現実世界2
寒空の下、勇者様とアイスを食べてきた。
それを考えると、家にもどってきて、私は笑いをかみ殺した。菜々美の彼氏はやはりアイスの誘いを断ったらしく、うん。犠牲者は1人でいいだろうとの返答だったらしい。
とても同感な私がいたのではあるが、ホッカイロ3つ(足用含む)と帽子と手袋とマフラーで完全防備した私は犠牲者その2として、菜々美と山田くんと近くのアイス屋へと訪れることになった。
山田くんとは以前一度だけ、菜々美と彼氏と私の4人で出かけたことがあるくらいの関係だ。菜々美とは比較的親しいようで、笑って話しかけていた。
「寒い! 寒いでしょ菜々美さん!」
ダブルのアイスを食べている菜々美を見ながら身震いした山田くんは、いちごアイスとホットれもんという謎の組み合わせを選んだ私にも笑いかけた。
「長崎さん、その反作用な組み合わせはいったい……」
「ほら、寒い暖かいという無限回廊に踏み込もうと思って」
「戻ってこれなそうな回廊だね……」
そう言って人の良い笑みを浮かべた。山田くんは、笑うと目が細くなって、なんだか人なつこい様子が見て取れる。
お人好しでもなければ、夢の中の話ではあるが勇者役も、菜々美のアイス屋も付き合わないだろうけど。
「山田くん、アイス好き?」
「……夏場はね」
とても同感な私は、なんで菜々美のアイスに付き合っているのかと尋ねたくなった。
「楓、それだけでいいの?」
2本目のダブルを頼んだ菜々美を、寒いから近寄るなと手で追い払っておいて、私は山田くんに尋ねる。
「山田くんは、何か頼んだ?」
「うん、俺はチョコチップ」
そう言って店員さんからアイスを受け取ると、一口食べて寒さに身震いしたらしい。私は一つホッカイロを分けてあげた。健闘賞である。
「完全防備だね、長崎さんはアイス好きなの?」
「……夏場はね」
「……なんで菜々美さんのアイスに付き合ってるの?」
返事ができない私であった。