マチアワセ
「今晩は」
背後から聞き覚えのある女性の声が・・・
看板を店内に置くと 僕は慌てて振り向いたの
でした
振り向くとそこに立って居たのは
阿部さんと太樹だった・・・
「ああ 今晩は」力の無い声で答えた
「私達でガッカリしたでしょ」
「いや 別に」そう言って僕は店に入った
「この前は悪かったな 余計な事して」
太樹が俯いて 申し訳なさそうに切り出した
「いや お前達は悪くないさ 早かれ遅かれ
振られるのには 違いないからな」
そして 沈黙が辺りを包み込んだ
カップを片付ける音や 太樹達が座ってる
椅子のきしむ音が店の中に響き渡った
その沈黙を阿部さんが破った
「東條さんは それでいいの?」
阿部さんの思わぬ質問に 僕は驚いた
「いいの と言われても 振られたんだからさ
もう どうしようもないよ」
「確かに そうかも知れないけど 白木さんの
気持ちは 考えた事あるの?」
「だから 気持ちって言われても振られ・・」
僕の言葉を遮り 阿部さんは立ち上がって
カウンターを両手で叩いて 言った
「白木さんが言ってたわ 病気持ちの女の子と
付き合っても 東條さんが苦しむだけだって」
「え?!」
「東條さんに愛される資格なんか無いって
泣きながら 白木さんは言ってたのよ!」
「そんな」僕は言葉を失った・・・
「それでどうするの?」
「どうすると言われても・・・」
「今からこの場所で会う事になってるのよ」
そう言ってメモを僕の目の前に差し出した
「待ち合わせ場所はここから近いけど 時間が
過ぎてるから 早く行かないと帰るかもね」
僕はメモを取ると 合鍵をカウンターに置いて
「店閉めたら 合鍵 太樹頼むわ」
そう言い残して 店を飛び出した
そして僕は ただ夢中で走っていた
まだ帰らないで 居てくれ そう願いながら
ただ ひたすら走ったのでした




