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21.バトル

いやよく考えてくれ、わたし。

ゲーム本編では悪役令嬢とバトルしてたよね!?


ということは戦うという選択肢もないわけじゃないってことだ。

問題は最強の藤姫様がすぐでてくるってことだけど。



「わたしを連れて行きたければわたしに勝ってからにしてもらいましょうか!!」

「ええ、今日はなんですか」


呆れた声をだしつつ近づいてくる雨様を制す。

「あ、その線からこちらに入ってきたら死にますよ」

ひゅん、とお手製の弓を鳴らす。

さくっと雨様の足元に刺さったのは部屋に置いてあったすさまじく高価であろう椅子を削って作った矢だ。


ちなみに弓は(こちらも高価だと思われる)机の方の脚を使った。

大弓になって嬉しい。

弦は服を解いて作った適当な紐だ。



弁償しろと言われた場合命を差し出そうと思う。



青い顔の雨様が、じりじりと下がり藤姫様を呼びに行ったのがわかる。

構いません、わたしはここで籠城戦をすると決めたのです。



「わたくしたちの呪術に勝てるとは思っていませんよね?」

「思ってません!」

「ならば鬱憤を晴らしたいだけですのね。寧姫様、このままお相手お願いしてもよろしいかしら」


「いいわ。戦いなら私も得意よ」

出て来たのは今日のお相手である猪族の寧姫様でした。


幸いにも藤姫様は一旦退出してくれるらしい。

寧姫様とわたしの一騎打ちだ。



本当なら勝てば触媒を得られるんですけどね!!

わたしは勝って触媒を壊すなりなんなりしたい。

あれ壊せるのかな。



いや今は一旦寧姫様に勝つことだけを考えよう。



寧姫のジョブはどうやら拳士のようで、ボクサーのような構えを取っている。

たったひとつの出入り口である扉を死守すればわたしの勝ちで、部屋への侵入を許せば寧姫様の勝ちかな。

所詮弓士では牽制しかできないけれど。



あと怪我とかさせたら罰せられる気がしてきたなあ。

平民だからね。



ひゅんひゅん、と寧姫様が踏み出そうとするその先に矢を射る。

「へえ、いい腕をしているのね」

「平民ですから」

「なるほど、狩りの腕ってわけね。けれど、急造の道具ではこんなものね」

ふふ、と美しくも獰猛な笑顔を浮かべた寧姫様は、わたしの矢を素手で払ってしまう。



それもそうだ。鏃もないただの棒だから同じように拳士のジョブを持つ寧姫様に簡単に通用する筈がない。



あっという間に距離を詰められ、わたしは秒殺されたのだった。

「…呪術も使われてないのに…」

流石に呆然と呟くと、憐みを含んだ目でそっと抱き上げられた。


「本当に脆弱な一族なのね、大切に扱うわ」

そう思うならこれからの事、やめようとか思わないですか?

思わないですよね…



***



わたしは遠い目をしたまま気づけばなにやら泉に連れてこられていたのだった。

「ここの仕掛けは薬品が必要らしいのだけど、それは兎王陛下にお預かりしているから心配はいらないわ」

手回しに抜かりがない。



本当に藤姫様はわたしのことを差し出すためだけに頑張ってこられたんだなあとついしみじみしてしまう。

もちろんわたしが藤姫様ならわたしだってそうしただろう。

義務で花嫁をやらされるなんて御免だ。



わたしはきっととろけるように愛されるんだろう。

わたしが神の末裔であるという血筋だけで。

そんなのが本当に愛なのか、わたしにはわからない。



そう、いつの間にか偶然を装って現れた猪王陛下に抱き寄せられながら考える。

柔らかな茶色の髪が肩で切り揃えられた物静かなイケオジだ…った。

けれどわたしに触れた瞬間物静かだった相貌を崩しに崩し、でれでれと撫でまわしてくる。

「雛姫は愛いな。我らからしてみれば赤子のようだ。」

たしかにすっぽり全身包まれるように抱き抱えられている。

赤子は言い過ぎだと思うけど。



「猪王陛下…」

「ああ、名を呼んで欲しいがそれは次の機会に。雛姫、また」

そっとわたしの額に口付けると、去ってしまった。



「猪王陛下って笑顔になれたのね。初めて知ったわ」

寧姫様もちょっと呆然としている、というかみんなそうだ。

普段との豹変っぷりに驚く。





よし、わかった。

わたしも腹を括ろう。

こうなっては全員の寵愛を受けることは免れない。


もうそこは諦めよう。

無理だった。仕方がない。

よし、前向きに行くぞ。



だとすれば()()は分担すればいいのだ。




密かな決意を抱き、わたしは寧姫様に担がれながら部屋へ戻った。

ところで仕事って何をするんだろうね?






毛色は違いますがよかったらこちらもお願いします。完結済みです。

『光の勇者は竜の姫と月の騎士に執着(あい)される』

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