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黒の子ユート  作者: 榎谷美湖
幼少期
3/5

003 初ギルド、村との決別

今日の空は雲一つなくとても綺麗な青が広がっている

空は好きだ

眺めていてまったく飽きないから


「良い天気だ・・・」

『こんな日は草木が喜ぶのぉ』

『水もキラキラ光ります』

『空気も綺麗だよね〜』

「まったくだ」

『僕は光合成が出来てうれしいです!』


ほのぼのしながら歩く、グラは性質上昼は苦手なはずなのだがほわ〜っとしてる

良いのかそれで、闇の精霊だろうが

逆にメイは光だから暗闇が苦手だったりするはずなのだが・・・

俺の精霊達は規格外だな

メイとグラは姉弟みたいな関係だし


『ぐら〜、日差しの下は気持ちいいですよ〜』

『ん、メイみたい』

『ふふふ〜、嬉しい事言ってくれますね〜』


ラブラブ(姉弟愛)だな


「そういえば皆はちゃんと姿を消せるのか?」

『自分で隠す事は出来ませんが隠れる事は出来ます

契約時にユートの魔力で作られた精霊の腕輪がありますでしょう?』

「ああ」


精霊の腕、精霊と契約を結んだ術者の魔力によって作られる

契約する精霊とのつながりを示すらしい

色はとても綺麗な銀色だ

これは契約した精霊によって色が違うらしい


『言い忘れてましたが、それは私達の家でもあるのですよ

その中だと自然とユートの魔力が流れ込んできますので、いわゆる回復場所ですね

中に入りさえすれば周りの人間には見えません』

「なるほど、回復か」

『それにどんだけ離れていてもその腕輪を介してユートの所にこれます』

「お〜」


便利だな、この腕輪


○○○


「ここか?町は」

『そうだよ〜、ここが一番近かった』

「よし、入るか、皆は腕輪に入ってくれ」

『はーい!』


皆が腕輪に触れるとシュンッって腕輪に入って行った


≪聞こえる〜?≫

<ああ、大丈夫だ>

≪この中にいる時はこんな感じですので≫

<了解>


中にいる皆とは念話の様な感じで会話できるし問題ない

俺は門の所にある列にならんだ、・・・やっぱり身分証明書はいるのだろうか・・・

俺の今の恰好はフードつきの上着を着て下は短パンスニーカーだ

顔は見せないと駄目だろうし・・・

忌子ってここでも忌み嫌われるのかな


「次の人〜、はい身分証明書はあるかい?」

「無い、です」

「そうか・・・とりあえず君はそこの部屋に行ってくれるかな

 作らないといけないからね」

「はい」


やっぱ今までろくに人と話して無かったからかコミュ障が・・・


とにかく、門番のお兄さんに言われて俺は部屋に向かう

部屋の中は机と椅子しか主な家具は無く殺風景だった

椅子に座りながらボーっとしていたが暇で暇で・・・・


<暇なんだが・・・>

≪我慢ですよぉ、が・ま・ん!≫

≪身分証明書ってお金とかいるのかな〜≫

≪どうでしょう・・・その場合ユートは無一文ですし≫

≪とりあえずは待つだけじゃな・・・≫


「はぁ・・・」

「すまない!待たせたね」

「いえ、大丈夫、です」

「とりあえず身分証明書の発行を行うよ、とりあえず顔を見せてくれる?

一応見ないといけないから」

「っ、はい」


やはり駄目かと落胆しながらフードをとる

お兄さんは目を見開いたがすぐに書類に目を向けた、あれ?


「お兄さん、は、変に、思わない、の?」

「どうしてだい?」

「お、僕を、村の、人、達は、悪魔、の子って、呼びます、今も、一人、で暮らして、ますし」

「君、もしかしてラブラ村の出身者か?」

「あそこ、ラブラ村って、いうん、ですか?」

「話を聞いてる限りだとね、あそこは特に宗教に煩い村なんだ、だからこの街ではそんな事無いよ

確かに中にはそういう人もいるけど少数だから気にすること無い

君は字を書けるかい?」

「い、いえ・・・」

「ならいくつか質問していくから答えてね」

「はい!」


嬉しかった

流石に村での扱いは辛かったようで、全然傷ついてなかったはずなんだが・・・凄い嬉しい


「き、君?!どうしたんだい?」

「え、なん、ですか?」

「なんですかって・・・泣いてるじゃないか」

「え、あ、あれ、どうして、止まら、ない?」

「・・・これからは大丈夫だよ」

「ヒック、グスッ、はいっ」



ーー門番side


今日も俺は門番として町に来る人達の確認をしていた

暫くしてきたのはフードを深くかぶった少年

見た感じ10歳にも満たないな・・・4,5歳かな?


「次の人〜、はい身分証明書はあるかい?」

「無い、です」

「そうか・・・とりあえず君はそこの部屋に行ってくれるかな

作らないといけないからね」

「はい」


しっかりした応答が出来るらしく、少年は俺のいった通りに部屋に入って行った

その姿にどこか怯えた感じがして、なるべく早く行こうと思いすぐに他の門番兵に声をかける


「さっき証明書をもってない子がいたから行ってくる、暫く頼む」

「了解、どんな奴だ?」

「たぶん4,5歳の子供、けどかなり大人びていて怯えてた」

「怯えてる?」

「顔をフードで隠してるのに理由がありそうだけど、おっと、もう行くわ」

「お〜」


結構な時間がたってる事に気づき急いで部屋に向かう

部屋の中ではフードを被ったままの少年がゆらゆらと体を揺らして暇そうにしていた


「すまない!待たせたね」

「いえ、大丈夫、です」

「とりあえず身分証明書の発行を行うよ、とりあえず顔を見せてくれる?

一応見ないといけないから」

「っ、はい」


一応顔を見ないといけないルールだから少年に言うと、震える声でフードをとった

そこから現れたのは真っ黒な髪、目は金色で黒猫の様だ

だけどきっとこの黒髪が原因なんだろう

もう廃れた宗教の中に黒髪の者を悪魔の子と呼んで蔑んで処分する宗教があった

今はもうそんな危ない宗教は無い、けれど世界の小さな集落などでは残ってるはず

きっとこの子はその集落で生まれたのだろう


「お兄さん、は、変に、思わない、の?」


少年は酷く怯えた表情で聞いてきた、きっと事情を知らないんだろう


「どうしてだい?」

「お、僕を、村の、人、達は、悪魔、の子って、呼びます、今も、一人で、暮らして、ますし」


こんな子供が一人暮らしか・・・


「君、やっぱりラブラ村の出身者か?」

「あそこ、ラブラ、村って、いうん、ですか?」

「君の話を聞いた限りじゃね、あそこは特に宗教に煩い村なんだ、だからこの街ではそんな事無いよ

確かに中にはそういう人もいるけど少数だから気にすること無い

君は字を書けるかい?」

「い、いえ・・・」

「ならいくつか質問していくから答えてね」

「はい!」


嬉しそうに笑った少年を確認して書類に目を向ける

いざ質問をしようと思って前を向くと少年は泣いていた

子供特有の大きな目からはボロボロと涙がこぼれている

本人はそれに気づいていないらしい


「き、君?!どうしたんだい?」

「え、なん、ですか?」

「なんですかって・・・泣いてるじゃないか」

「え、あ、あれ、どうして、止まら、ない?」

「・・・これからは大丈夫だよ」

「ヒック、グスッ、はいっ」


抱きしめると大泣きしながら返事した少年を見て、俺はこの子の味方でいようと誓った



ーーユートside


「よし、発行出来たよ

 ようこそアルバーナへ!ユート君、歓迎するよ!」

「はいっ」


優しい門番のお兄さんは警備兵のラルクさん

ラルクさん曰く、素材はギルドで売れるらしい、売るだけなら年齢制限も無いんだそうだ

今持っている素材は

・ラビドリルの角

・ネロウルフの牙と皮

・ランドベアーの皮

ラルクさんに相場も聞いたから安く買い取られることも無い筈だ

最初の方の皮とかはちょっと状態が悪いから安いかもだけどまぁいいだろう

それと一緒にお金の価値も教えてもらった

あるのは鉄貨・銅貨・銀貨・金貨・白金貨

鉄貨が100枚で銅貨、銅貨が100枚で銀貨、銀貨が100枚で金貨、金貨が100枚で白金貨らしい

つまり鉄が1円玉、銅が100円玉、銀が1万円札、金が100万円、白金貨は1億の価値があるって事みたいだ

計算が大変だな


○○○


「ここか・・・」

≪ドキドキするね!≫

「・・・入るか」


中には武器をもった人たちがうろうろしていて、奥は酒場になっているらしい

入口の近くにはカウンターがあるからあそこで素材を売れる様だ

大人用だから背伸びしてギリギリの高さだ

カウンターにはほんわかした雰囲気のお姉さん、頭には犬耳が見える

獣人を見たのは初めてだな・・・


「す、すみません」


返事は無い、周りが騒がしいからな、もっと声をはった方が良いか

息を吸って・・・


「すみません!」

「はい?あらあら、可愛いお客さんね〜!」

「素材って、売れ、ますか?」

「ええ、売れるわよ、こっちに来て?」

「はい」


お姉さんに連れられて違うカウンターに行く

他の所より広めだな


「ここに全部出してね〜」

「はい」


リュックに手を入れて、袋を取り出す、これは素材専用袋だ

他にも食材専用と道具専用があるけど今はいいだろ


「これと・・・これ、後これで・・・・全部です」

「結構な量なのね〜、お父さんのお使い?」

「いえ、違い、ます」

「ならお母さん?」

「いえ、自分の、です」

「・・・・これを狩ったのは誰?」

「僕、です」


その言葉に一瞬ギルド全体が静寂に包まれた

なんだ?何がおこった?

大人たちは俺をじろじろ見てくる、気持ち悪い視線だ、怖い

今の俺はまたフードを被ってる、嫌悪の視線は村で慣れてる、はずなんだが・・・まだまだだったか



ーー受付嬢side


「どうし、たんですか?」


フードの男の子は首を傾げてる

こんなに幼い子がこれだけの魔物を狩ったなんて・・・


「えっと・・・僕、お名前は?」

「ユート」

「どこから来たの?この街の子じゃなわよね?」

「ラブラ村、です」

「そう、親御さんは?」

「一人・・・です」

「っ?!・・・僕、フードとってくれない?」


そう聞くと途端に返事が来なくなった


「・・・取らなきゃ、ダメ、です?」

「一応、ね?」

「ん・・・分かっ、た、何も、言わない、で」


ユート君はゆっくりフードを取る、そこから現れたのは黒い髪

周りの冒険者たちの間にも動揺がはしる

黒髪は昔あった宗教の生き残りの間では悪魔の子として忌み嫌われている

このこもその悪意にさらされ続けてきたのかしら・・・


「あら、可愛らしい、貴方が一人で来た理由も解ったわ

早速素材を買い取りましょう」

「う、うん」

「ちょっと待ってね〜」


ユート君が持ってきた素材に目を通す

いくつか状態が悪いのもあるけどそれ以外は綺麗なまま

珍しい物もあるから結構な値段になるわね


「そうねぇ・・・これなら、銀貨5枚かな?」

「結構、高いです、ね」

「状態も良いし数も多い、珍しい薬草も混ざってたからかしらね

はい、銀貨一枚」

「はい、ありがとう、ございました」

「あ、ちょっと待って!」

「はい?」


この子になら適用されるわね


「ギルドに仮登録してみない?」



ーーユートside


「仮、登録?」

「そう、親がいなかったり何らかの事情がある子共は仮登録出来るの

といっても子供だし仮だしって事でほとんどギルドの手伝いとか町での手伝いとかの雑用だけど

お小遣い稼ぎに位にはなるわよ?」

「やり、ます!」


そんな制度があるならありがたい!

年齢は下限が10歳だったはずだからまだ6年あるけどこれなら地道に働けばそれなりに貯まるだろう


「なら書類に・・・字は書けるかしら?」

「うっ・・・ごめんなさい」

「大丈夫よ〜?私が代わりに書いてあげるわね?

まず名前はユート君

住所はどうする?仮だといるのよ〜」

「基本、は、ラブラ村、のはずれ、にある小屋に、一人で、暮らして、ます。山、の麓、なんで、村、には入らなく、ても良い、ですよ、前、には畑、があり、ますから、もう村、人は来ま、せんし」


そう、もう来ない

3歳頃から畑を初めてしばらくすると食糧を持ってくる村人も来なくなった


「ただ、10歳、になったら、小屋、を出るんで・・・殺さ、れますし」

「殺される?!」

「だって、悪魔の子、って言われて、ますから・・・本当、は生まれた時、に処分される予定、だったんですよ

ただ、生まれた、ばかりに殺す、と、祟りが、ふり、かかるとか」

「・・・ちょっとギルドマスターの所に行くわよ!」

「へ?ちょっ待!?」


お姉さんは凄い力が強く、されるがままに引きずられカウンターの奥へ

抗えなかった・・・まぁ身体強化はまったく使ってないんだが

腕輪の中で精霊達が笑ってやがる・・・!


「ラフィードさん!」

「あ?サクリか、どうかしたか?」

「今日新しく仮登録する子供がいるんですけど・・・」

「・・・それで?」

「そのこラブラ村出身の黒の子なんです」

「何?・・・そうか、そこにいるのか?」

「はい、ユート君、ギルドマスターもあなたを嫌ったりしないよ」

「・・・どうも」


どうやらこっちの世界に来て思った以上に人見知りになったらしい・・・

本当に人怖い


「お前がユートか?俺はギルドマスターのラフィードだ」

「ゆ、ユート、です」

「・・・確かにお前の髪は黒い」

「っ」

「だけどな、同じ人間なんだ。俺はお前を嫌いはしない」

「・・・ここの、人、は、優しい、ですね」


いくら廃れた宗教上の事だからって、世の中にはラブラ村以外にも信者がいるはず

それなのに俺みたいなのといたらそいつらに何言われるか・・・

悪魔の子って呼ばれるくらいだし何かあるかもしれないじゃんか


「子供が難しい事考えてんな!」

「うわっ」


ラフィードさんが力強く俺の頭を撫でる、ちょっといたい

ちょっと強面だけど整った顔のラフィードさんはニカッと笑う


「素直に甘えとけ!」

「・・・はい」


久しぶりに感じた人の温もりは暖かかった


「で、だ・・・ユートの今の状況は?」

「10歳になったら村人に処分されるらしいですよ」

「あ゛?処分だ〜?!・・・よし、ユート、俺の息子になるか!」

「へ?」


息子?つまり養子って事?簡単にそんな事決めて良いのか?


「嫁さんも喜ぶぜ?」

「えっと、迷惑、じゃ「だから子供は素直に甘えろ」うっ・・・よろしく、お願い、します」

「おうよ!夕方には帰るからよ、仕事ひと段落するまでの時間はどうする?

ここで待ってるか?」

「・・・訓練場、とか、ありますか?」

「おう、あるけど・・どうした?」

「訓練、しとき、ます」

「そうか、そこのお姉さんに連れてってもらえ

後敬語は無しだ、俺は親父になるんだからな~、もちろん正式な場とかだと敬語は使わないとならないが」

「ん」

「こっちだよ〜」



ーーギルドマスターside


「ユートか・・・」


受付嬢のサクリが連れてきた黒い髪の子供

こっちをじっと見つめる金の目は力強かったが、人見知りが激しいらしい

まぁ生まれてから親にさえ見捨てられたらああなるか・・・

黒い髪に金色の目、こっちを警戒した様子は黒猫を連想させる

なかなか将来有望の顔立ちだったな・・・ありゃあシルクが喜ぶな!


「よし、終わった」


確か訓練場にいってるんだったな、こっそり行くか!

部屋を出て訓練場に向かう

ここは新人とかがすぐに死なない様にちょっと慢心を折ったりランクアップ試験したりする場所だ

普段から割と冒険者たちに使用されている


「マジか」


訓練場では小さな人だかりができていた、気配を消して人混みを抜ける

そこで見た光景に俺は会いた口が塞がらなくなった

中ではユートが木の剣を振っていたんだが・・・隙が無い

子供にしてはってわけじゃない、そこら辺の大人も勝てないレベルだ


「ふぅ・・・「よぅ」あ、ラフィード、さん」

「なかなかやるな」

「ずっと、やってた、から・・・」

「そうか、よし!俺んち行くぞ?」

「ん」


○○○


「帰ったぞー」

「おかえりなさい、あら?その子は?」

「こいつはユート、ラブラ出身の黒の子だ」

「あらあらあらあらあらあら「へ?」ぎゅー!」


シルクはユートを思いっきり抱きしめている

おぅおう、戸惑ってるな〜

人とのスキンシップに慣れてないみたいだからな、反応は見てて面白いがそろそろ助けるか


「シルク、そろそろやめてやれ」

「はーい、ユート君!シルクです。なんとなく分かったわ、ママと呼びなさい!」

「母、さん?」

「ぶ〜・・・まぁいいわ!今日から住むのよね?」

「えっと、向こう、にまだ荷物、があるから・・・取りに」

「お、なら俺と一緒にいくか」

「?・・・仕事は?」

「ちょっと位大丈夫だ」

「なら良い」


よし、行くか〜

簡単に準備して家を出る、向かうはユートの家、いや・・・これから元家になるんだ

ユートはまたフードを被った、一応親にも挨拶しとくか?


「あ」

「どうした?」

「皆がラ「父さんな」と、父さん、に会いたい、って」

「皆?」


皆って誰の事だ?って聞こうとしたらユートの腕輪からたくさんの光が飛び出てきた


「な?!精霊だと!?」

『初めまして、私達はユートの契約精霊、水精霊のシズクです』

『火精霊のショウだ』

『雷精霊のライトだよ♪』

『風精霊のフウだよ〜』

『く、草精霊のソウです!』

『土精霊のダイチじゃ』

『鍛冶精霊のレンだ』

『空間精霊のソラだ』


まさか前属性の精霊と契約してるなんて・・・

規格外だな


「俺はギルドマスターのラフィードだ、よろしく、これからはユートの父ちゃんだ!」

『はい、ユートの事を頼みますね?』

「ああ、可愛がってやるよ」


なかなか良い性格してやがるな、この水精霊

俺は物理専門だがそんな俺でも感じる程の魔力だ、相当なものなんだろうな

顔も実力も将来有望ってわけか


「着いた」

「お、ここか」


精霊達と話しながら歩きついたのは小さな古い小屋(ここまで身体強化して走り抜けた)

小屋の前にはそれなりに野菜がついている畑がある

本当に一人で住んでたんだな・・・


「準備、してくる、と、父さん、はどう、する?」

「そうだな〜・・・ちょっと挨拶に行って来るな」

「挨拶?」

「そう、お前を虐げてきた馬k・・・村人に」

「・・・分かった、行って、らっしゃい」

「おう」


小屋に入って行くユートを背に村に向かう

ラブラ村は基本的に外の者を受け入れない、だからこそ時代遅れの宗教なんてものが残ってる

いまだに黒を悪、白を神の色だと言って他の意見を全否定だ

迷惑をかけないなら関係無いから別に良いのだが、ユートはすでに俺の保護下に入った

なら守るだけだろ?


「すいませーん、ここにユート君の親御さんはいませんか~!」

「ユート?あぁ・・あの忌まわしき悪魔の子か、そいつが貴方に何か迷惑を?」

「いえ、彼を俺の息子にしますのでご挨拶に」

「は?息子?・・・悪魔の子を?あんた正気か?」

「正気ですが?それに悪魔の子や神の子やら言ってるのはもう一部ですよ

貴方達の崇拝する宗教は世間ではもう存在しませんし」

「なっ!我らが神を愚弄するか?!」

「いえいえ、信仰は自由ですから、ただ自分はユート君を引き取るだけ

今後一切彼には何もしないでいただきたい」

「あ、あの子供は悪魔の子だ!10歳になるまでに処分しなくてはいけないのだ!」

「・・・はぁ、聞く耳をもたねぇか・・・だがもうユートを養子にする準備は整っている

手を出したら俺が敵になるぞ、俺の名はラフィード・アンペル!

ギルドマスターだ!」


ギルドマスターというのはそれ相応の実力を持たないとなれない

それとマスターになったと同時に代々マスターに受け継がれる家名を貰う

それはマスターである時のみ有効な権力だ

主に貴族の坊ちゃんが冒険者になった時に権力で何かしようとした時抑え込む為にある

その名の力は、町のトップである領主の次に偉い

領主の地位は大体王族の次位だから世界的には第3位って所だな

他の町の領主もマスターもそんな感じだ

その名は誰かを守る、犯罪を未然に防ぐ、などでしか使えない

何らかの犯罪を犯した途端に名前自身が逃げる、そして次のギルドマスターに勝手につく

つまり意志ある家名、しくみは全く分からないがこういう時便利だ

アンペルも今回の事には賛成なのか逃げずにいてくれる


「ぎ、ギルドマスターが何故?!」

「10歳にも満たない子供が自分で俺の所までこれたんだ、助けるしかねぇだろ?

刑法第37条、黒い髪の子供を悪魔の子と称し処分する事を禁ずる

つまりあんた等がユートに手を出した途端、あんた等は犯罪者って事だな」

「なっ・・・・分かりました、我らは手を出しません、どうぞ連れて行きなさい」

「最初からそのつもりだけどな」

「あれ~?おじさんだ~れ?」

「あ?この子は」

「おお!ユーナ様!どうなされたのですかな?」

「えっとね~、知らない人がいたから見に来たの!」

「そうですかそうですか、ギルドマスター殿、この方が神の子ユーナ様だ

神々しいだろう?」

「・・・」


真っ白な髪の女の子

村人と比べても豪華な服を着せられている、ユートと何となく似てるから双子か?

ユートはボロ小屋で一人暮らし、こっちはお姫様ってか

ユートはこの子の事をどう思ってるんだろうか

憎しみ・・・・無いか

目の前でキャッキャッとはしゃいでいる少女はとても無邪気でユートとは真逆に見えた

あの子には子供特有の無邪気さが全く無い

環境上しかたないが・・・


「じゃ」

「え?おじさん帰っちゃうの~?!一緒に遊ぼうよ!」

「おじさんは息子の所に行かないといけないんだ、ごめんな?」

「むぅ~!嫌だ!私と遊ぶの!遊ぶの~~!!」


この我が儘娘・・・!甘やかされたからか!?


「いっちゃやーーー!!!」

「・・・おじさんは行くんだ、ユートが待ってるからな」

「ユート?・・・悪魔の子が私からおじさんを取るの?」

「あ゛?」

「だって皆が言ってた、悪魔の子は生きる価値も無い、私は偉いんだって

なら・・・そのおじさんも私のものだよね?」

「は?馬鹿な事言うな、じゃーな」

「あ!【スーイちゃん!おじさんを引き留めて!】」

『イエスマイロード』


餓鬼が水の精霊に指示を出し、水精霊が水の縄を伸ばしてきた

この子も精霊使いか!


「シズク、凍らせろ、ライト、砕け」


その縄が急に凍り、電撃が当たり砕けた


「なっ?!貴方誰?!」

「ユート」

「貴方がおじさんを連れて行くのね!私はおじさんを気に入ったの!私の物なの!」

「父さんがお前の物?ハッ、面白い冗談だな?お前は人を所有するほど偉いのか?

それに父さんは物じゃない」

「私は神様の子供なんだから!」

「そんなの迷信だ、ならお前はその神様に会った事があるのか?」

「うっ」

「無いだろ?それでもお前は神の子を名乗るか?」

「な、なんなの!悪魔の子のくせに!いいもん!力尽くでやっつけてやる-!

【ヒカルン!スーイ!やっちゃって!】」

「はぁ・・・来い」


ユートは木の棍棒を構えた

それにしてもユート・・・ドモリが無くなってんぞ


ーーユートside


双子の妹で神の子なユーナって子がいるのは知ってたがここまでとは・・・

ずっと周りから甘やかされて育ったからだな

しかし・・・


「なんで当たらないの~!?」


こいつ・・・馬鹿だろ

いや、4歳児ならこれくらいが普通か?

光属性の魔法は基本回復やら明りをつける位で主に補助だ

水は俺みたいに氷に変える事が出来るなら違うが、普通の水の玉とかだと威力はあまりない

それにあまり訓練していないのか速度も遅い

それ以前に魔力の受け渡しがノロイ


「はぁ・・・父さ~ん、どうするのこれ!」

「ふむ、手を出したのはそっちだからな・・・誰かあの子を止めてくれないか?

あ、ユーナちゃんがユートを誤ってその結果・・・なんてのは期待しない方が良いぞ?

ユートの奴かなり手加減してるみたいだからな」

「くっ・・・しかたありません、ユーナ様!お昼寝の時間です!」

「え~・・・仕方ないな、おじさんまたね!」


もう会わせねーよ

我が儘お嬢様、あんなのが双子の妹って・・・はぁ


「必要な物は全部持ったか?」

「うん、全部、入れた」

「よし、帰るぞ」

「ん」


どもり、戻っちまった、残念だ

双子の妹ユーナちゃん登場です

我が儘ですね~、きっと成長しても治りませんよ

見た目良くても中身最悪なパターンです


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