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ゲラゲラ笑っていたアキラがすっと笑みを消し去る。
それだけで、ガラリと雰囲気が変わる。悪ガキにしか見えなかった横顔が、年相応の男……いや下手すりゃ一番年上に見える顔になる。
アキラはメンバーに選ばれなかったら、今、ココにいなかったんじゃないかと思う。
出会ったのが俺達ではなく、もっともっと上を目指して生きてる奴らなら、そいつらと同じように生きていた気がする。
ずっと……ずっとそう思っていた。
「最高に上り詰めた時に、終わりたいな」
アキラがそう言い出すまでは。
アキラの一言には当然ながらサトシがキレた。ふざけんなと。
サトシの怒りは理解できるが、俺はそう言った時のアキラの瞳にゾクリとさせられ、言葉を失った。
別にタケルにおもねっているわけでもなく、サトシの心情が理解できないわけでもなく、本気で自身から湧き上がる感情が言わせているのを感じて。
ひやりと腹の底が冷たくなった。
タケルやサトシのように追い詰められているわけでもなく、リョウや俺のように引きずられてるわけでもない。
生きると言うことに、希望どころか絶望という感慨すらない。
根本的に違う。異質なもの。
固まって見守る俺達とは逆に、珍しく頭に血が上ったらしいサトシは怒鳴りまくった。
アキラはサトシが怒鳴り散らすのをじっと聞き、何とか言えと最後に怒鳴った時、アキラは口を開いた。
「そうは言ってもサトシ。俺は生きていくことが辛いわけじゃないけど、いつだって、今だって、生きている気がしない」
そんな返事にさらにキレたらしいサトシがさらに怒鳴ろうと息を吸い込んだ。
「無駄な労力だよ、サトシ。いまさら異文化交流を始めてる時間はないだろ?」
歪んだ口元。
思わず伸びた腕。
伸ばされた腕を拒むことなく、アキラは俺の身体を抱き締め返した。
怒鳴られようが何しようが、淡々とアキラが繰り返す言葉に、サトシが言葉少なに同意を返すようになったのはそれほど時間はかからなかった。
そして、今がその時。
リョウが立ち上がって伸びをしている。
アキラとタケルが顔を見合わせニヤリと笑う。
オヤジ臭い掛け声とともにサトシも立ち上がり歩き始める。
まだ、足元はしっかりしているのに……。
仲間が俺の名前を呼ぶ。
これにて終了。
パソコンの電源は……ま、このままでいっか。
そんじゃま、さよなら……違うか、バイバイ。