異世界10
目を覚ましたハクセイがぶつぶつ言うのを笑顔でスルーしながら、ガイ隊長が待っているらしき執務室まで案内して貰った。ノックを2回。そして低い声が「入れ」と応じる。
扉を開いたら。
「……??」
現状が理解できずに3者とも目を丸くした。いや正確に言えば、6人か。私と山田くんとハクセイはその状況が理解できず、隊長とランスとミア姫は山田くんを見て目をまん丸にした。
一番早く意識を立て直したのはやはりガイ隊長だった。組んでいた両腕を開くと、軽く私を見てから山田くんに視線を戻し、小さく笑った。
「ジロー殿」
久しぶり、と深く静かな声で呟く隊長だったが、私たちはとりあえず目の前の他2人に目を奪われていた。
「ジローさま!」
悲鳴のように喜色満面の笑みを浮かべて立ち上がろうとしたミア姫は、後ろからの圧力にはっとして再度その場に青い顔して正座しなおした。両目は真っ赤で、涙の跡がたくさんある。お姫様の正座。何事なんだ。
隣には殴られた跡が有り有りと分かる顔のランスが目を丸くしたまま正座していた。ほんと何事だ。
この場で立っているのは隊長だけだった。ミア姫とランスの後ろで無言の圧力をかけている。
山田くんは隊長にお久しぶりです、と頭を下げると、戸惑ったように聞いた。
「あの、これは……?」
「……ジロー殿が来るとは思っていなかったが」
意味深な溜めはやめて頂きたい、隊長。
「カエデ殿に説明しなければいけないことがある。ハクセイにカエデ殿を探しに行ってもらおうと思ったのだが……一緒に来てくれて助かった」
ほら、と低い声が促す。声からちらりと殺気が漏れているように聞こえるのは私の気のせいだろうか。
姫は涙で濡れた瞳で私の前に両手をついた。はらはらと美しい金の髪が肩から滑り落ちる。涙声で申し訳ありません、と言った。
「わたくしの浅はかな、愚かな気持ちのせいで、カエデ様にご迷惑をかけてしまいました、本当に申し訳も……」
続く言葉はもう声にならない。庇うようにランスが姫の前に出た。
「いえ、私のせいなんです! 実行したのは私なんです! 咎はすべて私に!」
なにがなんだかよく分からない。
理解できてなさそうな私を見て、2人にガイ隊長からの叱咤が飛んだ。
「ミア姫! 泣けば全て何とかなると思ってはなりません! ちゃんとご自分で説明なさい! ランスお前は黙ってろ!」
涙ながらに姫はスパルタ教官に言われるがまま、最初から説明を始めた。
始まりは山田くんが帰ったその時だった。




