ネガオ
そして最後に言った言葉を 思い出した
もう こっち側に来ちゃあダメよ
すると白木さんはその こっち側に居るのか?
その時 白木さんの病室の扉が開き 医者が
浮かない顔をして 出てきたのだった・・・
「話があるので こちらに」
医者が父親にボソッと呟き手招きをした
「どうぞ ここで いいですよ」
すると医者は顔を曇らせながら
「しかし ここでは・・・」
「娘の事を 心配してるのは 私だけじゃない
んですよ」
そう言って僕達を見渡し それに応える様に
僕達は無言で頷いた
医者は僕達を一瞥して 腕をくむと眉を顰め
暫く考えてから 口を開いた
「分りました それじゃあ率直に言いますが」
僕達は息を飲み 医者の次の言葉を待った
「娘さんは もうこのまま目を覚まさないかも
しれません」
それを聞くと 父親は目を閉じて 俯いた
阿部さんはふらつき それを太樹が支えた
僕は 拳を握りしめ 天井を仰いだ
この時 “ こっち側 ” の意味が分った・・・
「白木さんに会ってもいいですか?」
僕が言うと 医者はコクリと頷いた
父親は妻に話してくると 一度 家に戻った
僕達は顔を見合わせ 病室に入った
病室に入ると ベッドの上で静かな寝息を
たてて 眠っている白木さんの姿があった
その寝顔はとても綺麗で顔色も良くて
今にも 目を覚ましそうにさえ思えた
目に涙を溜めながら 白木さんの手を取ると
「ねぇ 麻耶って呼んでも い・い・・よね」
そう言うと阿部さんは泣き出した
その阿部さんの 溢れ出た涙を見て
太樹と僕の目からも 涙が零れ落ちていた
何も出来ない・・・僕には何も出来ないのか
僕は 溢れ出る涙をハンカチで拭った
あれっ⁈ そう言えばこのハンカチをどうして
白木さんが 持ってたんだろう?
ハンカチを貸した覚えはないのに・・・
何故?ひょっとして 昨日見た白木さんの夢が
関係してるのか?
いや そんなバカな事ある訳がない 夢の中で
一体どうやってハンカチを渡すって言うんだ
すると太樹が心配そうに 僕の顔を覗き込み
「大丈夫か?洋二?」
「あ ああ すまん 大丈夫だ」
「今日はそろそろ帰らないか?」
「そうだな 今日はもう帰ろう」
そして 病院を出て太樹の車に乗り込んだ
話す気力も無く ボ〜ッと窓から外を見ていた
そう言えば 白木さん空をよく眺めてたよな
涙が溢れ出そうになるのを 必死で堪えた
店に着き 太樹達に礼を言って車から降りた
鍵を開けて 店に入ろうとした時
「今一番 辛いのは麻耶だよ!」
阿部さんがそう叫び 僕はハッとした
「そ そうだよな! 有難う 阿部さん」
「うん それじゃあ」
太樹達を見送り 自分に喝を入れた
俺がしっかりしないでどうするんだ!
白木さんは絶対に大丈夫だ!
そうココロの中で叫んだのでした




