けられたらしく、「雨様と來姫様の入室を許可します」と言わないと2人は入れないようになった。
怖いからやらないけど、雨様も締め出せてしまう。
「來姫様!!」
嬉しくてぎゅっと抱き着くと、來姫様もぽふぽふと頭を撫でてくださる。
「あらあ、それ、つけてしまったのねえ」
すっとわたしの手首を持ち上げる。
「え?」
「呪術、使えるでしょう」
「はい!すごいです!明かりがつけられるんです!!」
「そうねえ、そういうものだもの。貴女が警戒しているの、可愛らしくってつい黙っていたのだけど」
それに、と耳元でそっと囁くのは「貴女の場所と声も届いているわあ」という言葉。
それにはわかっている、と頷いておく。
まあ声もとは思ってなかったけど!
「昨日馬王陛下に絶対つけるように言われたので」
「そう、それならば毎日つけるといいわあ。どれもとてもいい品よお」
そうでしょうね…こんな平民の小娘がつけていいものじゃないのはわかります。
「服もいただいているのでしょう?どうして着ないのかしらあ」
「見たことのない布でできてるんです!!!」
そう、なんだか触ったことのない滑らかな布でできた服も毎日1着は届けられるようになった。
けどまだ一回も着ていない。
だって破りそうだし。
こちとら綿とか動物の革とかあとは麻で作った服くらいしか着たことないんだい。
見た感じ藤姫様の服の素材ともまた違うっぽいんだもの。
「そういう危機感は持ってるのねえ。あの布、王族しか着れない布よお」
「陛下方はわたしのことを殺したいのかな!?」
「そうねえ、もし貴女を馬鹿にするような愚か者がいれば妬まれるわねえ」
のほほんと言うのやめてくださる!?
「あとは貴女がすぐに地面に這うのをやめさせたいのだと思うわあ」
確かにそんな高価な服を着ていれば平伏はしないだろうけど。
「それは無理ですね、本当は來姫様にも毎回平伏したいです」
「やめて頂戴ねえ」
くす、と妖艶に微笑まれてわたしはどきどきが止まりません。
「ねえ、今日ってわたくしも着いて行ってはだめかしらあ」
「どうでしょう、雨様聞いてもらえません?」
嬉しい申し出にわたしからはぜひお願いしたいところだけど、生憎わたしに決定権はないんだよね!
***
今日は虎族の楊姫様のところで、許可もでたので3人で向かう。
なんでも深い谷の底にあるらしく、むしろついて来てもらえるなら助かるとのことで。
楊姫様がわたしを抱えて谷底まで飛び降りる予定だったと聞いて心底肝が冷えたのだった。
たまはないけどたまひゅんするからね。前世ではフリーフォールとか苦手だった。
玉はないけど魂はあるから魂ひゅんかな。
ここは昨日手に入れた馬族の"脚力"を使って降りるのが正規ルートなんだろうけど、それも普通に怖いよね。
高い。底が見えない。
「しっかり捕まるのよお」
來姫様にしがみ付くと、ふわりと浮き上がる。
竜族は空を飛べるのだ。
すごいよね。
海も泳げるのだ。
強いよね。
來姫様にゆっくりと底まで連れて来てもらうと、小さな祠に"触媒"はあった。
「へえ、これがそうなのねえ、話は聞いていたけれど」
興味深そうに虎の像を眺めている來姫様。
楊姫様はわたしたちが仲がいいのを見て取ってか、それとももともと口数が少ないのか一歩下がってみているだけだ。
わたしはそっと"触媒"に触れ、それを飲み込んだ。
虎族の力は"跳躍"
帰りはこんな谷ぴょーんだ。
"脚力"とか"防御"と併せて使わないと着地のときに足が折れるというしょっぱい仕様だけど。
初見殺しだよね。
思い出さなければやらかすところだった。危ない。
「ああ、楊姫と來姫も来ていたんだ」
まだ随分高い子供の声、虎王陛下だ。
12人の王の中で一番見た目も実年齢もお若い。
それでもわたしより長生きしてるはずなんだけどね。
いつも通り平伏しないと、と地面に跪こうとしたところで虎王陛下に手を取られる。
やだかわいい…!
だって兎王陛下より更にショタ。
こんなのちっちゃい子供だ。
金髪にはちみつ色の瞳、なんてかわいいの!
「だめだぞ、雛姫はおれのお嫁さんなのだから」
とはいえわたしより少し背は高いので、軽々抱き抱えられてしまう。
いやまあ虎族は力も強いものね…
いつかもっと大きくなっちゃうんだよね…
「なるほど、いい香りだな…」
わたしの首元に顔を寄せると、突然かぷりと噛みつかれる。
「ひッ…」
思わず悲鳴を上げてしまい、それをあわてて飲み込む。
耳元で叫ぶとか不敬だからね!
少し血のにじむそこを、ざらざらの舌で舐められて更に痛い。
「かわいいかわいい雛姫、今日はここまでだけど次はもっと、だよ」
無邪気な顔で、可愛くないことを言うと彼は去っていった。
「雛姫様!!」
真っ先に駆け寄ってくれたのは來姫様だ。
「止められなくてごめんなさい。これを塗るわあ」
多分ぼろぼろになっている肩口に何かの薬を塗ってくれる。
ずきずきしていたのが嘘のようになくなった。
「虎族は愛情表現として噛んだり舐めたりが多いのよお。雛姫様の肌では耐えられないわねえ」
「あの、ありがとうございます。來姫様」
それを知っていてついて来てくれたのだろう。
止められなくてごめんなさいなんて言っているが、本来その必要はないのだ。
相手は仮にも王様だしね。
その気遣いだけでわたしは嬉しい。
この天空領で唯一、わたしの気持ちに寄り添ってくれるのが來姫様なのだから。
楊姫様なんて青い顔で口元覆って固まってるんだからね!
いやかすかに「こんなにか弱いなんて…!」って言ってるの聞こえてる。
多分他の種族の方ならじゃれてて微笑ましい、くらいで済んだだろうから仕方ないけどね!
毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。
『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着される』
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