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少年は水蒸気の夢を追う  作者: 蟲人
2/8

美味しい話

今日は日曜日。我らがトーマス工房もさすがに休みだ。新聞配達も終わり、散歩がてら自転車を押しながら帰っている。

もくもくと空に吸い込まれている水蒸気を見ながらぼんやりとしていると、


「お、ちょうどいいところに来たな。ちっちゃいの」


ひょろりとした軽薄そうな男が声を掛けてきた。ガラクタ屋ブルーノの店主、モップのブルーノだ。癖毛と体格、こいつの仕事からそう呼ばれている。


「ちっちゃい言うな。俺は忙しいんだ」


こいつに絡むとろくなことがない。こいつはスラム街の連中でさえ近づかないラットンごみ捨て場でごみを漁っては売りさばくゴキブリ野郎だ。ごみを漁る姿はまさにモップ。

しかし、こいつの客は多く、残念なことに僕もその一人だ。

こいつの拾ってくる物の中には魔法が生活の基礎にあった頃の道具や蒸気機関開発初期に多く見られた機械と魔術の融合とも言える作品を見つけてくる。

僕は結構な頻度で買いに来たが偽物ばかりだったた。文句を言ってもはぐらかされてばかり。

ヤバい、思い出しただけで腹が立ってきた。


「おいおい、怖い顔すんなって。お得意様にビックニュースを届けにやって来ただけだよ。」


そう言ってニヤッと笑う。

う、胡散臭い…。

踵を返して逃げようとする僕の耳元で、


「ラナーの懐中時計見つけたって言ったらどうする?」


ピクッ、比喩ではなく自分でも耳が反応したのを感じた。魚が針に掛かったとばかりに、


「いやー、知らないってんなら仕方ない。他を当たるよ」


わざとらしく去ろうとする。

ぐぬぅ…。


「ま、待て!」


悔しい。けど、言うしかない。


「話だけでも聞こうじゃないか」


ゴキブリ野郎は、


「毎度あり」


ムカつく顔でそう言った。ムカつく…。



登場人物


シェイプ・トリニダート

主人公。身長が160無いことは秘密の15歳。手先が器用で機械の修理が得意。度々ブルーノにババを引かされている。


ブルーノ

通称モップのブルーノ。本人はブルーノを名乗っているが、本名かどうかは不明。年齢も不明。怪しさ満点の男だが女性とお年寄りにはめっぽう優しいモジャモジャ頭。



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