004 母と父
引き取られて初日です
「た、ただいま、帰りました」
「お帰り〜!大丈夫だった?何もなかった?怪我してない?」
「は、はい」
「おうおう、怪我は無いぞ、ただ凄い我が儘な神の子(笑)にあっただけだ」
「あら〜・・・とりあえず入りましょうか、後でユー君の部屋に案内するからね」
「ユー君?」
「そ、だって息子ですもの!」
「諦めろ」
凄い勢いで喋るシr母さんに戸惑ってると父さんが肩に手を置いてきた
その顔はこっちを憐れんでいた・・・はぁ
「か、母、さん?」
「あ!ふふふ♪ごめんなさいね〜」
「か、母さんって・・・」
「天然だな」
「顔、緩んでる、よ」
「お、悪い悪い、シルクはいつも可愛いからな〜」
「あらあらラフィ君!褒めたって何も出ないよ?」
2人の世界に入り出したな・・・精霊達と話でもして暇をつぶすか、ここまだ玄関だし
≪ふふっ、仲の良いご夫婦ですね≫
<甘い雰囲気が二人だけの時にしてほしいがな>
≪優しそうな人達で良かったね!僕ユートが幸せなら良いよ!≫
≪ぼ、僕もそう思います!≫
≪それにしても二人とも美形じゃの〜≫
≪ユートも将来は絶対イケメンだと思うんだが≫
≪将来有望≫
<お前等・・・>
俺がイケメンとか無いと思うんだが・・・だいたい前世とほとんど顔変わってないし
変わったと言えば目の色位か?
「あ、シルク、ユートを部屋に」
「あっ・・・ごめんなさい、行きましょう?」
「うん」
やっと気づいてくれたみたいで俺は母さんに連れられて家の中を進んでいく
家の中はわりと普通だ、3階建ての一軒家
玄関からすぐの所にある階段を上ると部屋がいくつかあった
「ここが私とラフィ君の寝室、向かいのその部屋がユー君の部屋よ?
家具がまだ揃ってないからお布団で寝る事になるけど・・・」
「大丈夫、向こう、じゃ、ずっと毛布、で、寝てた、から」
「・・・ユー君は私達に挟まれて寝なさい!キングサイズだから大丈夫よ!」
「それもそうだな、よしユート、来い」
「え、あ、えっと」
挟まれて寝るって、え?
「まぁその前に晩飯だな」
「そうね〜」
「手伝う」
「あら〜?ありがとう!」
ほわほわしてるな〜・・・逆に心配になってくるな
母さんに連れられリビングからキッチンに入る
この世界の台所を初めて見たけど、割と前世の少し古いタイプに似ている
魔力を感じるから大半が魔道具かな
魔道具の核である魔石、価値はピンからキリまであるけど、だいたいは魔物から出てくる
だから俺が狩った奴等からも出たから売った、冒険者の小遣い稼ぎだな
「あ、母さん、これ・・・」
「あら〜、立派な野菜ね〜!どうしたの?」
「向こう、で栽培、してたの、大丈夫なの、は全部、持ってきたから・・・」
「ふふ、今日のメニューが少し増えたわね!」
野菜だけじゃなくて、肉と魚、米と調味料も入ってるが今は出さなくても良いだろ
袋の中は時間経過しないし
「出来たわよ〜」
「今日もうまそうだ」
「ユー君の歓迎の為に少し豪華にしてみました!」
「あ、ありがとう、ございます」
「さっきからちょくちょく敬語が混ざるけど親子なんだから無し!」
「そうだぞ?」
「うん・・・」
まぁ敬語はあまり使い慣れて無いからそれはありがたいな
テーブルの上には沢山の料理が乗っていてー確かに豪華だー普通に美味しそう
「いただきます」
「召し上がれ~」
ご飯を食べた後父さんに風呂に入れられ、母さんが今日買って来た寝間着を着た
今俺がいるのは俺の部屋で、部屋の広さは小屋と同じくらい
暫く布団でもふもふする
前世の布団も相当なもふもふだったはずなんだが
日本で感じた感覚とかが思い出せない、完璧こっちの人間になってるらしい
ツギハギじゃない綺麗な服
冷たい川の水じゃない温かいお風呂
ごわごわの毛布じゃないふかふかの布団
全部新鮮だ
コンコン「hガチャッ
「ユー君、一緒に寝ましょーね!」
「えっと・・・・うわぁ!?」
「レッツゴー!」
寝間着を来て寝る準備万端の母さんに引きずられて向かいの寝室へ
体が浮いたと思ったらベッドにバウンドした
「うえ」
「よっしゃ来たな!寝るぞ~」
「・・・うん」
「お休みなさ~い、ぎゅー」
母さんに抱きしめられ、父さんに抱きしめられ・・・ちょっと苦しい
けれどほんのり温かいのは心地よく、すぐ俺の意識は夢の中に沈んでいった・・・
「可愛い寝顔ね♪」
「今までベッドで寝た事なんて無かったんだろうな」
「・・・あらぁ?」
「どうかしたか?」
「みてみて、ユー君私の服を握ってる」
「こっちも袖が握られてるな」
「やっぱり甘えたい年頃なのね・・・無意識みたいだけど」
「これからは俺等が立派な奴に育ててやろう」
「ええ♪」
○○○
「ん・・・あふぅ」
朝はいつも早い、けどどうやら寝過ごしたらしい
「シズク、現在の時刻は?」
『だいたい7時半ってところです』
「・・・2時間半の寝坊だ」
『今日ぐらいは良いんじゃないか?新しい家だしな』
「・・・はぁ、とりあえず着替えるぞ」
自分からしたらちょっと高いベッドから下りて部屋を出る
向かいの自分の部屋のドアにはネームプレートらしき物がかかっていた
読めない、字など山の中では目にしなかったからだ
これは要勉強だな、たぶん“ユート”って書いてるんだろう・・・多分
とりあえず部屋の中に入ると昨日からもうすでにあった箪笥を空ける
中には数枚の服があったから適当にコーディネート
黒の短パンに真っ白なシャツ、ズボンには金の刺繍、シャツには青い模様が入っている
靴下も履いて部屋を出る、腰にはウエストポーチ、中には水色のパーカーと帽子が入っている
「おはようございます」
「おはよう♪やっぱり似合うわね~、私の目に狂いはなかったわ!」
「だな、カッコいいぞ?」
「・・・ありがと」
褒められるのはまだ慣れない、蔑まれるのもまだ慣れてないみたいだから俺は未熟だ
「朝ご飯にしましょうね」
「「いただきます」」
朝ご飯も非常に美味しかったです
その後は女性の買い物が長いと言われる理由を体験することになるのだが、この時は知らなかった
「母さん・・・僕疲れたよ」
「もうちょっと!これも似合うわ~!」
「服なら母さんが数着買ってくれたよね?!どこ買う必要が?!」
「数着って・・・ズボンはそれだけだしパーカーは2着、中のシャツは普通のが2着だけじゃない!」
「十分だと思うのだけど・・・」
実際今まではツギハギの服1枚を洗って乾燥させてで着てたし
そんなに服っているか?
「む~・・・これとこれとこれとこれとこれとこれとこれこれこれね!」
「か、母さん?!」
母さんは次々と服を買っていく、流石にその量にはドン引きする
「母さん!僕は男!女の子の様にオシャレをする気は無い!
動きやすさ重視で頼むよ!」
「・・・分かった」
「はぁ」
最近言動が体に引っ張られてる気がする
実際は結構冷たいと言うか、前世じゃクールとまで言われた位なんだが・・・
大分口調が柔らかくなった気がする
たぶん親という存在といるため気を張らなくて良いからか
ちなみに頼み込んだのが効いたのか動きやすさ重視で買ってくれた、危機一髪だった
「次は家具ね!ユー君の好みに合わせるけどこんなのが良い!って無い?」
「シンプルな感じが良いかな、装飾とかは全くいらない
色は・・・母さんが決めて良いよ、派手すぎじゃ無ければ良いから」
「分かったわ!」
その後は家具屋を回って母さんが納得する物を予約して行った
結構シンプルな感じだったし俺も満足だ
「次は・・・そうねぇ」
「ギルドに行って来て良い?仮登録してるんだけど」
「そうなの?なら私も久々に顔を見せに行きますか」
「母さんは冒険者なの?」
「ええ、一応は引退した事になってるわ、Aランク冒険者なの」
「す、凄い」
「ふふ~、けどラフィ君なんかSランクよ~?」
どうやら俺は人外じみた人達の子供になったようだ・・・
「着いたわね!」
「うん、こんにちわー」
「あ、ユートk・・・シルクさん?!」
受付のカウンターにいたサクリさんに声をかけると昨日と同じ様に笑顔でこっちを向いたんだが・・・
母さんを見たとたん凍りついた
それと同時に周りの空気も凍りつき・・・歓声があがった
「つ~~~?!」
五感が良いのか頭が割れるみたいに痛い
低い男声が内臓に響くし女の人の黄色い声は耳が痛い、うわ~
「あらあらあら~・・・黙りなさいな☆」
俺は耳を塞いでから目を閉じて蹲ったから分からなかったけど母さんが何かしたみたいだ
周りの人の顔が真っ青になってるけど静かになったから気にしない!
「母さん?」
「大丈夫?もう痛く無い?」
「ちょっと頭がガンガンするけど大丈夫だよ、ありがとう」
「ううん、お母さんのせいでごめんね?まさかあそこまで騒ぐとは・・・」
「母さんがそれだけ有名人って事だね」
「そう?ふふふ♪」
それにきっとしばらく来てなかったんだろうな、だからあそこまで・・・もう体験したくないけど
「凄い声がしたんだがって、シルクとユートか・・・どうした?」
「僕、仮登録したんだけど、仕事する?」
「あ~、そうだな・・・仮登録の仕事は大体はFランクのする雑用なんだが大人同伴だ
それはシルクがやるから良いとして、やるか?」
「うん!」
このままだと毎日暇だし
小屋にいた頃は鍛練と畑仕事と食糧調達とか、結構やる事あったからな・・・
「そういえばユー君はどんな武器を持ってるの?」
「武器?」
「ええ、冒険者になりたいらしいし、ラフィ君いわく結構鍛えてるんでしょ?」
「今のところは棍棒と方手剣と弓・・・かな、練習さえすればたぶん他も出来る」
「凄いわ~、後でユー君の武器を見せてくれない?」
「今でも良い」
実はウェストポーチには武器を全種入れてる巾着が入ってる
いつなんどき何が起こるか分からないから
けど巾着袋を出してから出すってのは凄く面倒だって思ったから俺とソラは二人で魔法を開発した
中にある物を一瞬で出し入れできるようにした
初めての物はちゃんと入れないと鳴らないけど、一度入れると大丈夫
出てくる座標は俺の掌の上、ちゃんと安全な形で出てくる様にしている
まぁ少~しだけだけど魔力を使うから普段は普通に出す
ちなみにこの巾着やらウエストポーチやらはリュックサックを改造した
リュックって意外に面倒なんだよな、背中にしょったり降ろしたり
リュックは巾着袋に、革でポーチ本体とベルトを作った、意外に便利
「あ、なら俺の部屋に来い」
「はーい♪行きましょ」
「うん」
父さんに連れられてギルドマスターの部屋に入る
父さんは奥の机の前に座る、机には紙の束が少し乗っている
ギルドマスターって大変なんだな
「さあ出して?」
「うん」
掌に木で出来た棍棒と刀と弓を出す
「訓練用」
次に木に両端が鉄の棍棒と刃の付いた刀、弓の矢を出した
「戦闘用」
「ほぉ・・・鉄はどうしたんだ?」
「砂鉄から作った」
「砂鉄だと・・?どうやって」
「ダイチの土の術で集めて、ショウの火の術で溶かす
レンに形を整えてもらってから、ダイチにそこが平たい石を出してもらって叩く
最後にシズクの水でいっきに冷やした」
「なるほど・・・良く出来てるな」
「鉄だけだから手入れしないと錆びるけど?」
「武器は鉄が普通だろ?」
「そうなの?」
「ああ」
この世界は技術が遅れてる・・・いや、地球が進み過ぎてたのか?
まぁ今の所は砂鉄で作った急ごしらえだけどその内ちゃんとしたのを作ろうと思う
前世で刃物の素材とか調べ解いて良かった
暇つぶしにいろんな雑学に手を出してたからな・・・
「ふむふむ、棍棒に方手剣に弓か・・・ユー君格闘術は?」
「一応やってる」
「ちょっと訓練場行きましょうか!ユー君の訓練を間近で見たいわ!」
「え、母さん?」
「諦めろ、シルクは戦闘狂だ」
「マジか・・・」
ほわほわした人が戦闘狂って・・・どんなギャップだよ!
ギルマス、ラフィードさんは頼れる兄貴分な人です
そんな奥さんは暴走癖のあるほんわか戦闘狂
きっと彼女を止めれるのはラフィードのみ