外道
「なんか、呆気なかったな」
(人が死ぬとはそういうものでしょう)
「その通りだな。さてと、何か変わったかな?あまり実感は湧かないが」
(さっきまでとは全然違いますよ)
「そうか、自分じゃ分からないんだがな。まあいい、早速俺の奴隷を作りに行くとしよう」
大人達の宴会も子供達のパーティーもまだ盛り上がっている最中だ。殺すのにそう時間はかからなかったから、当たり前なのだが。
ともかく、まずは子供達の方へ向かう。
あまり怪しまれないような様子で、パーティーを見張っている大人二人に話しかける。
「あのー、すみません。今は何をしてるんですか?」
「あ、ああ。今日は狩りで大きな獲物が取れたからね、皆で宴会を開いているんだ」
「へー。そうなんですか」
「悪いが、よそ者である君は参加することが出来ないんだ。少し肉は上げるから小屋へ戻っていてくれないか」
はあ?よそ者だから参加することが出来ない?ムカつくなあ。ただ居ただけじゃなくてちゃんと働いてただろうが。まあいいや、もうさっさと奴隷になれや。
肩に手を触れる。
「発動」
「一体何...」
ちゃんと成功したようだ。
よし、この調子でどんどんいこうか。
(やはりちゃんと発動しましたね。しかしわざわざ声にしなくても発動しますよ)
「分かってる。気分だよ、気分」
「おい、お前何をした!」
「あんまり騒ぐなって」
「うっ...」
よし、また成功したな。
(今度は声に出さないんですか)
だから、気分なんだって。
おっと、しまったな。目立ちすぎたせいで子供達が怯えた表情をして、今にも逃げ出しそうにこちらを見ている。そうだ、早速こいつらに命令して子供達を留まらせておこうか。
(おい、なんとかしろ)
(はい。分かりました)
「あー、お前達何でもないんだよ。少しこの人とお話をしていただけさ。何、悪い人じゃなくていい人だから安心してくれ」
「そうなの?」
「ああそうだ」
「よかったー!」
なるほど、多少命令が抽象的でも自分で考え実行できるのか。いちいち具体的に言わずに済むのはいいな。
やはり、従順な奴隷は楽でいい。
(おい、ついでに皆をここに一列に並ばせろ。プレゼントを上げるからとか、適当な理由をつけてな)
「...それと、この人が皆にプレゼントをくれるそうだから、ここに一列に並んでくれ」
具体的な提案をすればそれを採用する、ということか
わーい!やったー!なにくれるんだろー?
一斉に喜びの声をあげ、子供達は素早く一列に並び始めた。
さて、並んだ奴らに一人ずつ魔法をかけていく。かけ終わった奴隷には何をくれたか他の奴に聞かれたら、秘密だと答えるように命じておいた。そうして、不審に思われることもなく、総勢二十人の子供、二人の大人を奴隷にすることが出来た。
本当に人一人殺すだけで魔法を使えるようになったんだな。あまり変化は感じないんだが。
(人が変わる時というのは結構自分では認識できないものですよ)
そういうもんなのかね。まあ、魔法が使えて、奴隷が増やせるなら、何でもいいが。