ポンコツ?女神と夢の中で
――ノア、目覚めなさい。
ここはどこだろう。どうやら夢の中らしい。だって真っ白な世界に浮かんでるんだもん。あとなんか頭に声が響いてる。綺麗な声だけど怖い、幽霊かな?
体にだんだんと力が入らなくなり、浮かんでいる? そう考えると急に焦りが出てきて、バランスの取り方がわからなくなる。
「ひっ! うわあああ、お、ちる?! 落ちちゃうよ」
――落ち着きなさい。足に暗示をかけて『地面がある、地面がある』と想像しなさい。
「ひあ、え?」
ガクンと体が揺れ、絶叫する私に声の主はそんなことを言う。
地面がある、地面がある。私の足の下にはかたーーい地面がある。落ちない、落ちない。絶対落ちない。
そんな風に強く念じていると、グラグラとしていた体が安定してくる。
「やったー! ありがとう。えっと名前が」
――女神で構わないわ。
「うん、女神さん。ありがとう」
――ところでノア。適当になら簡単な願いを叶えてあげる。
「本当に! じゃあフェイさん達を生き返らせて!!」
――ごめんなさい、それは無理なの。
「えー、ケチだね」
――今、会いたい人とか。
「師匠に会いたい……えっ」
自分から出た言葉なのに、受け入れられない。私があの師匠に自分から会いたいなんて言うなんて。
――その気持ちが貴女の今、望んでいることなのですよ。
信じられないけど、そういうことらしい。
「ん、本当に。はぁー、そっか」
――浮かない顔ですね。
「まあ、そりゃそうだよね。皆、死んじゃったから疲れてるのかな? ……あっ、ねぇねぇフェイさん達が死んじゃった前に戻ることってできるのかな?」
――私の力が貯まれば、可能ですが……。
「やった!! どうすれば貯まるの?」
――私の『お願い』を叶えていただくだけで結構です。
「うん、なんでもするよ!」
――なんでもって言いました? やった!!……あっ、コホンッ。えーーととりあえず詳しいことはまた後ほど。このこと誰にも言ってはいけませんよ?
「う、うん」
もしかしてこの女神様、ちょっと変わった人なのかもしれない。
――あー、今変な奴だなって思いましたね? 女神ですから。わ・た・し!!
「はいはい」
――はい。は一回ですよ!!
「……はい」
話が進まないんだけどっ! という私の苛立ちを察知したのか、一瞬沈黙が辺りを包む。ていうか私の頭の中での会話だから、静かなのは当たり前なんだけどね。
「うん、なんとなくわかったから」
――そうですね。
――では、いってらっしゃい。
ただでさえ、真っ白だった世界に新たな光が私を包み込む。今度は目も開けられないほどの光に飲み込まれ、私の意識は途切れていった。
そして、物語は動きだす。一章、終わりです。