22.諦めの境地
諦めたわたしはまず『王の花嫁』について調べることにしたのだった。
今日のお茶会は馬族の蘭姫だけど、午後の約束なので。
昨日のうちに雨様に頼んでおいた『王の花嫁』についての書物を読み漁る。
そこでわかったことといえば。
「なんだ、跡継ぎつくるだけか」
ということ。
『王の花嫁』は跡継ぎを作ることと、せいぜい他の種族の女性と仲良くすること程度の仕事しかないらしい。
国は王やその部下たちが纏めるし、優れた統治能力は王の血筋故確約されているから。
ファンタジーだなあ。
血筋で統治能力が得られるって。
いやまあわたしも神の末裔ですけど。
ちなみにその神の末裔の一族に関しては御伽噺レベルでしか残っていなかった。
―――遠い昔、現在の天空領には一人のかみさまがいました。
そのかみさまはひとりぼっちでとても寂しく、話ができる友達を欲しがりました。
けれど、そこにいたのは言葉を話さない動物のみ。
そこで、かみさまは12の動物を選び、かみさまによく似た姿かたちをお与えになったのです。
それが、現在の12の王の祖先。
やがてその動物たちはかみさまを深く愛し、かみさまもまた彼らを愛しました。
愛した動物たちが寿命で命を終えたころ、かみさまもそっと目を閉じ眠りについたのです。
というのが唯一残っていたお話。
この"かみさま"の末裔がわたしだというのだから笑えない。
もう何の力も残っていないし、寿命も誰よりも短いから最後の一人が亡くなる瞬間まで生きているのは不可能だろう。
わたしたちの一族は、もうほとんどただの人なのだ。
ここに、『かみさまは黒い髪をもち』とか書いてあればせめてわかっただろうに。
そうすればもう少しくらいわたしたちの一族の暮らしはマシだったのかもしれない。
いやもちろん幸せだったし、それを望んでいる節はあるからこれでよかったのだろうけど。
さすがに跡継ぎのお役目は分担できない…よね?
いつか提案してみ…いやこわいからやめよう。
え、けど12人も子供産んだらわたし死なない?
本気?
…よし、これは保留。忘れよう。わたしは何も知らない。
***
たいしたことはわからなかったなあとがっかりしつつ蘭姫様のおでましだ。
「どういう風の吹きまわしかしら、他の姫たちには随分な抵抗に遭ったと聞いていたのだけれど」
少し高飛車そうなつんつん美女だ。
「皆様に逆らうなど本来してはならないことでございました。猛省いたしましたのでお許しください」
「そう?ならいいわ。」
ふふん、と鼻で笑うと、蘭姫様はやっぱりわたしを担ぎ上げた。
「逃げられては私の命がないわ。このままで我慢なさい」
連れられたのは高い壁しかないような岸壁だった。
「この扉を押すのよ。ああ、気にする必要はないわ。私がやるから」
わたしを下ろすと護衛騎士に預け、蘭姫様は扉を開いた。
この扉をあけるには猪族の力である"腕力"を使うのだろう。
蘭姫様は呪術で力をあげているようだけど。
すごい裏技だよね!
もうさくさくっと"触媒"を飲み込む。
次からは左手の甲らしく、左手が痛んだ。
「馬王陛下よ」
ずいっとわたしのことをいつの間にか来ていた馬王陛下のほうへ突き飛ばす。
なんというか、嫌いなのかなってくらいそっけない。
わたしじゃなくて馬王陛下のこと。
この方は白馬なのか、白いふさふさの鬣を彷彿とさせる髪をお持ちらしい。
「きみが雛姫ちゃんだねえ、うわあかわいいなあ。」
目を細めて嬉しそうにわたしを高い高いする馬王陛下。
畜生め、幼女じゃないんだぞ!
などとは思いつつされるがまま、黙っておきます。
「雛姫ちゃん?大丈夫?怖くないよ?」
そっと抱き締められて、ぽんぽんと背中をあやすように撫でられる。
おそらく活きのいい女だとは聞いていると思うので、随分不安そうだ。
馬王陛下はわりとチョロ・・・いやお優しいのかな?
オアシスかな?
いや幼女扱いされてるだけな気がするけど。
「それとも蘭姫が何かした?雛姫ちゃんを天空領から帰してあげるのはもう無理だけど、他のお願い事は何でも聞いてあげるからね」
わあ優しい!やったね!
「ではひとつだけ。どうか部屋へ入れる方の判別をわたしに委ねていただけませんか」
「どうしたの?護衛が何かした?」
さすがに護衛に夜中のうちに連れ出されたとは言いづらい。
知ってるかもしれないけど。
「わたしの許可ではなく雨様の許可で入室できる方が決まるのは気が休まりません」
藤姫様が勝手に入室してくるんだもん!
「そっか、じゃあ雛姫ちゃんの言うようにしようね。他にはないかな?」
「はい。」
「じゃあこれはぼくたちからのお願いなんだけど」
あああ抜かった!!
無償でお願い聞いてくれるわけじゃないんだ!!
馬王陛下も性格悪い側だった!!
ろくな王がいない!!
「贈ったアクセサリは付けてほしいんだ。ぼくのも、ほかの王のもね」
「わたしのような平民がつけるには少々無理が…」
「だあめ、つけて。ね?」
柔らかく微笑んでいるように見えるけれど、その目の奥は全く笑っていない。
こわ。
ほらもう絶対何か仕掛けられてるよねえあのアクセサリ!!
「へ、陛下のお申し付けの通りにいたします」
頷くと嬉しそうに去っていった。
毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。
『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着される』
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