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少年は水蒸気の夢を追う  作者: 蟲人
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ガラクタ屋ブルーノでの取引

今回貨幣の概念がでてきます。日本円と同じように考えてくださいまし。

1000円=1000ルムみたいな感じです。

 「どういう風の吹き回しだ。また僕を騙すつもりか?」


 いつもならこっちの足元を見て吹っ掛けてくるのに…。しかも、自分で時計に価値があると確信しているにも関わらずだ。何か裏があるんじゃないかと疑っていると、


 「いや、売れないんだ」


 「売れない?こいつがか?」


 信じられない。こんなに素晴らしい懐中時計なんてないのに…。外装は確かにボロボロだが内部の機構さえ少し直してやれば使えるのに。そう考えていると、


「よく見てみろ。魔力石がないだろ?」


 「魔力石を買えるような客に売り込めばいいだろ。あ、わかった。ぼったくり過ぎて逃げられたな?」


 と冗談めかして言うと、


 「俺がそんなヘマするかよ。違うんだ。そいつの文字盤を見てみな」


 言われて見てみると納得がいった。


 「そういうことか…」


 「ああ、最初こそお前のような反応をするんだけどな。そんなに大切かねぇ。製作者の刻印なんて」


 「大切に決まってるだろ。ラナーほどの人になれば贋作なんてゴロゴロと出てくるし。それにしてもこれは…」


 誰も買わない理由は分かったが、それにしても良くできている。とても偽物とは思えない。 

 手に取って観察していると、


 「なあ、お前さ、錬金術で金属錬成してギアとかのパーツ作ってたじゃん?中のそれ何の金属なのか分かるか?」


 「奇遇だな、僕も同じことを聞こうとしていたところだ」


 ブルーノは大きため息をついてドカリと椅子に座った。触ってみてその異質さに気づく。軽くて金属特有の冷たさがない。その上、ごみ捨て場のような劣悪な感興に置いてあったにも関わらず目立った傷・劣化は見られない。

 

 「はー。でさ、最初の話に戻るけど。」


 そう言って指を3本立てた。


 「どうだ?3万ルムぽっきり」


 「どうだ?じゃねぇよ。結局お前が決めてるじゃないか。しかも高いし」


 「頼むよ。もうお前くらいしか買ってくれそうな奴いないんだ」


 「僕に押し付けようとするな。別に今売らなくてもいいだろ」


 「金がねぇんだよ。なんならもっと安くするから。な、な?」


 気持ち悪い手の動きですり寄ってきた。

うーん。何かに使えるかな?不思議な素材っぽいし。時計とか欲しかったしなぁ。…これを流用して安く抑えてみるか。


 「はぁ、1万なら…」


 渋々そう言うと、


 「冗談だろ?」


 笑い顔が引きつっている。


 「お前に食われたアップルパイのこと忘れてないからな」


 「いつの話をしてんだ…。しかも誤ったじゃん。」


 「うるさい。あの後メアリーにどれだけ睨まれたことか…。それに僕はこれっぽちも困らないしー」


 ふ、ふ、ふ、今回は僕が優位だ。思う存分苦しんでもらおう。さあ、苦しむがいいドケチめ。いい気分に浸っていると、


 「分かった。なら、1万ルムな」


 「え?」


 そう言うブルーノの顔は爽やかだ。


 「1万ルムでいいのか?」


 「俺がいいって言ってんだからいいんだよ。ほら、早く払ってくれ」


このドケチ普段なら絶対に首を縦に振らないであろう金額で承諾しやがった!すっかり絶望しきった顔に騙された。は、嵌められた…。


 僕は軽くなった財布とニセ懐中時計を携えトボトボと帰った。


登場人物


シェイプ・トリニダート

主人公。最近身長が伸び悩んでいる15歳。トレードマークはキャスケット。頼み込まれると断れない人。メアリーに頼まれて買いに行ったアップルパイは老舗ケーキ屋『ジョルダーノン』で1日に500個限定で販売されていたもの。帰るとメアリーに悲しそうな顔をされた上、アビルダの拳骨をくらった。


ブルーノ

今回シェイプに上手いこと時計を売りつけることに成功した人。懐中時計は他の人に高く売るはずだったが、売れなかったため急きょ計画を変更した。売れただけで儲けものらしい。アップルパイを食べた際シェに殴られたが、痛くなかった。


メアリー・A・グレイヴス

シェイプの話に出てきた人。ボーイッシュな感じで最近筋肉質な体が気になってきた14歳。顔に火傷を負っているため人前に出ることが苦手で無口で女の子ぽくないことを気にしている。寝るときにぬいぐるみ抱いて寝ている。可愛い。


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