005 戦闘・魔術、そして再会
「ふふふ♪さあ!どこからでもかかってきなさい?」
「えっと・・・行きます!」
拒否権無しで決まった母さんとの勝負
母さんの武器は訓練場にあった木刀、すっごい笑顔で威圧しながら隙が無い構え
けれど負ける気はさらさら無い
確実に経験の差が出てくるかもしれない、それでも俺は食らいつく
ここで諦めちゃこの先何も出来ない
「はああああっ!」
俺の武器は木製の棍棒
母さん曰く全部見たいけどまずは棍棒からだそうだ
「ふふふ〜♪なかなか筋が良いわね!4歳でこれなら将来が楽しみね〜」
「はああ!やあ!」
必要最低限に無駄な動きをしない様に心がけながら母さんに向かう
簡単に流され悔しい、頭を使うか
ワザと無駄に大きな動きを取り入れ隙を作る、母さんの目がそこに行った瞬間死角に潜り込み・・・
吹き飛ばされた
「っ!」
「あら〜・・・ごめんなさい?」
「はぁ・・・参りました」
「身体強化無しでここまで動けてるなら凄いわよ!今一瞬腕を強化しちゃったのよね〜」
「でもこれ以上は無意味、きっと僕が先にスタミナ切れする」
「そこは大人と子供の差ね、成長すればおのずと筋力も上がるわよ!
さ、次は方手剣よ!」
「分かった」
まだまだやる気の母さんにうながされ木刀を取り出す
これは日本でお馴染みの日本刀タイプ
この世界の剣はどちらかというと西洋の剣で、斬るより切る感じなんだよな
「はあああああ!」
母さんに向かって走る、もう少しで母さんのいる場所に着きそうな時、母さんが俺の構えを見て構えたのを見て、即座に木刀の持ち方を変える
気分はそうだな、忍者刀ってところだな
母さんが目を見開く、それでも対応してくるから凄い
そのまま横を通りすぎる時に居合抜きの要領で仕掛ける
「まぁっ♪ふふふ〜」
「楽しそうですねっ!」
「楽しいわね〜、鍛えがいがありそうだわ!」
何度も違うフェイクを入れたり攻撃してるけど一向に当たらない
全部止められる、くそっ
「参りました・・・」
「ふふふ♪次は弓ね!子供の腕力だから・・・どれくらい飛ぶ?」
「えっと・・・」
山の中で一応弓矢も練習した
身体強化も無し、フウの補助も無しで練習して大体目測5mって所か?
「やってみないとちょっと分からないけど大体ここからここまで」
「ならそこを最低ラインとしてドンドン下がりましょう」
「うん」
撃っては下がり撃っては下がりを繰り返し、届かなくなったのが大体10m付近
4歳児にしたら上出来かな
実際弓矢は撃てたら便利かな程度の認識で練習してたから他二つよりは練習量が少ない
「4歳児にしてはなかなかの物ね、これからも練習を続けるの?」
「迷ってるけど・・一応は暫く続けようとは思ってる」
「そう、そういえば魔法も使えるのよね?」
「精霊達ならいるよ?」
「出せない状況もあるでしょ?契約精霊達がいない状況でも使えるようにしないと・・・」
ふむ・・・まぁ全属性と契約してるって知れたら何かあるかもしれないしな・・・
<どうする?>
≪そうじゃな・・・そこまで考えて無かったのぉ≫
≪知られちゃまずいのか?≫
≪ただでさえ珍しい自我有精霊と契約していて、しかも全属性・・・
面倒な事になるかもしれないじゃないですか≫
≪なら腕輪の中から僕等が力を送るなんてどう?≫
≪やってみる価値はありますねぇ≫
≪可能性は無限≫
<・・・やってみるか>
≪私達に魔力を送って貰えればこちらの力をユートに送る
後はイメージじゃ、やってみろ≫
精霊達のサポートを受けながら始める
腕輪に魔力を送る、魔力操作は2年間毎日欠かさず繰り返したからお手の物だ
魔力を送る対象はショウ
≪はいよ!≫
腕輪から温かい力が流れてくる、それを手に集める
最後は目の前にバレーボールサイズの火の玉をイメージ、目指すは的
「行け」
手から火の玉が出た、成功だ
ショウがやったよりも時間がちょっとかかるし、コントロールも難しい
まぁ練習しだいで出来るだろう
「母さん、出来た」
「え、ええ!そうね!・・・ユート、魔法の使い方を教えてあげるわね?」
「へ?」
「普通魔法を使うには呪文が必要なのよ・・・」
「なっ?!」
つまり結構ヤバいことしちゃったか?無詠唱とか
「さっきのはファイヤーボールね、あれだと・・・見てて
【火よ、玉と成り敵に向かえ】!・・・ほらね?」
母さんが呪文を唱えると俺がやったと同じ様に火の玉が出て的に当たった
ショウ曰く、ああやって微精霊達に意思を伝えるらしい
基本全属性の微精霊が世界にはどこにでもいるらしいからどこでも全属性の魔法が使える
もちろん微精霊が多い方が使いやすい為、場所によっては威力に差が出るらしいが
まぁとにかく、変な人に目をつけられない様には呪文を唱えてた方が良い、と
ふりだけでもやってた方が良いか
「【火よ、玉と成り敵を滅せよ】・・・【水よ、渦と成り敵を飲み込め!】
こんな感じか」
ちょっと思いついたのを使ってみた、大きさは調整したから被害は無い
的だけをしっかり飲み込んでる
「【水の渦よ、その温もりを捨て氷と化せ!】・・・よし」
「ゆ、ユー君!どうやって水を凍らせたの?!」
「え?温度下げた」
「うん、【土よ、人の形をとりその力を持って氷を砕け!】・・・うん」
「え!土の人間?!」
「え?泥人形だけど・・・」
今俺が作った泥人形が氷を殴って少しずつ砕いてる
ちょっとイメージが甘かったかな・・・?砕く力がちょっと弱い気がするし
いや、力の込めようか?
本当は今も操る事が可能だったりするがまぁ良いだろう
「【土に帰れ、氷よ水となり熱を持ち空気と化せ】」
泥人形を地面に戻り、氷は一度水に戻してから温度をあげて蒸発
じつは火の力の応用でやってるけど表面上は水が勝手に消えた様に見えるだろう
母さんは目を見開いていた、氷属性ってないからかな
今は誰も見て無かったから大丈夫だとは思うけど
けど水を凍らす位結構やると思うんだけど
「天才よ!」
「へ?」
「凄いわユー君!」
「・・・」
天才か・・・前世でも言われたな、自分の努力を終わらせる一言
褒められてるのは分かってるんだけど・・・ちょっと複雑だ
「ラフィ君にも見せましょう!ちょっと呼んでくるわね?!」
母さんは俺の意見も良い分も無く走って行った、一人残された俺は昔の事を思い出していた
○○○
『悠斗君は天才ね~』
『悠斗君は天才なのだから出来て当然ね』
『100点?当たり前じゃない、貴方は天才なのだから』
『どうして出来ないの?!手を抜かないで!!』
手を抜いてなんか無いよ、母さん
俺頑張ってるよ?今回は難しかったんだ!俺もっと努力するから・・・お願いだから嫌わないで
『悠斗君っていつも100点満点でずるい!』
『いつも100点なんてカンニングしてるんだろ?』
『化け物!』
『彼奴は化け物だからな、俺達とは違うんだよ』
俺は努力してるだけだよ、100点以外だってとった事あるよ
化け物?皆と同じ人間なのに?ずるいって君は努力してる?
あの頃はもっと努力して良い子でいれば皆が認めてくれると信じていた
ただ“頑張ったね”って褒めてほしかっただけ
俺は天才じゃない、人より努力してただけなんだ
いつも遊ぶ暇もなく勉強してた、武術は母さん達がやるように言ってたから
体を壊しそうなくらい特訓をした
何度もイメージトレーニングをした
何度も何度も練習した、実力者の技術を見て盗もうと努力した
『化け物!』
『俺の技をコピーしやがった!』
『俺等をみじめにしないでくれ・・・』
結果は今までと同じだった
だから俺は努力を止めた、勉強も適当にするようにした、武術も自主練を失くした
なのに
『手を抜くとか・・・馬鹿にすんなよ!!』
ただ練習量を皆と同じにしただけなのに、やれば化け物やらなかったら手抜き
何処から間違えた?
母さんに少し褒められて調子に乗った時?
学校のテストで100点を取り続けた時?
進められたからって武術まで初めて頑張ってみた時?
全部を失くしたかった
その内、何度も折られたメンタルは強くなった・・・というよりは周りに無関心になった
何事に対してもやる気がなくなった俺にとって毎日は灰色で退屈だった
なら趣味でも作ればと言われるかもしれないが、何かに深く関わる事が怖かった
『貴方名前は?私椎名!宮内椎名!』
『新城悠斗・・・何の用?』
『私と友達になってください!“努力の秀才さん”』
『っ?!・・・・』
『あり?一緒に学生ライフをエンジョイしようじゃないか!』
『宮内は知らないのか?俺の事』
『化け物って呼ばれらたって事?なら気にしないよ?どこをどう見たって努力してとった100点だもんね!
今まで良く頑張ってきました、偉い偉い』
笑顔で俺の頭を撫でる宮内の言葉は俺の胸に響いた
今まで灰色一色の世界に色がついた気がした・・・
それからというもの時たま椎名は俺の事を努力君と呼んだ
他人から見るとからかいの言葉が俺にとって凄く嬉しかった
○○○
「君凄いね~」
一人昔を思い出しながらボーっとしていると女の子の声がした
振り向くと腰までの緑の髪に黄緑の目の女の子がいた
「・・・君も努力君だ」
「っ!?」
「おっと、こりゃ失礼!私はシーナ・ソフィアント!よろしく!」
「し、椎名?宮内椎名か?」
「え?何でその名前を・・・悠斗?新城悠斗?!」
「椎名!」
懐かしく、一番会いたかった女の子
この世界に来て唯一の未練
俺は勢いよく椎名に抱き着いた
「人が来たら説明できないから離れてね~」
「おう・・・」
「ふふ♪どうしてここにいるかって顔ね?私ね~、待ち合わせに向かう途中事故に巻き込まれちゃって…、どうやら神様の失敗だったらしいし、悠斗もどこかに転生しちゃってるという話だったので私の知る悠斗がいる世界にって願ったんだ!」
「マジか・・・」
「マジだよ!これからよろしく!シーナって呼んでね?」
「ユートって呼んでくれ、ギルドマスターの養子になった」
椎名ちゃんは最初らへんに出てきたオタク女子です
神さまのテンプレに会ったのですが願いが悠斗のいる世界・・・両想い?