テロリスト
ただ僕は、焦っていた。昼下がり、雲が掛かりポツポツと地面を濡らす。
徐々に雨足が強くなり。それを僕は窓から眺めている。ああ、やる事が多いけどやりたくない、この雨音が止んでから始めるか。と僕はベッドに身体を預けた。
明日までにやらなきゃいけない事。そんな事分かってる。頭の中では。横に積まれた漫画に手を取るが、ダメだダメだ。
携帯に手を伸ばし、いつもみているサイトを見つめる。そうだそうだ。早いところやるしか無い。
今日も平和。日本ではしょうもない事でうだうだ言っている。そんな日本。そんなことを考えているとなんだかボーとしてきた。頭が腐ってきそうだ。ドロドロに溶けてしまいたい。どうしてこんなに平和なのに明日の事でこんな不安に駆られてしまうのか。僕は不幸だ。
ゆったりとした静寂の中、雨音が窓を打ち付けている音が僕の気分を苛立たせる。
そうだ、電話を掛けよう。僕は突然そう思い。一覧から無作為に選んだ"下平カレン"に通話を掛けた。
プルプルプルプル
「コウジ君...えっと、どうしたの?」
僕は彼女とあんまりよく話した覚えが無い。記憶にあるのは、中学校の。と思い出そうとしたけど、薄っすらとした記憶しか無い。それ程のものなのだろう。
「いや、ただ誰かと話したかった時間は?」
「うん、大丈夫だよ。そう、えっと私で良かったら」
「有り難う」
「いえいえー、でも久し振りだね。コウジ君と全然話してなかったから、なんか嬉しいです」
声が少しうわずって聞こえる。緊張しているらしい。まあ。確かにほとんど話した事無いやつとなんてなんて話せばいいか分からないと思う。
「そうか、ところで学校は楽しい?」
「なんか流された。うん。みんな優しくて楽しいよ」
「ふーん。明日さ。学校休んだほうがいいよ」
なんとなく言ってみた、特に意味は無い
ただ何となく。
「えっ!?なんで?」
「理由は、特に無いよ」
本当は有る。
「えへへ、なんかコウジ君って変わってるね」
「そう。よく言われるよ」
「でもね。明日は休めないのー。御免ね」
「いやいいよ。特に意味無いし。じゃあもう切るよ。有り難う」
「此方こそ!じゃあまた明日」
通話が切れる。雨音が続く。ゴクリと唾を飲み込む。明日、月曜日。
次の日
僕は学ランに袖を通し、鞄のチェックをし、学校に遅刻していく。
一人外を歩いていると。今日もいたって平和だった。昨日の雨もすっかり止み、アスファルトが水を吸い込み、雨なんて降っていなかった様な。気分にさせる。
程よい風が頬を掠め、少しアスファルトの湿り気を帯びた生臭い香りが微かに香った。
行き交うサラリーマン。平和なのに顔はどれも彼も生気が無い様に思えた。
この国は、そういうの歪な国なのかも知れないな。
そんな事を考えながら歩いていると校門に着いた。
「遅刻だぞー」
脳天気な声がする、俯いた顔を上げると、柿宮先生。がニコニコした顔で立っている。
「すみません」
僕はそのまま通り抜ける。
「こら、まだ話は終わって無いぞー」
知るか。
下駄箱に行くと。金髪のDQNが居た。見るからにDQNだ。
「お前、何年?」
いきなり話し掛けてくる。
「2年ですけど」
ニタァと笑みを浮かべるDQN。
「俺、3年。先輩って事だ、で遅刻した理由は、女と朝までヤッてたから。クハハ」
どうでもよかった。心底。
「そうですか」
「お前は?どうせ見た感じ。陰キャラ臭いしオナニーでもしてたんだろ?」
「そうですね。シコってました」
「ハハハ。お前面白いな。名前は?」
「コウジです」
「ふーん。俺は竜司だ。まあ昼休み屋上来いよ」
「わかりました」
と言って竜司先輩は僕に背を向けて歩いていく。僕は徐ろにカバンを漁って、銃口を先輩の頭に向けて撃った。
パンっと乾いた音がした。しかも運良く誰もいなかった。
ドサっと音と共に先輩は前のめりに倒れた。
僕はそのまま死体を踏み越え通り抜ける。授業中の様だまだ誰も気付いてい無い。
僕は二階に上がり。自分の教室の前に立った。ガラガラと
「遅刻だぞ、コウジー」
皆の視線が僕を刺す。僕は何食わぬ顔で自分の席に着く。机に上には。落書きがされていて気の木目が見え無いぐらいにでっかくでっかく。死ねと書かれている。そうだそうだ。こんな感じ。
僕は虐められている。
教師は一切その事に触れ無い。周囲に目をやるとニヤニヤとした顔で此方を見ている。
僕は窓から空を見る。今日は快晴。
日本は平和です。
僕は急に席を立った。ずかずかと教師のところに来て。
徐ろに銃口を教師に当てる。
「えっ?」
教師の頭の一部が欠け、そこから夥しい量の血を噴射して倒れた。
静まり返る、そして狂騒。
僕は、冷静にカバンからuziを取り出し、立ち上がり悲鳴を上げる生徒達に乱射した。
タッタッタッタ
皆、教室の隅に移動するがどんどん床に倒れて行く。
ガラガラと横から教師が扉を開ける姿が見えた。
撃ち殺す。そして、教室を後にして、廊下に出る。何人もの生徒が僕の姿を見て声を上げた。
撃つ。撃つ。
弾が切れた。カバンの中に入ったダイナマイトに火を点けて、教室に投げ込んで走る。
心臓の鼓動が跳ね上がる様な音と共にガラスが砕け散る音を聞いた。
僕はすぐさま。uziの弾を装填し、走った。
もう、出てくる人間一人ずつ撃った。
身体中に小さな穴を空け血を吹き出し、折り重なって倒れていく。
そして。昨日。電話した相手。下平カレンが廊下で僕と目があった。生徒は皆逃げ惑っている。
下平カレンの周りにいた奴らが僕に攻撃してこようとした勇敢な奴らも銃弾には屈した様だ。
皆、痛みでのたうちまわっていたり、即死の奴らもいる。
「今日は晴れたね」
僕は話し掛けた。
「うん...え?なんで?」
「え?」
「何で。こんな事するの?」
「何でって理由なんてどうでも良いよ」
「目を覚まして。ねえコウジ君!私も罪償うから一緒に警察行こう?」
顔をぐしゃぐしゃにして僕にそういう下平カレン。だけど。そんなのちっとも心に来なかった。
「でも日本は平和で良いよねー。じゃあまた」
僕は下平カレンを無視して。上の階へと向かった。上の階も皆何が起こったかわから無い状態で皆廊下に出たりした。
「緊急放送です。武器を持った男性が校内に入り発砲しているようです。皆さんは教師の指示に従い速やかにグラウンドに避難してください。繰り返します...」
さてさて次は。廊下に出た奴らを片っ端から撃っていく。カチっと音を立てた。ああ。
Uziの弾が切れちゃった。
僕は屋上に向かった。
頭がぐるぐるしている。現実感がしない。カオスだ。目の前の空間が歪んで見えた。真っ暗真っ暗、この先の事なんて......今更だが。僕は取り返しのつかない事をしたと。ジワジワと現実身を帯びて心にのしかかって来た。
屋上に出ると、何人かの生徒が既に居たようだ。僕を見ると近づいて来る。
「何があったの?」
「大丈夫か?血塗れじゃないか」
でも、これ僕がやったんだよ。
「大丈夫です。有り難う御座います。テロみたいなのが起こったようです、皆さんも逃げたほうが良いですよ」
「やばいじゃん、でもここにいたほうが良いんじゃね?」
僕はカバンを開けて、拳銃を取り出し。
「だって僕がテロリストだからぁああああああああ!!!」
バババババ
僕は倒れた人達の上で銃口を口に咥えた。




