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異世界6


「……とりあえず」


 山田くんは再度あきらめると、後ろ手に縛られたまま器用に立ち上がった。


「逃げようか」


 おお、勇者様本領発揮。

 山田くんは後ろに縛られた両手を、縄を飛ぶようにジャンプして、下から前の方へと持ってきた。なんだあれはどんな技だ。

 私も両足をくぐらせようとして左肩がビキってなった。痛くないのが幸いである。現実世界ならのたうち回ってるだろう。


「無理しなくていいから、長崎さん」


 苦笑しながら前に回した自分の両手の縄に噛みつき、引っ張って緩めている山田くん。数度繰り返すとだんだんと隙間があいてきた。するっと縄から両手を抜いて自由の身になる山田くんをうらやましそうに、右肩もビキっといった私が見つめていた。

 山田くんは私の後ろに回ると、縄をほどいてくれた。


「多分手は痛くないと思うけど、大丈夫?」

「うんうん」


 こきこきと両手を鳴らして大きく伸びをする私をほっとして見ると、山田くんは檻の出入り口らしきところへと向かった。


「どうやって出るの?」

「力業かな……。魔法の鍵じゃなきゃこじ開けられると思うけど」


 そう言って檻の扉を両手で掴むと、小さく何か呟いたあとにぐっと左右に力を入れた。

 ぐぐぐぐっ。

 鉄製らしき檻は左右にぐにゃりと折れ曲がった。山田くんとは今後固い握手はしないでおこうと私は誓った。


「よし、逃げよう長崎さん、王都近くまで行けば多分ガイさんがいると思うから、ガイさんなら現状を正確に把握してくれると思う」

「ガイさん?」

「この世界にいる騎士団の隊長さんが、ガイさんっていうんだ」


 ダンディ隊長か。うんうん頷くと、山田くんが私の右手を掴んだ。


「守るから」


 ぎゅっと私の右手に力が入る。


「俺が絶対守るから、安心してついてきて」


 責任感あふれる言葉を吐く山田くんを頼もしく思う反面、それ以上力を入れてくれるな、と思う私が居ることは否定できない。


「……うん!」


 でもちょっとだけ、勇者の山田くんが見えた気がして何となく嬉しくなった。






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